今回の実例は、Twitterから。というか、一緒にTwitterを見てみてほしい。
2021年9月11日、ここ東京で夜9時を過ぎたころにTwitterをチェックすると、とても多くの人が、「あの日、姉(または息子、または母、または友達、または……)からの電話で『テレビをつけて』と言われて……」ということを書いていた。ほとんどがアメリカ人のアカウントだがアメリカ人とは限らず、私の頭の中に日本語として格納される前の、英語で見る文字列は、 "to turn on (the) TV" だ。
その文字列でTwitterを検索し、タブを "Latest" (日本語だと「最新ツイート」かな)にして、その画面を一緒に眺めてみてほしい。
"turn on the TV": https://twitter.com/search?q=%22turn%20on%20the%20tv%22%20&src=typed_query&f=live
"turn on TV":
https://twitter.com/search?q=%22turn%20on%20tv%22%20&src=typed_query&f=live
これが、「英語を使う」ということ(の一部)だ。
個々のツイートに関して、英文法の解説をすることはいくらでもできる。実際、今日の夕方までは、私がフォローしている人の発言を取り上げて、そうしようと考えていた。けれども、その時刻を迎えて目の前に流れてきている言葉を見たときに、そうする気持ちは失せた。
もちろん、それらの言葉を読む(読んで内容を把握し、理解する)ためには英文法の知識は絶対に必要なのだけれども(それは、日本語でたとえて言えば、文章の中で使われている漢字が読めて、意味が取れることが、日本語の文章を読んで理解するうえで必須となるのと同じようなことだ)、目の前の言葉の数々のどれかを取り上げてそうすることは、恐ろしく場違いなように思われた。
誰か、政治家の言葉だったら、公的な記録に残るようなものだったら、そうできたかもしれない。例えばバイデン大統領の言葉だったら。
だが、何か違うような気がして、私はひたすら、自分の目の前に流れてくる言葉を見ているだけだ。
ギリシャの人:
Just returned from my bball workout in Greece, early afternoon. A friend called me asking me if there will enter WW3. I asked her what is she talking about. She told me to turn on the TV.
— NikosTopouzis (@niktop) 2021年9月11日
"On what channel", I replied.
"In any channel, in every channel", she said in a shaky voice
ギリシャではお昼過ぎだったんだね。東京は夜だった。
ボストン発ロサンゼルス行きアメリカン航空11便(AA011; ボーイング767-200ER型機・機体記号N334AA)は、乗客81名(日本人1名を含む)・乗員11名を乗せ、午前8時00分頃にローガン国際空港を離陸し、ロサンゼルス国際空港に向かった。その後、11便は午前8時14分頃に始められたハイジャックにより、コックピットを乗っ取られた。11便は午前8時27分に進路を南向きに変え、午前8時46分にニューヨーク・ロウアー・マンハッタンのワールドトレードセンター・ツインタワー北棟(110階建)に突入し爆発炎上した。
9月の今頃の時差は13時間で、ニューヨークの午前8時46分は日本では午後9時46分だ。あの日は火曜日で、私はいつものように午後9時に仕事を終え、10時ごろに帰宅して、NHKの夜10時のニュースを見ようとテレビをつけた。
そしてあの光景を四角い画面の中で目にした。
ボストン発ロサンゼルス行きユナイテッド航空175便(UA175; ボーイング767-200ER型機・機体記号N612UA)は、乗客56名・乗員9名を乗せ、午前8時14分にローガン国際空港を離陸し(アメリカン航空11便でのハイジャック発生とほぼ同時)、ロサンゼルス国際空港に向かった。午前8時42分頃、UA175便のパイロットは離陸直後に耳にした不審な内容の無線(ハイジャックされたアメリカン航空11便からの無線だった)について管制官に報告したが、それから午前8時46分までの間にUA175便もハイジャックされ、コックピットを乗っ取られた。その後、UA175便は午前8時58分にニューヨークへ進路を変え、午前9時03分にWTC・ツインタワー南棟(110階建)に突入し爆発炎上した。
私がTVをつけたときにはもう、2機目の飛行機が南棟に突っ込んだあとだったはずだ。なぜなら午後10時3分は、当時の私が家にいてTVをつけるには少し早すぎるから(どんなに早くても帰宅時刻は10時10分より後だった)。だから、私が目にしていたTVの中の映像は、少し前の録画だったに違いない。
でも、あのときは生中継かどうかなんてことは考えてもいなかった。とにかく、恐ろしいテロが起きた、それ以上は頭が回らなかった。
「テロ」ということは何も言われなくてもわかっていた。というか、「テロ以外に考えられなかった」といったほうがよいか。
「アルカイダ」なんて知らなかった。私はアメリカには関心がなかったから、1998年の駐ケニア・タンザニア米大使館爆破テロのこともたぶん把握していなかったし、その前の1993年のニューヨーク世界貿易センタービル(20年前の今頃、まさに崩れ落ちていた超高層ビル)の爆弾事件のことも知らなかった。1995年のオクラホマシティの連邦ビル爆破はさすがに知ってたけど、それは「極右テロ」だったからだ。だって、極右テロはロンドンでも起きていた(SOHOのアドミラル・ダンカンというパブの爆破など)。私の単純な頭の中では、「IRAのテロのあとは極右テロかよ、くそ」という話になっていた。
ニューヨークのあのビルに職場がある知人は、その日はたまたま休みをとっていたために無事だった(が、仕事で得た連絡先なども含め、オフィスに置いてあったものをすべて失った)。同じビルに職場があった、私が卒業した大学を私より何年も前に卒業した人(先輩……面識もない人だが)は、行方不明になっていると、数か月後に送られてきた大学の同窓会の会報で知らされた。
そんなことを書いていたら書き終わらないのでこの辺で。
検索結果から、いくつか。あの日、誰かから「テレビをつけて」と言われた人たちの、20年後の言葉。
Ironing my work clothes in the living room of my college apartment. My mom called and told me to turn on the tv.
