Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

エリザベス女王の葬儀との安易な比較もいいけれど、参列者についての記事を読んでみるのもいいのではないか・序(「弔問外交」が連呼される安倍氏国葬の日に)

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今回は、英文法の実例というより英語記事の探し方について。

今日2022年9月27日は、7月に殺害され、その数日後には東京タワーの足元にある増上寺という立派なお寺でお葬式が行われた安倍元首相の「国葬」と称する行事が、九段下の日本武道館で行われた。私は丸一日、音声を伴うメディアをシャットアウトして、開いている時間はほぼずっと読書して過ごしたので、それが日本国内外のテレビやラジオのようなメディアでどのように報じられたのかはさっぱりわからないが、Twitterではやはりその話ががんがん流れてくる。中にはいろんなレベルで何かとついていけない話もある。

こういった指摘のほかに多かったのが、英国のエリザベス女王の葬儀との比較の発言である。それも見た目の壮麗さなどの比較ではなく(その点では、日本が日本式の、それこそ天皇の即位の儀のようなものをやるのでない限り、かなうわけがない)、予算の比較だ。BBCが記事にしていたことも大きく作用しているだろう。

私自身は、費用の比較はあまり意味がないと思っている。第一に、こういう比較は日本では日本円に換算して行われるが、為替相場によってどうとでもなってしまうから。それと、英国の王室は自分たちの財産を持っているし、自分たちの不動産物件を会場に葬儀を行っているわけで、安倍氏の所謂「国葬」とは条件が違いすぎている。

それでもなお、この「国葬」とやらにこんなにカネかけてどうするんだろう、というのは、ある。

その点について、「国葬」とやらの支持者からは「弔問外交」という疑似的な四字熟語が、呪文のように唱えられる。この疑似的四字熟語が呪文化したのは、中曽根元総理が死去して1年近くたってから行われた壮麗な「国葬」もどき(内閣・自民党合同葬)のときだったと思うが、そのときも、「そんなん、国費使ってやるなよ」という批判に対して「弔問外交というものがあるのを知らないのですか」という、謎の上から目線の反論が起きたものだった。

死去したときに90代で、同時代の国外の政治家たちの多く(ロナルド・レーガンマーガレット・サッチャーなど)はすでに亡いような昔の政治家の、死去から1年も経過してから行われる「葬儀」にくる人々の間で、どんな「外交」が行われうるというのだろう。しかもコロナ禍で日本は外国人の入国を事実上禁止していたタイミングではなかったか? Twitterを立ち上げれば、日本の学校に学費をおさめてあるのに渡航できずにいる学生たちからの嘆きや落胆の声が毎日届いていたころではなかったか? 

そもそも「葬儀」と呼ぶのが変だ。初七日どころか四十九日も過ぎてから行われるものはよくある仏教なら「法要」、宗教色を取り除くのなら「追悼式典」である。ワシントン・ポストTwitterフィードはそこを正確に伝えていた。

そもそも「弔問外交」というのは、中身がない。「英語ではあまりそういうのにこだわらないかな」というくらい、実体のない概念である。デーブさんの指摘: 

《引用符》を使っているということは、「所謂~」という意味でそのフレーズを使っているということだ。「所謂『撮り鉄』」とかいう感じで、「辞書には載ってないけど、世間ではそう言うよね」くらいの言葉にも用いるし、このケースのように、「外国ではそのように呼びならわされている」という意味合いで英語化したフレーズを使うときにもこの形を用いる。

で、エリザベス2世の葬儀では、ほとんどすべての国が代表者は1人(というか1組)だけだったのが、アイルランドは大統領と首相の2人が葬儀に参列していたということは、当ブログですでに書いた。そしてこの機会に、アイルランドのマーティン首相はダウニング・ストリートで英国のトラス首相と会談をしているのだが(葬儀の前に北アイルランドベルファストで行われた追悼の集会でも2人は緊急の課題について話をしている)、そういうのを特に「弔問外交」と騒ぎ立てた形跡はない。

www.belfasttelegraph.co.uk

記事の記述は次のようになっている。

Irish premier Micheal Martin is to meet Prime Minister Liz Truss on Sunday, before attending the Queen’s funeral the following day.  

