Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

付帯状況のwith, 構造の取りづらい文, 関係代名詞(アイルランドのボーダー)

今回の実例は、アイルランドのボーダー(アイルランド共和国北アイルランドの境界)*1沿いの各地で一斉に行われた抗議行動についての報道記事より。

この抗議行動は、本来なら英国がEUから離脱することになっていた3月29日(金)の翌日、30日(土)に行われたもので、英国がno dealでの離脱(合意なき離脱)という道をとった場合にダイレクトに影響を被ることになるであろうボーダー沿いに暮らす人々によって行われた。

アイルランドは、北部6州(いわゆる「北アイルランド」)とそれ以外の26州(いわゆる「アイルランド共和国」)に分かれているが、その境界線は現状完全にオープンだ(物理的には「県境」程度と言える)。人々の生活はボーダーによって分かたれてはいない。ボーダーを挟んで通貨が変わるが、この一帯では英国のポンドもEUのユーロもどちらも流通しているという。そのようなボーダーが、英国のEU離脱で性格を変えてしまうかもしれない。そしてそれは単に「不便になる」ことを意味するだけでなく、1998年まで約30年にわたって続き、3000人以上の命を奪った北アイルランド紛争の時代への逆戻りという恐ろしい可能性をもはらんでいる。それについての詳しい説明は、このブログでやることではない(本家のブログには前に書いたエントリがあるはずだし、これからまた書くかもしれない)。

記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:アイルランドのボーダーは、日本語の報道では「国境」と表されているが、私はこれが「国と国の境界線」であるとの前提に疑問があるので、個人的な文章では「ボーダー」と表記している(仕事など、使用する用語の基準がある場合はその限りではない)。

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「言い換え」のor(日本の新元号)

今回の実例は、日本の新元号が決定・発表されたことを伝える記事から。ただしこの実例、事実誤認が入っているというか、かなり雑な記述であり、英文法の項目(今回はむしろ「語法」か)と同時にそういったところにも注目したい。

記事はこちら: 

www.bbc.com

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to不定詞の否定形(マイクロソフト社の「エイプリルフール終了のお知らせ」)

今日は4月1日で、4月1日といえば、世界的に、何が冗談・嘘で何がそうでないかを判別しなければならないスリルとサスペンスの日だが、今回の実例は、米国拠点のテクノロジー系ニュースサイト、The Vergeの記事から。

「エイプリルフール」は日本でも2000年代に普及して、ネットでは企業などの冗談が競い合うように出るようになったが(ここ数年は下火になってきたように思う)、英語圏ではもっと早くから、大手報道機関が大真面目なトーンで「冗談ニュース」を報道するということが行われてきていた。中でも名作として語り継がれているものに、「さて、スイスでは今年もスパゲッティの収穫が最盛期を迎えています」(1957年、英BBC)や、「知る人ぞ知る魅惑のリゾート・アイランド、サン・セリフ島」(1977年、英ガーディアン)などがある。(ここで「おい、あれがないぞ」と思った方は、当エントリの最後をご参照のほど。)

インターネット普及後は大手IT企業が率先して「冗談」を披露しており、Googleマップパックマンのゲームになって人々を喜ばせるなどしてきたが、毎年毎年やり続けることによる問題も生じている。

そして今年2019年、ついにIT業界大手のマイクロソフト社が、「エイプリルフール終了のお知らせ」を出した。The Vergeはその内部文書を入手し、いち早くそれを報道したメディアである。記事は下記: 

www.theverge.com

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関係代名詞の非制限用法、分詞構文(再掲)

※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。

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今日のキャプチャはサッカー選手の移籍のニュース。イングランドのプレミア・リーグの名門アーセナルに所属するアーロン・ラムジーウェールズ代表でもある)が、イタリアのセリエAユヴェントスに移籍するというニュースの一節である。

www.theguardian.com

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挿入, each, every, 《同格》のthat, 名詞節のif節, 副詞節のif節, ask ~ to do ..., 前置詞+動名詞, 時制