— Amber Hendricks (@ashayhen) 2021年9月11日
I watched in disbelief as the second plane hit, ironing forgotten. Work forgotten. School forgotten.
I drove my kids to school. As soon as I came home, my neighbor called me to turn on the TV. We thought we were watching an accident, then we watched in horror as the second plane hit. We call each other almost every year on this day. https://t.co/XuV5krQLo8
— Amanda Blount 🌊 (@amandablount2) 2021年9月11日
20 years ago today I was at WKU, I was woken by the landline (Yeah we had those back then) and my roommates mother was in a panic.
— The Ultimate Predator (@IAmUltimatePred) 2021年9月11日
"Turn on the TV"
"What channel?"
"It doesn't matter"
I cant remember if classes were canceled or if I just skipped them, but I was glued. /1
On vacation, asleep. Hubby called, yelling “Turn on the TV!” I was mad at him for waking me up but until I saw it, I didn’t understand. No one did. My boss was mad at me for calling during her meeting because with no radio, tv, or smart phones there, she didn’t understand either.
— Joanna (@Caps_Girl1969) 2021年9月11日
It was early in CA. My bf called and said turn on the TV. I did and then watched as the second plane hit. Something I’ll never forget.
— Vicky 🌊 (@SDISBEAUTIFUL1) 2021年9月11日
20 years ago I was sitting in class when the teacher got a call to turn on the TV. Less than 5 minutes later our class watched as a plane flew into the south tower. Over the weeks, stories started of heroes on that Tuesday, men and women who made the ultimate sacrifice for others
— UnovanMatt_TTV (@UnovanMatt_TTV) 2021年9月11日
Germany, switching on the TV. Thought what is going on? Then I saw the 2nd plane and called hubby in the US and told him to turn on the TV.
— Gisela Leuterer wears a mask (@geebeeleuterer) 2021年9月11日
This time 20 years ago I was up late writing lecture on mass impact terrorism for terrorism course I was teaching. In those days you had to print notes for Projector so they had to be ready a day or two early. My dad called late - which scared me. And he said to turn on tv.
— Dr Leah Farrall (@allthingsct) 2021年9月11日
I was home getting a 3yr and 6mo old ready for daycare when mom called and said to turn on tv. I was watching as the 2nd plane hit. Frozen in fear. Debates about taking them in and decided I shd even tho scared to drive and it was so wild TIA was shut down no planes flying eerie
— Just_Lisa fighting cancer 💜🌠♊🐶💖🦄🌟☮️😺🏳️🌈 (@LTrctrc) 2021年9月11日
今日、 "to turn on the TV" と書いている人の中には、「テレビをつけなければならなかった」人もいる。
Yes in living in Ballard, the great dividing range, Queensland. We woke up to the news on the radio but had to turn on the TV because we couldn't understand what had happened.
— James Peadar follows back #writingcommunity ❤️🐟🌱 (@JamesPeadar) 2021年9月11日
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