Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

過去分詞の後置修飾, 引用符の使い方, 代名詞のoneと《one of the ~》のoneの見分け方, など(ベルギー国王、コンゴにおけるかつての植民地支配について遺憾の意を表明)

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今回の実例は、報道記事から。

19世紀後半、帝国主義の時代の「欧州列強によるアフリカ分割」は、世界史の授業で重点的に教えられる項目のひとつである。その時代、アフリカの中心部にある「コンゴ」と呼ばれた一帯を、私有地として支配したのが、当時のベルギー国王レオポルド2世であった。現在のフィリップ国王の4世代前に当たる(家系図)。

レオポルド2世の支配は残虐を極めた。私領だから、普通の国家のような立法府や行政府が置かれることもなく、所有者(支配者)イコール法律、みたいなことになっていて、おびただしい血が流され、現地の人々には人間としての尊厳などないような状態だった。現地の文化は「珍奇なコレクターズアイテム」として略奪され、収集対象とされた。

この時代のこの地域のことが背景にある小説が、ポーランドから最終的に英国に渡って作家となったジョウゼフ・コンラッドの『闇の奥』で、この小説が翻案されたのがフランシス・フォード・コッポラの映画『地獄の黙示録』である。

この時代のことを、ベルギーは長く無視というか放置してきた。今回、ニュースを見て「そういえば少し前に、ベルギーがコンゴに対して初めて《謝罪》をしたというニュースがあった気がするが……」と思い、検索して確認してみたところ、2019年4月に、国王ではなく首相が、植民地支配についてではなく現地の女性と白人のベルギー人との間に生まれた子供たちを強制的にベルギーに連れて行って養育するという拉致を行っていたことについて、人権侵害であったことを認めて、国を代表する立場で謝罪を行った、というものだった。

そして実際、植民地支配そのものについての《謝罪》は、2022年の現在でもまだなされていない。

ただし、その《謝罪》が行われることになるのではないかという流れが感じ取れるようにはなってきている。それを伝えているのが今回見る記事である。こちら: 

www.bbc.com

フィリップ国王が、DRC(コンゴ民主共和国)を訪問して、植民地主義時代のベルギーによるコンゴ支配は人種主義に基づいたものであったと認め、《遺憾の意を表明》した、というニュースである。

まず、記事の最初の部分: 

https://www.bbc.com/news/world-africa-61730651

最初の文: 

Belgium's King Philippe has decried the racism meted out in the Democratic Republic of Congo under the colonial rule of his ancestors.  

太字にした "meted" は《過去分詞》で、先行する "the racism" を修飾する句を導いている(後置修飾)。つまり、ちょっと長く感じられる文だが、文の本体と言えるのは "Belgium's King Philippe has decried the racism" だけで、残りは修飾語句だ。

この文は単語が難しいかもしれない。decryは報道ではよく遭遇する語で、他動詞で「~を非難する」という意味だ。ニュアンス的には「~について強い調子でノーと言う」くらいの感じ。

過去分詞として後置修飾の構造を作っているmeteは、あまり見かけない語で、mete out ~の形で「~を与える、科す」の意味。辞書を見ると「文語」とか「正式」といった位置づけがされており、日常生活の中で使うことはあまりないだろうが、論文を書くときには使うような語と認識しておくとよいだろう。

文意は、「ベルギーのフィリップ国王は、先祖の植民地支配のもとで、コンゴ民主共和国(DRC)において科された人種主義を、強く非難している」と直訳される。

次の文は、最初に《引用符》が使われていることから即座に「誰かの発言である」とわかると思うが、そのように想定して読み進めていかないと誤読する(かもしれない)。

"This regime was one of unequal relations, unjustifiable in itself, marked by paternalism, discrimination and racism," he said.  

このように、引用符でその人が言った発言を一字一句違えずに引用し(ただしこの場合は、元の発言を英語に翻訳していると思われる。DRCの公用語はフランス語なので)、その後に誰が述べたかを書く、というスタイルが、誰かの発言を紹介するときの基本のスタイルである。

引用符の中の文は、頭から読んでいくと "This regime was one of ..." で「この体制は~のひとつであった」という意味に頭の中で自動的に同時通訳していっているのではないかと思うが、その先を読むと、その意味ではないことがわかるはずだ。そういうときに自分の読みを修正できるかどうかは非常に重要で、そういうところにこそ《文法》の力がかかわってくる。どういうことか。

もしもこれが「~のひとつであった」の意味ならば、《one of the + (形容詞+)複数形》の形になっているはずだが、ここでは定冠詞のtheもなければ複数形の名詞もない。

となると、どう考えられるか。

実はこの(上で下線部を補った)"one" は《代名詞》で、先行の "regime" を受けている。次の例文で使うoneだ。

  I bought a yellow jacket, my brother a green one

  (私は黄色のジャケットを買い、弟は緑のを買った)

青字で示した "marked" は《過去分詞》。

フィリップ国王の発言の文意は、直訳すると「この体制は、不平等な関係のそれ(体制)であり、それ自体が正当化しえぬものであり、また家父長制と差別と人種主義に特徴づけられたものでした」ということになる。過去の植民地主義時代の統治を、美化の余地なしで、全面的に否定している。

第3文: 

King Philippe is on a week-long visit to DR Congo at the invitation of President Félix Tshisekedi.

この文は、注目点は前置詞の使い方くらいだろう。

「~を訪問中である」は、これはもう連語として覚えておくといいと思うが、ここでは《be on a visit to ~》とonを用いて表している。このonは「旅行で」を表す《on a trip》でも使うonだ。これは自分でも使いたいときに使えるように、頭の中の引き出しに入れておきたいonの用法である。

「~の招きに応じて、~の招待で」は《at the invitation of ~》と、atを用いる。

あ、もうひとつポイントあった。下線を補った "a week-long visit" のところ。これは、2語をハイフンでつなげて《複合語》とし、1語の形容詞にしてあるもので、a three-year-old boyなどといった表現と同じ種類のものとして、頭の中に入れておきたい。

 

※3050字

 

 

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