Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

英語記事での繰り返しを避けるための言い換え, やや長い文, 二重目的語をとる動詞, 付帯状況のwith, など。(映画『ベルファスト』が最優秀脚本賞でオスカー獲得)

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今回の実例は報道記事から。

日本時間で今日3月28日の朝から昼過ぎにかけて、米国のアカデミー賞の授賞式が行われ、日本では先週金曜日の25日からロードショーが始まったばかりのケネス・ブラナー監督・脚本の映画『ベルファスト』が最優秀脚本賞を受賞した。

belfast-movie.com

「ベルファスト」という地名が国際報道に出るときは、ほぼ常に、爆発とか暴動とかいったことが起きているときで、これを現地の人々や現地にゆかりのある人々はTwitterで「変な理由でトレンドしてる (Belfast is trending on Twitter for a wrong reason)」と言うなどして嘆くのだが、今回はそうではない。というか、この映画のこのシンプルなタイトルが、そういう、なかば常識みたいになってることを変えていくかもしれない。

と期待したいところだが、現実にリアルタイムでベルファストから流れてきているニュースは、必ずしもそのような楽観を許してくれていない。

www.bbc.com

だから、映画が高く評価されていることだけを見て浮かれ騒ぐということはできないのだが、それでも、こういったポジティヴなニュースでベルファストという地名が国際的に取り上げられることは、とても大きな意味を持つ。There's no going back と人々が言う通り、かつての、つまり北アイルランド紛争の時代のベルファストに戻ることは、ない。

というわけで、今回の実例はブラナー監督の受賞スピーチを報じるベルファストテレグラフの記事から。記事はこちら: 

www.belfasttelegraph.co.uk

私が見たのは速報段階の記述なので、その後、アップデートとリライトがなされて、記述が変わってしまっているが、私が見たときの記事の書き出しの部分: 

https://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/film-tv/oscar-delight-for-kenneth-branagh-as-he-scoops-best-original-screenplay-gong-for-belfast-41493738.html

この部分を一読したところで、英語の報道記事特有の表現の《言い換え》を確認しておこう。下図で赤、青、黄色のマーカーをつけたものがそれぞれ、同じものを言い換えている表現である。

https://www.belfasttelegraph.co.uk/entertainment/film-tv/oscar-delight-for-kenneth-branagh-as-he-scoops-best-original-screenplay-gong-for-belfast-41493738.html

"Academy Award" が "golden statuette" に言い換えられているのは、いわゆる「オスカー像」のことである。

その記述を含むパラグラフ: 

The tightly contested category was the one critics and bookmakers predicted the most likely to earn Branagh his first golden statuette, with his closest rival considered to be Paul Thomas Anderson for Licorice Pizza.

やや長い文で情報量も多いが、一読して構造が取れただろうか。

この文には《関係代名詞の省略》(接触節)があるので、それを青字で補いつつ、構造を示すと: 

The tightly contested category was the one that critics and bookmakers predicted the most likely to earn Branagh his first golden statuette, / with his closest rival considered to be Paul Thomas Anderson for Licorice Pizza.

太字で示した部分が文の骨格で、青字のthatからコンマ(赤色でスラッシュを入れた箇所)までは、省略されている関係代名詞の節で、"the one" を説明(修飾)する形容詞節。コンマからあとは、《付帯状況のwith》を使った情報の追加だ。

関係代名詞の節を見てみよう。

that critics and bookmakers predicted the most likely to earn Branagh his first golden statuette

これを関係詞の節でなくして、普通の文にすると: 

Critics and bookmakers predicted it the most likely to earn Branagh his first golden statuette

となるだろう。ここでのポイントはpredictという動詞で、これは《predict O to do ~》という形で、「Oが~すると予測する」の意味を表す。ただしこの形はあまり見ることはなく、たいていは受動態の形で、《... is predicted to do ~》になっていて、手元にある『ジーニアス英和辞典』(第5版)では、その受動態の形でしか説明が出ていない。

この例では《to do ~》に副詞のlikelyの最上級の形である "the most likely" がついていて、「Oが最も~しそうだと予測する」という意味になっている。

ここまでを踏まえてまとめて意味を取ると、「評論家やブックメイカー(賭け屋)は、それ(=この部門)が最もブラナーに最初のオスカー像をもたらしそうだと予測していた」ということになる。

今日本語にして気づいたが、この部分には《earn A B》という二重目的語の構造も入っている。「AにBをもたらす」という意味で、Bには「賞賛」とか「休暇」のような、Aにとってよいものが来るのが通例である。

次のセクションにいこう。

with his closest rival considered to be Paul Thomas Anderson for Licorice Pizza.

《過去分詞》を伴った《付帯状況のwith》の構造である。

ここで過去分詞になっているconsiderは、《consider O to do ~》の構造を取る動詞。つまり、

  They consider his closest rival to be Paul Thomas Anderson...

  → His closest rival is considered to be Paul Thomas Anderson...

という受動態の形があるから、

  with his closest rival considered to be Paul Thomas Anderson...

という付帯状況のwithを使った形になっているわけだ。

意味は、意訳すれば「彼の次に最有力と考えられていたのは、『リコリス・ピザ』のポール・トーマス・アンダーソンだったが」ということになる。

 

ケネス・ブラナーのスピーチは、アイルランドおよび北アイルランドを見てきた人には、感慨深いものだ。ぜひ、聞いてみていただきたい。

(まだ映像クリップが見つからない)

授賞式後バックステージでの記者との質疑応答のクリップ: 

www.youtube.com

 

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