※このブログは英語の実例についてのブログなのですが、今回は英語とは関係のない話です。はてなブックマークで知ったことなので、はてなブログに投稿しておきます。
昨日7月7日、はてブで下記記事が話題になっていたのに気づき:
「欧州極右」と聞いたら読まずにはいられないのでクリックしてみたのですが、ガザ・ジェノサイドでぱっつんぱっつんになっている頭(しかも、きゃっきゃうふふする仲のガザの人たちが明日にはもうこの世にいないかもしれないというおそれが、本当にリアルになっている)には、残念ながら入ってくるものは何もなく、ただ目を走らせながらだーっとスクロールダウンしてみたところ、「英国の極右」として重要な名詞であるBNPも出てこなければ(まあ、それはわかる。もう古いから)Britain Firstも出てきてないようだし、唯一出てきているのはUKIPで、それが衰退しちゃったことになってて、その「衰退」の最大の推進力である「ファラージ新党」ことReform UK(以下「RFUK」)が出てきていない。
ええと……。
というわけで、とりあえずTwitter/Xに連投したら、それが元の id:tyoshiki さんに拾われて追記として載せていただいたので(ありがとうございます)、それをこちらにも掲示しておきます。
あと、もろもろギリギリで、noteとはてなブログの区別がつかなくなっててすみません。
参政党のことで大騒ぎする前に、ヨーロッパ諸国の極右政党の台頭の経緯と現状について見てみましょう https://t.co/fR3WUfWrbM
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
ざーっと流しただけなんだけど、びっくりした👀
「ヨーロッパ諸国の極右政党の台頭の経緯と現状について」語っていて、Reform UK(RFUK)への言及がない、だと……?
"途中まで人気があったけれど失速した政党もあります。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
イギリス独立党 (UK Independence Party)やオーストリア自由党 (Freiheitliche Partei Österreichs)です。"
って書いてあって、オーストリアの話だけしてあるの👀👀👀
RFUKについての最近の世論調査結果、見てないんだ……それで語っちゃう…
オーストリアの自由党についてはBBC Newsがよく取り上げていたので一定のところまではニュースを追っていたけど、ガザ・ジェノサイドで全部忘れました。昔のことは覚えてるけどね(ヨルグ・ハイダーの時代のこと)。年寄りか。
ともあれ。
UKIPが悲願だったBrexitをやり遂げて消えたのはその通り。でもそれは、UKIPをあそこまでにしたカリスマ党首(ナイジェル・ファラージ)が抜けて新党(RFUK)を作ったからであって、UKIP支持者はそのまま新党支持者になってるし、何なら支持を拡大させている。二大政党のどっちもダメだからそうなった。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
「二大政党のどっちもダメ」というのは、英保守党は2019年にボリス・ジョンソンが「クリスマス選挙」に打って出てバカ勝ちして、その後Covidもあって一気に支持を失ったあとは過去に属する政党になったようだし(今のLDの元となった自由党がかつては二大政党の一翼であったという事実を思い起こされたい)、英労働党は障碍者年金を削減するという、マーガレット・サッチャーでもやらないことをやって、「経済成長を実現させましょう」とやっている最中で、一般庶民の支持は失っている。労働党は、極右にこびて移民制限策を打ち出したが、そもそも移民でない英国の人々の暮らしを損なう政策をやっていれば移民制限になど何の効果もなく、ただ伝統的な労働党支持層の離反を招いているだけ(その伝統的労働党支持層がどこに行くかがわからないが……)。
「伝統的な労働党支持層」(要するに政治的左翼の人たち)とは違う、ブレア以降の労働党(ニュー・レイバー)の支持層は、労働党の価値観を持っているというより、自分たちの暮らしをよくしてほしいということで投票してきたので、労働党がダメならほかの党に入れる。その選択肢になりうるのはどこか、ということでRFUKが伸びているのが現状だ。RFUKは要はファラージの党で、風を読む能力は抜群で、与党でも野党(英国の国会制度における「最大野党」)でもないので黙っていたほうがいいときは黙っていることができる立場でもある。
5月の世論調査はこう:
Labour record their lowest poll rating since October 2019 in YouGov's latest Westminster voting intention, while Reform UK post their largest lead to date
— YouGov (@YouGov) 2025年5月28日
Ref: 29% (no change from 18-19 May)
Lab: 21% (-1)
Con: 19% (+3)
Lib Dem: 15% (-2)
Green: 11% (+1)
SNP: 2% (=) pic.twitter.com/cPzFnTOHe0
で、こういうことを把握していれば「UKIPは衰退した」とは言えないはずなんですね。
そもそもUKIP自体が「極右」というくくりで見てると見誤る性質の政党だったし(BNPやNational Frontとは違うんで)。
当方、UKIPヲチャ歴長かったんですが、UKIPのことをぼやーっと「極右」としか認識してない方には、ロバート・キルロイ・シルク https://t.co/R4mVkktmLV についてざっと確認することをお勧めします。この人が一番わかりやすいと思う。70年代の労働党→TVパーソナリティ→UKIPという経歴。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
連ツイの別の枝葉:
SS党がどうのこうのというのはちょっと脇においておいて(私もあれを「極右」扱いできるのはニュースチェックしてる人だけで、「何か名前聞くようになったよねー」程度で今まで「参政」してこなかった人たちには無縁の話だと思う。植松はヒトラーの優生主義知らなかったでしょ)この記事はあかんと思う
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
