今回の実例は、日本語でほぼ「一言だけ」にまとめられた英語圏の新聞の記事から。
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は17日、開幕を23日に控えた東京五輪について、これまでのところ「完全な失敗に見える」と指摘し、1964年の東京五輪のように日本に誇りをもたらすことは期待できないと伝えた。新型コロナウイルス流行の影響で国民に懐疑論が広がり、当初の五輪への熱気は敵意にすら変わっていると報じた。……
個人的には、共同通信のこの短い(あまりにも短すぎる)要約が配信される前に原文のフィードを見かけていたのではあるが、読むところまでは行っていなかった。共同通信の記事のおかげで読んでみたら*1、けっこう文法ポイントがいろいろあるので、それを見ていこう。
記事はこちら:
記事を書いたSimon Denyerさんは、ワシントンポスト紙の東京支局長で、日本と朝鮮半島を担当している。
この記事は、前回、1964年の東京五輪と、今回のカオスになってる東京五輪とを比べ、「64年の五輪の夢よもう一度、というわけにはいかなさそうだ」ということを検証している記事である。
英語は平易だし、トピックも読みやすいので、気分が滅入ることが気にならなければ、英語長文多読素材として好適だと思う。
今回、実例として見るのは、冒頭の1964年の大会について振り返ってまとめている個所のすぐ下。
最初の文:
Life magazine called the 1964 Olympics “the greatest Games ever.”
お手本のような《SVOC》の文である。"called" がV、"the 1964 Olympics" がOで、"'the greatest Games ever'" がCだ。
また、Cになっている部分は《最上級+ever》の構造で、「これまでで最も~な」。
文意は「ライフ誌は、1964年の五輪を、『これまでで最もすばらしい大会』と呼んだ」。
次の文:
It was always going to be hard making a sequel to live up to the original.
これは《形式主語》のitの構文だが、真主語がよくあるto不定詞ではなく《動名詞》になっている。
この文、ちゃんと翻訳しようと思うと意外と大変だが、文意を取るのは難しくないだろう。視点が1964年の東京五輪の時点に置かれており、そこから語っているので "was going to be hard" と過去から見た《この先(未来)》を言う表現になっている。
あと、細かい熟語的なものも入ってるんだけど、小山田圭吾の件とかで頭が煮えているのですっ飛ばして、文意は「オリジナルの評判に見合うような続編を作ることは、いつだって大変な作業になる」ということだ。真面目に翻訳しようとすると、"was going to" の時制の処理が難しいからここでは文意だけね。
次の文:
So far Tokyo 2020, as the postponed Games are still being branded, looks to be falling distinctly flat as it moves toward Friday’s Opening Ceremonies with the pandemic setting the mood: No spectators at venues in the Tokyo area and athletes confined to an Olympic bubble.
ちょっと長いけど、落ち着いて読めば構造は単純である。
……と、ここまで書いて少し休憩したいので、続きはあとで書き足すことにして、いったんアップします。