今回の実例は、英国発の珍ニュースから。英国(イングランド)のロンドンからドイツのデュッセルドルフに向かうブリティッシュ・エアウェイズ(BA)飛行機に乗ったはずが、着陸したのは英国内(スコットランド)のエディンバラだった、ということが起きた。

ロンドンでは、「乗っていたバスがいきなり行き先を変更する」みたいなことは日常茶飯事だが(こちらの記事には、その理由も書かれている)、飛行機が行き先を変更するというのは、何らかの異常事態に見舞われたとかハイジャックされたとかそういうことでもなければ、聞いたことがない。

実際、単なるミスで、フライトプランを間違えたことが原因だったという。普通間違えますかね、そこ……と思うのだが、起きたことは起きたことである。

というわけで、記事はこちら: 

www.bbc.com

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知覚動詞+O+現在分詞、付帯状況のwith、独立分詞構文

今回の実例は、サッカーの欧州選手権(EURO)の予選で、観客席からイングランド代表の選手たちに対する人種差別の罵詈雑言が飛ばされた件についての報道。

イングランドモンテネグロポドゴリツァを訪れて行われた試合で、その残念な事態は発生した。

記事は下記だが、私が見たときとは見出しと文面が変わってしまっている(新聞社のサイトでは、事態の進展につれて同じURLで上書き更新されることがあるので、こういうこともありうる)。私が見た時点では、見出しは "Montenegro charged over racist chanting during England game" だった。今は下記のようになっている。

www.theguardian.com

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地名の表し方、分詞の後置修飾、to不定詞の形容詞的用法、同格、one of the + 複数形、関係代名詞の非制限用法

今回の実例は、ブラジルで原子力発電所に向かうウラン燃料を積んだ車が、途中で銃撃を受けたという、ちょっとびっくりしてしまうようなニュースから。

どういうことがあったのかは、各自記事全文をご参照いただきたいが、手短に言うと、ウラン燃料を乗せた車が原発に向かうルートが、ドラッグ・ギャングが支配する地域を通るため、途中でギャングの銃撃に巻き込まれた(ドンパチやっていたギャングが、車両警備の警官の多さに慌てて、警官に向けて撃った)ということだ。運ばれているウラン自体は自然界に存在する形のままなので(未濃縮)、仮に外部に出ても危険はなかっただろうと当局は説明している。

www.bbc.com

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《同格》のthatの省略、let alone ~

今回の実例は、いわゆる「イスラム国(自称)」(以下、「イスイス団」と表記する*1)がシリア国内に有していた支配域を完全に失ったという宣言のあとに続いたニュースから。

シリア内戦は、日本語圏ではかなり雑な説明が横行しているので(その背後には政治的な意図があったりするのだが)、「イスイス団に対して戦っているのは誰か」という基本的な認識もズレてるかもしれないが、ここ数か月の報道*2に出てきていたシリア東部のバグーズ (Baghuz) の方で戦闘をおこなってきたのは、アサド政権(ロシア、イランの支援を受けている)ではなく、元々はシリアでは北東部を拠点としてきたクルド人武装勢力、Syrian Democratic Forces (SDF) である。このSDFにはアメリカの支援がある。

この点、ここで詳細な説明をしているヒマはないが、シリアについては「なんか内戦やってるよねー」程度の認識しかしていない人も、この記事が「クルド人の勢力」の発言をそのまま報じている理由について、上記のような基本的事実をざっくりと把握しておいていただければと思う。

記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:ちなみにBBCでは議論と試行錯誤の末、Islamic State groupという表記を採用している。

*2:臨月で難民キャンプに脱出し、出産したが、子供はほんの数日で死んでしまった英国人(正確には、出産前に市民権を剥奪されたので「元英国人」)10代女子の件などが、日本語でもかなり大きく報道されていた。

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分詞構文、挿入、付帯状況のwithと過去分詞

今回の実例は、ソマリアの首都モガディシュモガディシオ)で発生した、武装勢力アルシャバブ(アッシャバブ)による自爆攻撃についての報道記事から。

 

