Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

関係代名詞の非制限用法, 年齢の表し方, 接触節, look forward to doingなど(ワクチン接種、最初の1人)

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今回の実例はTwitterから。

12月2日に英国(UK)で新型コロナウイルスのワクチンが世界で初めて認可された。このワクチンは米ファイザー社と独バイオンテック社*1が開発したもので、他にも英国のアストラゼネカ社とオックスフォード大学のワクチンや、米モデルナ社のワクチンがすでに実用化されつつあり、治験が最終段階に入っている*2。この3社のワクチンについては、11月17日付のワシントン・ポストのまとめページにある "What will happen next?" と題した図解がわかりやすい。日本語でも同様の記事はあるので、日本語記事を読んで内容を頭に入れてから英語記事を読んでみるということもできるだろう(ただし米国の新聞なので米国の事情についての解説の分量が多い)。

さて、そのファイザー社のワクチン、BNT162b2が、英国で接種開始となった。英国の保健行政はイングランドウェールズスコットランド北アイルランドの4地域で別々に行われるので、英国政府が認可し輸入したワクチンをどのように接種するかは各地域の自治政府イングランドの場合はウエストミンスターの英国政府)が決定して実施する。その接種がいよいよ、12月8日にイングランドから始まった。

ちょうど去年の今頃、中国の武漢で何人かの医師が「どうもすでに知られていた感染症とは違う感染症が広まりつつある」と気づいて、医師同士で情報を共有し始めていた。のちに「新型コロナウイルス」と認められることになるそのウイルスは、瞬く間に世界中で猛威を振るい、それからわずか1年、12月7日までに153.5万人を殺しているのだが、医療現場の医師たちが最初に気づいてからわずか1年の間にワクチンの開発から治験、接種まで実現したのだから、「すごい」としか言いようがない。

というわけで、12月8日、世界で初めて、イングランドの真ん中へんにあるコヴェントリーという都市ファイザー社のワクチンの接種が行われた。その最初の1人が、マーガレット・キーナンさん(90歳)。親しい人々の間では「マギー」と呼ばれている。

イングランド以外の地域ではまた事情が異なるが、イングランドでは、ワクチン接種が最優先されることになったのは新型コロナウイルス以外の病気などで入院中の高齢者で、マーガレット・キーナンさんはその条件にあてはまる1人として選ばれた。彼女のすぐあとに、やはり入院患者のウィリアム・シェイクスピアさん(本当に!)とベティ・ミラーさんが接種を受けた。BBC Newsより引用: 

The 90-year-old was selected as she was in the right age bracket, was an inpatient ready to be discharged and was happy to take all the media attention.
Second in line was 81-year-old William Shakespeare from Warwickshire followed by Betty Miller, also 90.

 この「最初のひとり」となったキーナンさんについて、NHSイングランドイングランドの健保)が紹介しているツイートを見てみよう。

 

最初の部分:

Maggie, who turns 91 next week, said, ...

コンマと "who" で《関係代名詞の非制限用法》だ。情報を後から付け足すために用いられる。ここは「マギーは、来週91歳になるが、次のように述べた」の意味。

年齢を表すときのturnの使い方も覚えておこう。

  My brother turned 35 last month. 

  (兄は先月、35歳になりました)

 

次: 

... 'I feel so privileged. It’s the best early birthday present I could wish for because I can finally look forward to spending time with my family and friends in the New Year after being on my own for most of the year.'

最初の "I feel (so) privileged." は、何かについて光栄に思っているということを表すときの決まり文句。privilegeは名詞で「特権」、他動詞で「~に特権を与える」の意味で、この他動詞の過去分詞のprivileged(「特権を与えられている」=「特権がある」)が形容詞化している。マギーさんは「一番にワクチンを受けるという特権を与えられたことをたいへん光栄に思っている」と言っているわけだ。

第2文は少々長いが、 頭から読んでいけば構造は取れるだろう。まずは "because" という接続詞があるのでそこで切り、大きく2つに分けておいて、細かいところを見ていこう。

It’s the best early birthday present ( I could wish for ) / because I can finally look forward to spending time ( with my family and friends ) / in the New Year / after being on my own for most of the year.

まずbecauseの前だが、ここは《接触節》で、"It’s the best early birthday present that I could wish for" と、関係代名詞のthat(目的格)を補って考えると意味が取りやすいだろう。節が前置詞で終わっているのが慣れないとわかりづらいかもしれないが、次のような構造になっている。

  It's the best early birthday present.

  I could wish for it. ←このitが関係詞のthatになって2文をつないでいる

後半の "could" は慣用化した仮定法で、「(望めるとしたら)望める」。この部分は「これ(ワクチン接種)は、私が望むことのできる最良の、早い誕生日プレゼントです」と直訳される。「早い誕生日プレゼント」の意味は、文脈をたどり、直前にマギーさんが来週で91歳になると書かれていたことと結び付けて解釈しよう。

次、becauseの後の部分: 

because I can finally look forward to spending time ( with my family and friends ) / in the New Year / after being on my own for most of the year.

ここは長いだけで特に難しくはない。スラッシュを入れた箇所で区切ることができれば意味をとるのは平易である。

太字で示した《look forward to doing》は受験英語ではおなじみの熟語で「~することを楽しみにする」。典型的な例文では現在進行形で使われるが*3、このように進行形でない形もあるということは覚えておこう。

下線で示した部分は《前置詞+動名詞》で、そのあとの "on my own" は「ひとりで」。「年が明けてからのほとんどをひとりでいた後で、新年は家族や友人たちと一緒に時間を過ごすことを、ついに楽しみにできるのだから」がこの部分の直訳である。

マギーさんは、ウイルス禍が始まってから、子供や孫とも会えずにずっとがまんしてきた。その寂しい日々がようやく終わろうとしている。

 

マギーさんが最初の1人に選ばれたのは、年齢や入院などの条件が合致していたほかに、「最初の1人」ということで集まる取材にさらされてもよいという本人の了解があったからだと、別の報道記事に書いてあった。実際、胸にかわいいサンタクロース姿のペンギンがプリントされた明るい青のTシャツを着て、大き目の水玉柄のニットのカーディガンを羽織ったマギーさんは、報道のカメラを通して、会ったこともないイングランドおよびそのほかの地域の英国の人々、そして世界中の人々に、明るい希望のメッセージを発したかったのだろう。ここまで、どんなに不安だったことか。

病棟に戻ったマギーさんを歓迎する病棟スタッフたちの映像: 

 《to不定詞の形容詞的用法》("the first person in the world to receive ...")をお見逃しなく。

 

※英文の貼り付けが多いとはいえ、今回も規定文字数を超えてここまでで5000字以上。こういうふうに長いの書くのは実はかなりつらいので、今後、やり方変えようと思ってます。

 

補足: 

マギーさんに注射を打ったのはこの方、看護師のメイ・パーソンズさん。世界初のコロナワクチン接種者。

マギーさんはイングランド在住だが「イングランド人 English」ではない。だから彼女について "an English woman"と述べているものは、私が見た限りでは見当たらなかった。

 

 

 

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https://twitter.com/NHSEngland/status/1336211829794742272

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

*1:日本語圏では「ビオンテック」というカタカナが当てられているが、ウィキペディアで確認したところドイツ語版でも「バイオンテック」の発音記号が与えられている。

*2:ほかにも、これらとは別に、ロシアや中国でもワクチンの開発・実用化・接種が進められている。日本でも開発が行われている。詳細はNHKのこの記事がわかりやすい。

*3:"I'm looking forward to seeing you." のように。

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