Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】仮定法過去完了 (ドイツ、極右テロ集団の裁判/欧州の諸言語について)

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このエントリは、2021年4月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、報道記事から。

ドイツで、極右テロ集団の裁判が始まったとBBC Newsが伝えている。2019年秋にテロ計画が発覚し、2020年2月に集団のメンバーが逮捕され、今回その裁判が開始された、という報道である。ドイツで起きていることを英語で伝える記述だが、そこに「もしもこの集団のテロ計画が実行されていたら」という《仮定法過去完了》のお手本のような一節がある。今回の実例はそれ。

記事はこちら: 

www.bbc.com

実例として見るのは、記事を少し読み進めていったところにあるこの部分: 

f:id:nofrills:20210413180506j:plain

https://www.bbc.com/news/world-europe-56716712

"If the accused had been able to carry out their planned acts of terror, we would have had a totally brutal and massive killing machine running here," said Ralf Michelfelder, chief criminal investigator for the state of Baden-Württemberg.

引用符内は、このまま下線部和訳の問題にしてもよいくらい、お手本通りの仮定法過去完了である。

これが仮定法で書かれているのは、現実には、この集団は計画を実行段階に移す前に摘発され、「計画されていた彼らのテロ行為」を実行することができなかったからである。

欧州の諸言語には、私たちが日本で習う英文法でいう「仮定法」と同じように、現実には起きていないことを仮定して述べる(反実仮想)際に使う「法」(ものの言い方についての文法的な規則)がある。ドイツ語については、英語について私たちが「仮定法」と呼んでいるものは「非現実話法」と呼ばれるようだ*1。東京外国語大の「言語モジュール」の当該ページなどを参照されたい。

www.coelang.tufs.ac.jp

フランス語では、「仮定法」のことは「条件法」と言う。英語以上によく使う。

www.coelang.tufs.ac.jp

英語は英語だけやっててもなかなか納得しづらいことも多く、そういうときは英語以外の欧州の言語をやってみると「そういうことか」とストンと落ちることがある。欧州の諸言語は、数は多いが、全部がてんでばらばらというわけではないし、言語としての発想・規則性は共通点が多い。フランス語と英語は系統は違うが(前者がロマンス語、後者はゲルマン語の系統)、それでも文法は意外と共通している。私はフランス語は結局身に着けきることができず、離れた瞬間に忘れてしまったような体たらくだが、それでも、フランス語を習得しようと努力したこと(そして挫折したこと)で、自分にとっては全然よそものである英語が、英語は英語だけでみようとしていたときより全然はっきりした存在になったことは間違いがない。これを10代のうちに経験できたことは、とてもよかったと思う。そして、そういうことは時間に余裕があって頭にも余力がある大学の時しかできない。先日、大学でフランス語の講座に学生さんがこないという、大学の先生の発言を見て、とても残念に感じた。大学生の方にはぜひ、「外国語は英語だけ」という壁を作らないようにしていただきたいと思う。私は上述したようにドイツ語は全然やっていないのだが、もしドイツ語をやっていたら、今回のBBC Newsの文面もまた違ったように見えていたのではないか(←ここ、仮定法の使いどころ)と思うし、それが見えないことが残念だと思うし、今からでも時間を見つけてドイツ語の入門書をめくってみるくらいのことはするかもしれない。

 

 

 

 ※2100字

 

 

英文法解説

英文法解説

 

 

 

*1:「ようだ」と言うのは、私がドイツ語文法を全然習ったことがないからである。

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