ソマリアは、アフリカ大陸の東の端でアラビア半島と向かい合う、「アフリカの角(つの)」と呼ばれる地域の中でも一番東にあり、紅海の手前のインド洋に向かってぴょこんと飛び出した部分にある国。西欧列強によるアフリカ分割の時代にイギリスとイタリアの支配下に置かれたが、1960年にいずれも独立して「ソマリア共和国」となった。その後はクーデターや隣国エチオピアとの戦争を経て1988年に内戦が勃発。1990年代には国連PKO多国籍軍が派遣されたが情勢は悪化。2000年代に混乱の中で活動を活発化させてきたのがイスラム主義の勢力、「アルシャバブ」である――というのが非常に簡略化した説明になるが、詳細は既にリンクしてあるウィキペディアなどをご参照いただきたい(日本語でもかなり詳しく書かれている)。アルシャバブアルカイダとつながりを持つ組織で、2013年9月のケニアの首都ナイロビにおけるショッピングモール襲撃、2015年4月のケニア北東部の大学襲撃、2019年1月のナイロビでの商業施設襲撃など、国境を越えてのテロ活動も活発に行っている。

 

この組織は、イスラム教の法の厳格な解釈に基づいた支配をソマリアに打ち立てようとしているのだが*1ソマリア国内では支配域を広げたり縮小させたりし、近年では大都市の拠点からは放逐されているはずなのだが、「常にそこにいる」という状態をずっと維持している。そして2019年3月23日にソマリアの首都で政府機関の建物を襲撃したというのが、今回見るニュースである。

uk.reuters.com

*1:その点は、いわゆる「イスラム国」などと同様である。

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ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れる表現: stop -ing (動名詞), 否定疑問文, 省略, 同等比較

今回の実例は、やや変則的に、ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れるときの表現を、Twitterから集めてみよう。

 

「ツッコミどころ満載のニュース」というのはこれだ。話題としてはせいぜい「スポーツ新聞の記事」で、「超能力者(自称)が念力でのBrexit阻止を宣言!」といったところか。

www.theguardian.com

 

なお、この記事、日本語圏では「高級紙ガーディアンがこんな記事を……」として広まっている側面もあるようだが、掲載はガーディアンでも記事元はPress Association (PA) という通信社である(ガーディアンの記者が書いた記事ではない)。日本でいうと、大手の新聞が共同通信時事通信の記事を掲載するのと同じ。また、ゲラーが直接この「公開書簡」を送ったのは、ジューイッシュ・テレグラフというロンドン拠点の小さなメディアである。

 

ところでこのおじさん、誰、という人も多いだろう。1970年代の世界的超能力ブームのころ、最も有名な「超能力者(自称)」がこの人、ユリ・ゲラーだった。十八番は「スプーン曲げ」で、念力で(つまり物理的な力を使わずに)金属のスプーンを曲げてみせるという芸だったが、これは本物の奇術師から見れば、「へたくそな手品に『超能力』というレッテルを貼って売り込みに成功しただけのもの」というような代物だったという。私はそういうのにほとんど興味がなかったので、名前とスプーン曲げくらいしか知らないのだが、はまる人はとことんはまっていた。(ここらへんの「超能力ブーム」が入り口となって、のちに精神世界やらオカルトやらにはまっていき、オウム真理教を含む90年代のカルトに引き寄せられていった人も少なくない。)

 

ユリ・ゲラーは現在のイスラエルという国が成立する前に英国の委任統治領だったパレスチナで生まれているが、英国に長く暮らしてきた(2015年にイスラエルに戻っているそうだが)。その家が、テリーザ・メイ首相の選挙区にあり、実際に交流もあったというつながりがあって、上記記事で伝えられているような「公開書簡」に至ったそうだ。

 

なお、彼自身は「超能力者」を自称しているが、客観的には「イリュージョニスト(奇術師)」と位置付けられていることは、上記ガーディアン掲載PA記事でも確認できる。

 

記事自体は読む価値はない。英文法の実例としては、《意思未来のwill》の用例としてわかりやすいとは思うが、その項目を見るためにこの文を読むほどの価値もない。

 

