昨日、東京都で中学3年生を対象とするESAT-Jという英語の試験(テスト)が行われ、今日その問題と解答例が開示されたので、現在はそれの検討をしているのでブログを書く時間が取れません。すみません。
今日は中国・上海で抗議行動の取材に当たっていたBBC記者一時拘束されたことについての記事を扱うつもりでした。文法的には特に難しいところはなく、扱う項目も《前置詞+動名詞》や《時制》くらいだけど、文章を読む練習にはなりそうだということでメモっていたものです。1日1記事で英語の勉強が目的で当ブログをご覧くださっている方々は、各自、リンク先でお読みいただければと思います。
さて、そのESAT-Jですが、試験の中身はさておき、運営がひどかったことが、当日(つまり昨日)からTwitterで伝えられています。電話窓口があるときにその窓口に言わず(ちなみにその電話は極めてつながりにくいそうです)Twitterで伝えられているものは「証言」にはならないなどという発言も「中の人」のお立場の方から出ていますが(Twitterについてそういうこと言われると、15年前に戻った感あるよね。誰かが持っている情報が流れたがっているときに、「情報の正規ルートとは何か」を持ち出してそれを止めようとする、みたいな)、都議会の議員さんたちが議会に持っていくためにGoogleフォームを使って情報を集めているので、この試験を受けられた方は、ご自身が経験したことを書き込んでみてください。書き込みに際して、Googleアカウントは必要かもしれませんが(要確認)、個人情報は不要です。
例えば、この試験は同じ設問を前半と後半の2組に分けて受けるというわけのわからない試験だったのですが、音声での試験であるにもかかわらず試験会場の防音措置が講じられていない状態だったので、前半組が答えている声が、後半組に聞こえる、という状況になっていたと受検した人からの報告が相次いでいます。せめて「前半組は3階、後半組は2階」といったように動線を分けなければ、試験として成立しえないというのに(そしてそのことは、試験実施前から指摘され続けてきたというのに)。
このほかにもESAT-Jは問題がてんこ盛りで、「ツッコミどころしかない」状態の試験ですが、理念とか方針とか関係なく、試験当日に何が起きていたのかという点について、このことひとつだけとっても、こんなめちゃくちゃな「なんちゃって試験」を、高校入学の合否の判定に使ってはならないということは、明らかです。試験として体をなしていません。
というところで、問題を見てみたのですが、とりあえず下記、気づいたので。業界的には、著しい英米差があるものは、設問にしない(あるいは別解の発生を前提とする)という暗黙の了解があるはずなんですけどね……。建物の階数はその最たるもので、学校で教科書に基づいて行う試験なら問えることでも、教科書という縛りを離れて英語一般になったら問えなくなるんですよね。
#ESATJ Part B, No. 1https://t.co/dYkRa8weMU
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年11月28日
これ、解答例として示すのはthe second floorでよいと思うのですが、採点基準で「firstも正解とする」という指定がないと、イギリス英語圏からの帰国子女にとっては不当ですね。 pic.twitter.com/GqPvVx5eNs
英米差で最も有名な事例ですが(知らないと旅行もできないから、イギリス英語圏諸国の旅行ガイドブックに載ってる。アメリカ英語しかやってない人は知らないんだけど)、イギリス英語では1階はthe ground floorで階数としては数に入らない。https://t.co/SDRA7cPrq8 など多くのブログが扱っています。
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年11月28日
つまり:
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年11月28日
1階 = (American) the first floor; (British) the ground floor
2階 = (Am) the second floor; (Brit) the first floor
3階 = (Am) the third floor; (Brit) the second floor
...
#ESATJ Part B, No. 1
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年11月28日
この設問、解答条件が「準備10秒、解答10秒」なのですが、イギリス英語圏で長く過ごした帰国子女で日本での英語教育(英語教科書)にそこそこさらされた方なら、firstとsecondのどっちで答えればいいんだと一瞬迷うことで5秒はロスしますね。 pic.twitter.com/MgMtXqS89c
イギリス英語圏から帰ってきたばかりの方なら、この図を見せられてぱっとthe second floorとは言えないと思う。
— nofrills/文法を大切にして翻訳した共訳書『アメリカ侵略全史』作品社など (@nofrills) 2022年11月28日
(しかしまあこの絵の過剰なことと言ったら……余分な情報から何かを探し出すという楽天市場のサイトデザインみたいな情報処理のプロセス、英語力とはほんっと無関係だよね)
※サムネ用: