Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

接続詞のas, whenever, so ~ that ...構文, など(英国は本当にメディアが提示しているほど一様に「全国民が喪に服している」のか)

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今回の実例は、論説記事から。

英語圏の一般紙には「論説記事」(Opinion) のためのスペースがある。ここには、新聞のメインである「報道」とは目的を異にする「論説」のための文章が掲載される。今回、エリザベス2世が亡くなったあと、新国王の動向だけでなく、棺に付き添う王族の一挙手一投足までも見出しにせずにはいられないかのような王室ニュースに埋めつくされた感のある報道機関のサイトで、Opinionのスペースは貴重な言論のためのスペースとなっている。

前回、少し触れたのだが、人々が「自国の歴史」として意識する範囲においてはほとんどずっと王政(君主制)をとってきた英国(というべきか、イングランドとするべきか、非常に悩ましいが)にも、王政廃止を主張する共和主義の伝統*1はある。現実世界では、共和主義者は、エリザベス2世の棺が通る道で意見を公にすれば、警察によって強引に排除されたり、逮捕されて起訴されたりしていると伝えられているが(その実例は、あとでこのエントリの下の方に埋め込んでおくことにする)、新聞紙面では声を挙げている。もちろん、それを掲載する新聞があってのことだが、旧芸名「ジョニー・ロットン」ことジョン・ライドンまでが「若いころに歌ったあの歌の歌詞、あれは本気じゃなかった。敵意などなかった」的なことを言い出している中で、貴重な声である。

私はどうしても、香港が急速にああなってしまったことを考えずにはいられないのだが、ジョージ・オーウェルが『1984』に/で描いたのは、イングランドである。現在のこの異様な状況をネット越しに眺めるとき、そのことを忘れずにいなければと思っている。イングランドは一色に染まっているかのように伝えられているが、実はそうではない、と。

さて、今回の記事はこちら: 

www.theguardian.com

落ち着いたトーンで具体的に書かれた文章で、英語は易しいので、少々分量は多く思われるかもしれないが、ぜひとも全文を読んでみていただきたい。

今回の実例としてみるのは、最初のパラグラフから。文章のスタイルがさっくり読めることに主眼のある新聞の論説記事というより、少し時間をかけて読ませるLondon Review of Booksのような言論誌の記事に近く、少し分量のあるパラグラフだが、その中ほどから。

https://www.theguardian.com/commentisfree/2022/sep/14/there-is-no-single-national-mood-just-ask-britains-republicans

キャプチャ画像内の最初の文: 

All our mainstream media are preoccupied by the monarchy, as the days since the Queen’s death have relentlessly made clear.

太字にした "as" は《接続詞》で、《様態》を表す。「~するように」の意味だ。その後ろにあるsinceは接続詞ではなく《前置詞》で、asの節内の主語は "the days", 述語動詞は "have made" という構造になっている。意味は「女王の死以降の日々が、容赦なく(=反論の余地なく)明白にしているように」。

主節で用いられている "preoccupy" という動詞は、使えるようにしておくと便利である。単に英和辞典を引いて「意味」を暗記するのではなく、分解すれば pre + occupy になっていることも合わせて考えて、納得して語意をとらえるようにしたい語である。pre- は「前もって」で、occupyは「占める」。何かが起きる前に、その出来事が心を占めてしまうというイメージを持とう。今回の女王の死で言えば、女王の棺がまだロンドンに到着していないのに、到着したことを報じる記事を掲載するための新聞紙面を空けておく(紙面のその部分は、そのニュースのためにpreoccupyされている)という例で覚えられると思う。もっと日常的な例では、好きなアーティストの新作がリリースされる直前は、それに頭がpreoccupyされていて、他のことが頭に入ってこない、といったものがある。

第2文: 

Whenever there is a big royal occasion, most journalists, politicians and other public figures speak about it with one approving voice.

この文は、先ほど見た文(「英国のメディアは王室にあまりにもご執心である」という内容)のサポート文として機能しており、前文で述べたことをさらに具体的に示している。

太字にした文頭の "whenever" は「~するときはいつでも」の意味で、「何か大きな王室の出来事があるときにはいつでも」と直訳される(書いちゃったからこのままにしておくけど、ここで "a big royal occasion" の a を「何か」と訳出するのまで「直訳」と扱っていいのかどうかは私にもわからない)。

この文は、つまり、「王室で何か動きがあるといつでも、ジャーナリストも政治家も、その他公共の場で発言する機会のある人たちもみな、一様に、王室支持の発言をする」と言っている。ロイヤル・ウエディングだといえば皆が口をそろえて「おめでたいことだ」と言う、というような現象のことだ(ハリー王子とメガン・マークルの結婚のときも、一部の右翼メディアはアメリカ人で離婚歴があって白人ではなくて親との関係が微妙なことになってる彼女を攻撃していたが、BBCなどエスタブリッシュメントのメディアは一様に「おめでたい」「あのハリーが大人になって人を愛した、おめでたい」「メガンは歓迎すべき新風」という扱いだった。当ブログでも当時のハリーとメガンのBBCインタビューなどを扱っていると思うが)。

ここではこの文の筆者は、ハリー王子夫妻に対するタブロイド・メディアのめちゃくちゃな批判(というよりいじめ)のようなものは、"most" の数に入れていない。この文は、そういった点から批判的に見ながら読むことも可能だろう(普通に文を読むための英文法の勉強をしている段階ではやや無理目だと思うが)。

なお、ここで "whenever" を文頭に持ってきているのは、上記のキャプチャにはないがこのパラグラフの第1文、 "Our monarchy, however restrained and “constitutional” it is always said to be, is actually a totalising system." の however と響きあう効果を持っている。筆者がそこまで考えて技巧的に書いているのかどうかはわからないが……。

第3文: 

These rituals are so familiar that their strangeness in a society that is supposed to be a diverse, irreverent democracy – and their particularity to this country – is not much noticed and even less discussed.

やや長い文だが、太字にした部分の《so ~ that ...》構文に気づけば、構造を取るのは難しくないだろう。青字の部分は《ダッシュ》または《ハイフン》で挟んで《挿入》されているので、文構造を取るにはいったん外していい。

この文が長くなっているのは、《so ~ that ...》のthat節が長いからで、このthat節の構造を正確にとることが鍵となる。まず、節内の主語は "their strangeness" で、その直後の "in a society" はその修飾語。続く "that" (下線部)は《関係代名詞》のthatで、ここからダッシュで挟んだ挿入部までがthat節内の主語である。つまり: 

that [ their strangeness / in a society ( that is supposed to be a diverse, irreverent democracy ) – and their particularity to this country – ] is not much noticed and even less discussed.

このような構造だ。「多様で、不敬な民主主義であると想定されている社会なのに、彼ら王室の奇妙さは――そして彼らのこの国に対する特殊性は――、さほど注意を払われないし、話題に上ることとなるとさらに少ない」という意味である(やや意訳した)。

 

※ここまででだいたい4000字


上で述べた件、今回、共和主義者の逮捕等が次々と伝えられている。

今回読んだガーディアン掲載論説記事についている写真は、↑↑この排除事例↑↑での写真。

 

 

 

 

 

*1:イングランドの歴史からすれば短くて「伝統」と呼びにくいかもしれないが。

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