Ms Truss will also meet US President Joe Biden, Canadian prime minister Justin Trudeau, and Poland’s President Andrzej Duda at 10 Downing Street on the same day as Mr Martin.  

The Taoiseach is expected to offer Ms Truss his condolences on the death of the late monarch, ahead of the state funeral at which hundreds of the world’s dignitaries are expected to attend.

...

「外交」にあたることは、"meet" というシンプルな語で表されている。

そもそも「弔問外交」とは、「弔問」のために各国の首脳などが一つの場所に集まって顔を合わせれば「社交」行事のようになる、という意味だろう。「外交」には入念な準備が必要なガチの交渉事もあれば、顔を合わせて互いに挨拶をして話をするというカクテルパーティーのようなものもあり、「弔問外交」でできることは後者だ。「弔問」のついでに顔を合わせたので軽く「社交」的なことをしておくことを、あたかも「社交」的なことをするために「弔問」するかのように扱うのは、話が変だ。コンビニに立ち寄ったついでにガムを買うことと、ガムを買うためにコンビニに行くことは違うはずだ。

それでも、日本語では「漢字が4つ」の疑似的な四字熟語(漢字2字の熟語が2つくっつけられたもの)は絶大なパワーを持つ(かねてから私は、日本でのnewspeakは、ジョージ・オーウェルが『1984』で描いたような言葉の単純化ではなく、むやみやたらな四字j熟語化として現れているのではないかと思っている)。「弔問外交」もそのひとつだ。このほかに「風評被害」といった例もある。その文字列を突き付けられると、何か、文句を言っちゃいけないような圧力を感じる。本来、「風評」と「被害」が別々の語であるように、「弔問」と「外交」も別々の語である。それが一緒になることで、別々の単語をただ並べてあるだけというより強い磁場みたいなのができてしまう。

 

とまあ、ここまでで4700字を超えているのだけど、まだもう少し続ける。ただ、今日書こうとしていたことは明日に回すかな……もうすでに長すぎるので。長すぎるので。

 

安倍氏は元首相で、具体的には2つ前の代の首相だ。「外交」では互いに格を合わせるのが原則で、だからエリザベス2世(国家元首)の葬儀には世界各国の国家元首が参列したのだが、安倍氏の場合は、葬儀から2か月半も経過した今なぜか強行されているこの追悼行事を本当に「葬儀」と受け取っているとして、2つ前の代の政治リーダーが参列するのが筋と言えるだろう。

だからといって……という人選をしてきたのがフランスだ。ちなみにフランスは大統領制だが、大統領は名誉職のようなもので政治リーダーは別にいるというアイルランドのような体制とは異なり、大統領が政治リーダーを務めている(米国と同じパターン)。

確かに、サルコジは2代前のフランスの政治リーダーである(今のマクロンさんの前がオランドさんで、その前がサルコジさん)。だから「格」としては合っているのだろう。しかし……

英国からも2代前の首相だったテリーザ・メイが来ているそうだが、メイは今は何のポストも持っていない平議員で、保守党内では「終わった人」の位置づけである。

そして、普通に人権意識がある国ならば無視する、クーデターで、民主的な政権をつぶして権力の座に居座っているあの軍事政権。現在進行形で絶賛弾圧中である。まあ、故人が「戦後レジームからの脱却」とかいって、人権という考えを目の敵にしてきた人だから、これも当然の成り行きかもしれない。

で、今日、予定を変更してこれを書いているのはここからの流れである。

でも7000字近く費やして、そこまでたどり着けていない。明日、また。

ミャンマーが話題に出たついでに: 

そして、オーストラリアでの報道。オーストラリアはアルバニーゼ首相が武道館に来ている。

 

※6700字

 

https://twitter.com/dave_spector/status/1574371290970230784



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