おもしろいのは、ユリ・ゲラーのこの行動に対する人々の反応のほうだから、Twitterを見てみよう。ガーディアンのアカウントでこの記事をフィードするツイートについているリプライから:

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挿入、強調(再掲)

※この記事は、2019年1月にこのブログを開設したころにまとめて投稿したいくつかの記事のひとつである。開設時の記事はほとんど閲覧されていないので、重要事項の実例として改めて見ておいていただきたく、ここにコピーして再掲しておこう。

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今回は「挿入」と「強調」の実例。高校生向けの文法の解説書や問題集では最後の方に「特別な構文」としてまとめられていることが多い。

今回の実例は、英国時間で1月9日(日本時間では10日)、英国会でのBrexit(英国のEU離脱)をめぐる審議の詳細を伝える記事の一部。内容はBrexitをめぐる審議の詳細に通じていないと取りづらいと思われるが、英文の形は、内容とは関係なく、見て取ることができるだろう。

www.theguardian.com

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パンクチュエーション(句読法)、最上級表現

今回の実例は、アイルランド外務大臣Twitterから。トピックは20日に引き続きパンクチュエーション(句読法)と、最上級表現。

 

 

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素早く読んで内容を把握する練習に好適な文(シアトル・マリナーズのステートメント)、「~の間」を表す表現、和製英語の表現の表し方

今回の実例は、イチロー選手の引退を告知するシアトル・マリナーズの広報の文章。

MLB開幕戦のオークランド・アスレチックスシアトル・マリナーズの第2戦が行われる3月21日の昼間、日本語の報道で「イチロー選手が第一線を退く意向を球団に伝えた」というニュースが流れた。英語ではそれは「第一線を退く」という遠回しな表現ではなく、ド直球で "retire" と伝えられた(NHK共同通信のような日本の報道機関でも、英語では "retire" という単語を使っていた)。 

イチロー選手は8回に交代となり、現役生活に別れを告げた。ダグアウトに戻った彼をチームの皆がハグで迎えた。

そしてマリナーズのブログに、チーム広報からのステートメント掲示された。

marinersblog.mlblogs.com

最初の方は記者会見でのご本人の発言の一部を英訳して掲載しているが、そのあとはイチロー選手がキャリアを通じて残した記録が淡々と並べられたような文面で、分量はあるが英語として難しくはないので、素早く読んで内容を把握する練習に好適である。

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形式主語、to不定詞の意味上の主語、現在完了進行形、「~を求めて」の意味のfor, what we call

今回の実例は、今年の春分の日スーパームーンが重なるという非常に珍しいめぐりあわせで、日本時間では3月21日の夕方から上る月がスーパームーンで大きく見えるということについての解説記事から。

「スーパームーン」は、ごく最近になって騒がれるようになってきたが、月と地球の距離が近いために普段より大きく見える満月のことを言う。用語としては天文学由来ではなく占星術由来だそうだし、日本の国立天文台のサイトにはあまり積極的にこの概念を広めたくなさそうな解説ページがあったりするので、「ちょっとした世間話のきっかけ」とか「夜空を見上げるきっかけ」くらいにとらえておくのがよいかもしれない。

だが、新聞にとってはよいネタにはなるわけだ。

www.theguardian.com

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条件のif節(直説法)、パンクチュエーション(句読法)の英米差

今回の実例は、2019年3月上旬にBBC Newsが出した特集記事から。トピックは中国の通信機器メーカー「ファーウェイ(華為, 英語ではHuawei)」のことで、実例として見る箇所は米国政府が同社製品の使用を禁止したことに関連する部分。

記事はこちら。ページが凝った作りになっていて(BBC Newsの特集記事はこの作りになることがほとんど)、ファーウェイ社に対する最近の「疑惑」の経緯に始まり、同社の設立の話やら中国という国家の体制やら、非常に幅広い記事だが、動きを感じながらすいすい読めるようになっている。長文だが、興味がある方はぜひ全文を。

www.bbc.co.uk

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