Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

見出しや短信における冠詞の省略, to不定詞の形容詞的用法, 付帯状況のwith(英国で新型コロナウイルスのワクチン承認)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。

今回の実例は、ニュースフィードから。

日本時間で12月2日の午後、英国で新型コロナウイルスのワクチンが承認されたというニュース速報が入ってきた。ちなみに今回承認されたワクチンはこちら、BNT162b2だ。私は英国のBBC Newsとアイルランドアイリッシュ・タイムズ (IT)の速報が届くように設定してあるのだが*1スマホを見ると、下記のような画面になっていた。BBC, ITどちらからも飛んできている。

f:id:nofrills:20201203032119j:plain

このBBC Newsの速報の文言: 

UK becomes first country to approve Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, paving the way for mass immunisation

これは、数時間後にTwitterでフィードされていた文言とほとんど同じである。

見比べてみると、手短に報じている速報のフィードでは冠詞(定冠詞のthe)が省略されていることに気づくだろう。

速報のフィード: UK becomes first country to approve Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, ...

Twitterのフィード: The UK has become the first country in the world to approve the Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, ...

このような冠詞の省略は、決まった場合にしか起きない(好き勝手に省略してよいわけではない)。どういうときに起きるかというと、報道記事の見出しや、ここで見ている速報フィードのような短信の場合だ。Twitterでも、以前アルファベットでも投稿上限文字数が140字だったころ*2は、序数詞につくtheなど、形式的なtheは省略されていることがままあった。"the" と書くだけで前後のスペースを含めて5文字も消費してしまうから、使える文字数が少ないときは、けっこうな問題になってしまうのである。

けれども、そのような制限がない場合は、theは省略しない。だから、上記の例でも、文字数にゆとりがあるTwitterのフィードではtheは省略せずに全部書いてあるわけだ。

以下、Twitterの文を実例として、文法的なことを見ていこう。

The UK has become the first country in the world to approve the Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, with the first doses available in the UK from next week.

太字で示した "to approve" は《to不定詞の形容詞的用法》で、先行する "the first country in the world" にかかっている。このようは、何かとても限定的な形容詞を伴った《the first[last, only, など] ~ to do ...》の形は、自分で使いたいときにサクッと使えるように準備しておかなければならない構文のひとつである。

  Neil Armstrong became the first man to set foot on the moon. 

  (ニール・アームストロングは、月面に足をおろした最初の人間になった)

  If you are the last person to leave the room, please turn the light off. 

  (あなたが部屋を出る最後の人ならば、明かりを消してください)

  She is the only high school student to participate in the program designed for college-level students.*3

  (彼女は、大学レベルの学生に向けたプログラムに参加する唯一の高校生である)

 

次。画面上でちょっと離れてしまったのでもう一度英文をコピペしておくが: 

The UK has become the first country in the world to approve the Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, with the first doses available in the UK from next week.

下線で示した "with" はおなじみ、《付帯状況のwith》で、ここでは後ろに現在分詞や過去分詞ではなく形容詞を従えている。この付帯状況が「意味が取りづらい」ということで高校生には悩みの種になりがちだが、withの句を節に書き換えてみると少しはわかりやすくなるだろう(書き換えることが目的になるのはおかしいし、書き換えた後の文は不自然になるのだが、意味について納得するために実験的に書き換えるということはどんどんしてよい)。この場合は、"and the first doses will be available in the UK from next week" と、be動詞(を、末尾の "next week" に合うように未来を表す形にしたもの)を補うことになる。be動詞を補うことになるのは分詞を従えている付帯状況のwithでも同じで: 

  He stood there with his arms folded. 

  → He stood there while his arms were folded. *4

  We were walking through the woods, with our dog following close behind. 

  → We were walking through the woods, and our dog was following close behind. 

 

というわけで、BBC NewsのこのTwitterフィードの文面は、「英国が、世界で初めて、ファイザー社とバイオンテック社*5新型コロナウイルスワクチンを承認した国となった。来週から英国で第一弾の接種が受けられるようになる」という意味になる。

 

各メディアでの報道が出たときの様子。左から、BBC News, the Guardian, Reuters: 

f:id:nofrills:20201203085613j:plain

 

ちなみに英国の場合、薬などの許認可は国レベル(UKのレベル)で中央政府が行うが、その後、医療の実施を含む実務は、イングランドウェールズスコットランド北アイルランドの4つの地域(「地域」と書いたが英語の用語ではnationだ。ただし北アイルランドは一筋縄ではいかないのでnationとは呼ばれない。どうだ、ややこしいだろう)で別々に行われる。このうちイングランド自治議会を持たず、UKの国会がその役目を果たすのだが、ウェールズスコットランド北アイルランドはそれぞれ自治議会があり自治政府があり、保健行政はそれぞれの地域で別々にやっている。感染拡大防止のための行動制限(ロックダウン)の判断もそうだし、今回国レベルで承認されたワクチン接種の実施も各自治政府の担当となる。

英メディアは話がイングランドに偏っているので、イングランド以外の情勢を細かく追うには各地域のメディアをフォローするなり、BBCの各地域別のニュース(BBC Wales, BBC Scotland, BBC Northern Ireland)をフォローするなりしておく必要がある。

 

※3950字

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

*1:ガーディアンやロイターやWSJなども入ってくるようにしていた時期もあるが、通知の件数が多すぎるし、米国の報道機関のフィードはアメリカのローカルニュースがうるさいので、BBC NewsとITだけに絞った。BBCは本当に重大なときじゃないとフィード飛んでこない。ITはアイルランドのローカルニュースがとても多いので、一般にはお勧めしない。

*2:2017年にアルファベットの場合は上限が280字に拡大された

*3:英文出典(改):

https://www.riverbender.com/articles/details/high-school-senior-advances-education-and-earns-work-certificate-during-covid19-pandemic-41724.cfm

*4:英文としてはなんか不自然でぎこちない文だが、意味を考えて納得するためだけの文なので、ぎこちなくたって問題ない。

*5:日本語圏では「ビオンテック」というカタカナが当てられているが、ウィキペディアで確認したところドイツ語版も「バイオンテック」の発音記号が与えられている

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。