このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。
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オーストラリアの大陸全体に広がった今回の火災は、11月に始まり(起点を9月とする見方もある)、今もまだ燃えている。これまでに燃えた区域を立体的にマッピングしたものが(一部、誤って「NASAが撮影した写真」とキャプションをつけられて)Twitterなどネットで話題になり拡散している。
That satellite image of Australia on fire? It’s not a satellite image. It’s a graphic from NASA data, of the areas affected. The graphic ‘glow’ makes the areas affected look bigger, and some of the fires on it are no longer burning, as its creator Anthony Hearsey, has confirmed. pic.twitter.com/BsYDGDoYoX
— David Banks (@DBanksy) 2020年1月5日
この火災により、大量の二酸化炭素などが出て、野生動物の棲息場所・食料となる緑が失われた。
Back in July, NASA snapped photos of an area area near the southeastern tip of Australia which showed vast green areas, vibrant with life.
— CNN International (@cnni) 2020年1月4日
Now, photographs of that area taken from space show a dull brown haze almost totally obscuring the land below. https://t.co/XjzIUlCcvr
Kangaroo Island bushfires: grave fears for unique wildlife after estimated 25,000 koalas killed https://t.co/hYprFjSDL1 オーストラリアの大火、野生の動物たちは火災を生き延びたとしても、そのあと食べるものがないよね。燃えた地域では生態系が丸ごと……
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2020年1月7日
野生動物の被害はものすごい規模になっていると考えられている。火傷を負ったコアラが通りすがりの女性に助けられ、動物病院に連れていかれ、「ルイス」と名前もつけてもらって可愛がられ、手当を受けていたが、回復する兆しがない*1ことから安楽死させられたことがニュースになったのは11月末、もう1か月以上も前のことだ。
野生動物だけでなく、人間も住処を追われ、絶対安全な場所といえば水辺だということで水辺に避難してきているような状態だが、この期に及んでまだオーストラリアの政治リーダーたちに危機感は薄いという。日本でもすさまじい規模の台風が相次いで首都圏を襲っても政治リーダーの危機感はとても薄くて、人々は怒り、また呆れていたが、オーストラリアも似たようなもの、というかもっとひどいようだ。
というわけで今回の実例は、 前々回と前回と同じ記事から、その政治リーダーの危機感のなさを指摘した部分から。
記事をずーっと読み進めたところにあるこの一節:
これは報道記事には典型的な文体で、こういう記述は一度目を通しただけで内容が完璧に把握できるようにしておくことが望ましい(大学入試のセンター試験の長文読解は、その程度の読解力があることが前提となっている試験だ)。
キャプチャ画像内の最初の文:
The prime minister, Scott Morrison, has promised an aid package for areas ravaged by the crisis and said on Sunday he would consider a royal commission into the deadly blazes, which have burned vast areas on the east coast.
特に難しいポイントはないが、だらだらと長い文である。
まず、下線で示したところは《同格》の表現で「首相のスコット・モリソンは」の意味。情報量としては多くはないが、これだけでけっこうかさばっている。
この下線部がこの文の主語で、述語動詞となっているのはその次の "has promised" である。その目的語が "an aid package..." で、文構造としてはここまでは素直だ。
太字にした "ravaged" は《過去分詞の後置修飾》で、"areas ravaged by the crisis" は「その危機によって荒廃させられた地域」と直訳される。
そのあと、青字で示した《等位接続詞》のandは何と何をつないでいるのかを見なければならない。andの直後がsaidという動詞なので、この前にある動詞とつながれているということが判断できよう。
と見てみると、このケースではやや変則的で、has promisedという現在完了と、said (on Sunday) という過去形がandでつながれていることが確認できよう。"The prime minister has promised ... and said ..." という形だ。
少し上の方に行ってしまったので、改めて引用しておこう:
... and said on Sunday he would consider a royal commission into the deadly blazes, which have burned vast areas on the east coast.
"on Sunday" の直後には、接続詞のthatが省略されている。これを補うと:
... and said on Sunday [that] he would consider a royal commission into the deadly blazes, which have burned vast areas on the east coast.
このthat節内では《時制の一致》が起きて、助動詞のwillがwouldになっている。つまり:
The prime minister said on Sunday, "I will consider ..."
→ The prime minister said on Sunday that he would consider ...
その次にある "a royal commission" はオーストラリアの制度上のもので、「調査のための特別委員会」的なものだと思っておけばよい。これは入試に出たら語注が付くレベルの語だろう。ちなみにroyalというのは英王室のことで、オーストラリアは英連邦という形で国家元首は英国の国王(女王)になっているためにこういう制度になっている。つまり、内容としては、オーストラリアの首相は、死者まで出ている今回のこの火災について特別調査委員会を検討するだろう、というこtだ。
そのあと、下線で示した "..., which have burned ..." は《関係代名詞の非制限用法》で、先行詞は "the deadly blazes" である。
《関係代名詞の非制限用法》は、キャプチャ画像内で、関連記事へのリンクを挟んだ次のパラグラフでも出てくる。この文もやや長いが、次のような構造が取れれば文意を取るのは容易だろうし、下線部和訳も(単語の意味さえわかれば)難しくはないだろう。
Morrison (, who has been heavily criticised for taking a holiday in Hawaii during the crisis and was heckled by locals in Cobargo after forcing a handshake on an unwilling woman,) also again defended his leadership during the emergency.
主語は "Morrison", 述語動詞は "defended" である。
そして、"Morrison" を先行詞とする関係代名詞(非制限用法)の節の中に、等位接続詞のandによる接続が入っていて、「危機の間にハワイで休暇を取っていたことで厳しく批判され、その気のない女性に無理やり握手を強要したあとで、Cobargoで地元の人々にheckleされた」という意味を表している。
heckleは大学受験にはあまり必要ではない単語だが、「やじる」とか「ちょっかいを出す」とかいった意味で、報道ではまあまあよく見る語だから、覚えておいて損にはならない単語である。
またdefendという単語も報道ではよく見る。スポーツで「守備する」という意味が一番なじみ深いのではないかと思うが、報道では「行為・決定などが正しいと主張する」という意味で頻出だ。
現時点でもdefendという単語はメディアのあちこちに踊っている。例えばこんな感じで:
On Monday, the counselor to the president, Kellyanne Conway, stepped in to defend the president and argue he didn't say what the public heard him say, before acknowledging that he did say it.
The president went to his golf course in Florida and left secretary of state Mike Pompeo to defend the assertion that the drone strike against Suleimani in Baghdad prevented an imminent attack on US interests.
https://www.theguardian.com/world/2020/jan/05/mike-pompeo-qassem-suleimani-killing-trump
参考書:
*1:火傷は大変。京都でアニメーション制作会社に放火し、自身もひどい火傷を負った容疑者が話ができるようになるまでに何か月もかかっていたが、あのケースは容疑者の治療に当たった医師・看護師の尽力がすばらしかったのだと思う。