「SS党」は参政党のことで、検索除けのための表記です。ガザ・ジェノサイドでいっぱいいっぱいのところでちょろっとメモった程度のことを引用されるなどしてぶわーってなったらたまらないので検索除けしてある。インターネット老人会しぐさ。参政党については、古谷さんの分析に納得してます。私の知ってる範囲でもそういう感じ。手作りのお弁当を宅配している個人のお店にポスターが出現している、というイメージ。
……「これまで自民党や立憲民主党を支持してきたが、今回は参政党に入れる予定だ」という人はほぼ絶無であり、いい歳(40代、50代)にもかかわらず、生まれてこの方一度も投票したことがない、という人が相当程度多い。
彼らはその時々に支持政党を変え、固定的な支持政党を持たない所謂「無党派層」ですらない。そもそも、世の中には与党と野党があり……―、などという新聞やニュースなどをある程度読んだり見ていたりすれば誰でも何となくわかっているだろう、政治的マトリックス(座標軸とも言う)が頭の中に一切存在していない。
だから、右翼とは?左翼とは?という漠然とした思想地図にも無知である。
――古谷経衡「参政党支持層の研究」 2025年6月26日
「植松」は、施設で入所者を殺して回ったあの大量殺人犯。彼も先行の政治思想にはまったく無知だった。何らかの形で思想が入っていたことは十分に考えられるが(アニメや漫画でもあの思想は否定的に言及されていたりもするだろう)、自分で考え、自分で判断していると少なくとも本人は思っていた。そういう「政治と無縁」なところからあのようなことが発したことを、私も受け止められなかった。
さらなる枝葉:
あとこのnote記事、「リベラル」の意味がわかんない。「左翼 left-wing, left-leaning」のこと? ほんとに日本語圏の政治を語る語彙がどれもこれもぐだぐだなために、中が真っ黒なアボカドみたいで形だけで中身がまともではないからどうにもならん。アメリカはふわっと語れても欧州はそうはいかないよ
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月7日
アメリカ合衆国は、最終的に「赤か青か」の二者択一になるので、基本の認識がある程度雑でもなんとかなっちゃう。欧州はそうはいかないです。フランスとか、私にはもうさっぱりわからない(サルコジのころまでの図式は通用しない)。あと、英国はこれまでは二者択一(二大政党制)だったけど、崩れてきている。「英国」というくくり自体も崩れてきているけど、そっちは崩れたあとにどうなるという展望もない(スコットランドのSNPがもう勢いを失ったし、カリスマ性のある人も見当たらない)ので、このまま現状維持だと思います。アイルランドを除いては。
あと、ごめんなさい、noteじゃなくてはてなブログです。
連ツイは以上です。
あと、追記いただいたことを受けてのさっきの連ツイもまとめておきます。
https://t.co/fR3WUfWrbM UKIP/RFUKについての当方の指摘を追記してくださいました。でも、申し訳ないけどゆるゆるの記述の問題点を「どんどん指摘」してる暇はないですね。ガザ・ジェノサイドで手一杯です。既にもう、やるべき(だった)ことが積みあがってて身動きが取れない状態が常態化している。 pic.twitter.com/jOxOZzUnS7
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月8日
ここで参照されているレイ・ダリオ氏の本を私は読んでいないのですが、原著 https://t.co/zg847RsEjQ が2021年11月で、そう古くはないけれど新しくもない。「Covid-19(コロナ)で世界はすっかり変わってしまった」と言ってた時期の本。原著のサンプルを見るにビジネス書。学術書ではない。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月8日
原著は下記っすね。電子書籍(Kindle)のサンプルがかなりたっぷり読めるので、見てみてください。読める部分は前書きというか「本書の使い方」「本書の考え方」のようで、私は体裁だけ見て「あー」ってなって、中は読んでない。Nationをベースに考えてますよっていうことはタイトルで言ってますね。
今、欧州極右について調べたいのなら、普通にGoogle検索したほうがいいですね。(英語が読めなくてお困りの場合は、普通のレートで個人間翻訳お受けします。)
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月8日
と、今気づいたんだけど、Google検索、すごくよくなってますね。ウェブページのアップロード/更新日時がわかりやすく表示されている。 pic.twitter.com/3NOTlZSYmQ
あと、極右について、アメリカの投資家は「ナショナリズム」を気にするのかもしれませんが、実のところ21世紀の欧州極右は「ネイション」はあんまりこだわってない。コアにあるのがこれ→ https://t.co/ylt0Tddg3K なので。例えば英国の極右が古代ギリシャの偉人を理想として掲げてたりするのがそれ。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年7月8日
「極右」イコール「ナショナリスト」というのは元からちょっとアレなんですが(ある議論の前提をそう設定することと、それが事実であるかどうかは別)、その話はまた。あと、「左派ナショナリズム」は以前から普通にある概念っすね。アイルランドのシン・フェインやスコットランドのSNP、ウェールズのPCなどを参照。
「ナショナリズム」イコール「極右」ってのもおかしな思い込みで、パレスチナ連帯の街頭の現場でグランドルールだかグラウンドルールだかで「いかなるナショナリズムも禁止します」と宣言しておいて、パレスチナ・ナショナリズムど真ん中のスローガンを叫んでいる、といったことも現にあったわけですが(さすがにそれはおかしいということはすぐに気づいたのか、「ナショナリズム禁止」条項に出くわすことはすぐになくなった)、「ネイション」「ナショナリズム」について考えたことがない人は、一度、考えてみるといいと思います。
お。検索ってしてみるもんですね。
佐原徹哉さんにはボスニア内戦についての本があります。




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