今回の実例は、インタビュー記事から。
先日、定冠詞について書いたものが当ブログには珍しいほどの閲覧数となったが、今回はそのフォローアップみたいな内容になる。
記事および実例として見る個所はこちら。ノーベル文学賞を受賞したアブドゥルラザク・グルナさんに、英フィナンシャル・タイムズのデイヴィッド・ピリング記者(現在はアフリカ支局)がインタビューして書いた記事で、記者による地の文の部分からだ。
Abdulrazak Gurnah, winner of the Nobel Prize for literature https://t.co/IF4OuW2OzF いい定冠詞がありますねー#英語 #実例 pic.twitter.com/zbbn6QOazQ
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2021年10月10日
最初の文:
By the time Gurna arrived in Britain, ...
この "Britain" は単なる固有名詞だから、無冠詞。
次に、画像の中でマーカーを引いた第4文:
The Britain he lived in was so white that, ...
これは、"he lived in" (「彼が当時暮らしていた」)という《限定》がなされているので、《定冠詞》がつけられている。
また、この文は《so ~ that ...》構文でもあり、何というか、いわば「驚きの事実」を伝える文体である。
グルナ氏が渡英したのは1968年だそうだが、そのころのロンドンの写真集を見ると、本当に白人しかいないものもある(よほどファッショナブルな界隈は別)。グルナ氏がいたのはカンタベリーだし、本当にここで書かれているくらいに「真っ白」だったのだろう。
次の例:
The Africa he depicts is more complex ...
これもさきほどのと同じ理屈で、 "he depicts" によって《限定》がなされているので、通常は無冠詞で使うAfricaという固有名詞に《定冠詞》がつけられている。「彼が描くアフリカはもっと複雑だ」という意味である。
短いけれど、今日はこんなところで。
※940字
こちらの本、先日の定冠詞についてのエントリを経由して、かなり多くの方に買っていただいている(ありがとうございます)。ここにエンベッドした2冊は、上が改訂版、下が最初のもの(電子書籍あり)で、中を確認したら単なる例文のアップデートだけでなく、改訂でかなり縮小されている部分もある。冠詞沼にはまりたい人なら、どちらも持っていて損はしないだろう。サイズ的に場所を取る本でもない。
こういう大きな改訂をしたときに、改訂前のものを電子書籍として流通させ続けるというのは、研究社さんえらいと思う。