このエントリは、2021年4月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例は、報道記事から。
今日は時間がないので前置きはごく短く済ませたい。BBCのPanoramaという番組は、日本でも少しは知られているかもしれない。時事問題についての調査報道番組だ。ときどきひどいものがあるが*1、たいていは立派な内容である。
そのPanoramaが、今回、過去のPanoramaについて調査報道を行うという。今回の調査報道を担当するのは、北アイルランドでの「ダーティー・ウォー」(特に治安当局と現地武装勢力との癒着)についてやサウジアラビアでの人権侵害の調査報道を行ってきたジョン・ウェア*2。彼が調査対象とする過去のPanoramaは、1995年に当時新人だったマーティン・バシール記者(現在はBBCの宗教分野担当で、今は新型コロナウイルス感染で休職中)が行ったダイアナ妃のインタビューである。このインタビューでダイアナが吐露したいろんなことがあちこちに波紋を広げたのだが、そもそもこのインタビューを取り付けたバシールが不正な手段を使っていたという「疑惑」が調査されてしかるべきということになり、現在、ダイソン卿という人による法的な調査と、BBCによる調査の2つが行われているそうだ。で、法的な調査のほうの結論が報告書という形で出される前に、BBCがジョン・ウェアを担当にして行った調査を、問題が生じたPanoramaという番組の枠で、5月に放送することになった、というのが今回見る記事の報道内容である。記事はこちら:
記事は、冒頭3パラグラフが全体の要約(サマリー)になっていて情報がてんこ盛りで、予備知識がないと何を言ってるのかが非常にわかりづらくなっているが、第4パラグラフ以降でそれぞれ具体的に説明されているので、最初はわからなくても読み飛ばせばよい(この「読み飛ばし」のテクニックが身につくと、英語を読むスピードがアップして量をこなせるようになる)。
実例として見るのは、本題(具体的な説明)に入ってから少し読み進めたあたり。
To have stopped the investigation by Ware could also have been regarded as censorship.
《to不定詞》(名詞的用法)が主語になっているという、ややめずらしい文なのだが(多くの場合、to不定詞を主語にするより形式主語のitを使うことが好まれる)、それに加えてここではto不定詞が《完了不定詞》になっている。「過去において、ジョン・ウェアによる調査を止めたこと」というのがこの主語の意味だ。
そして、文の述語動詞は "could ... have been regarded" で、これは《助動詞+受動態》。「~とみなされた(みなされていた、みなされてきた)可能性がある」ということになる。
文全体は、「(過去において)ジョン・ウェアによる調査を止めたことはまた、検閲とみなされたかもしれない」と直訳される。
時間切れにて、こんなところで。なお私個人は王室ゴシップにはほとんど興味がないのだが、マーティン・バシールによるダイアナさんのこのインタビューは日本のニュース番組や「海外びっくりニュース」系のバラエティでも何度も引用されていたものを見たことは何度もある。また、バシール記者はマイケル・ジャクソンのインタビューも行っているが、それもまた問題がないとは言えないもののようだ。
さて、何がどうなることやら。
※1900字