今回の実例は、アイルランドのボーダー(アイルランド共和国と北アイルランドの境界)*1沿いの各地で一斉に行われた抗議行動についての報道記事より。
この抗議行動は、本来なら英国がEUから離脱することになっていた3月29日(金)の翌日、30日(土)に行われたもので、英国がno dealでの離脱(合意なき離脱)という道をとった場合にダイレクトに影響を被ることになるであろうボーダー沿いに暮らす人々によって行われた。
アイルランドは、北部6州(いわゆる「北アイルランド」)とそれ以外の26州(いわゆる「アイルランド共和国」)に分かれているが、その境界線は現状完全にオープンだ(物理的には「県境」程度と言える)。人々の生活はボーダーによって分かたれてはいない。ボーダーを挟んで通貨が変わるが、この一帯では英国のポンドもEUのユーロもどちらも流通しているという。そのようなボーダーが、英国のEU離脱で性格を変えてしまうかもしれない。そしてそれは単に「不便になる」ことを意味するだけでなく、1998年まで約30年にわたって続き、3000人以上の命を奪った北アイルランド紛争の時代への逆戻りという恐ろしい可能性をもはらんでいる。それについての詳しい説明は、このブログでやることではない(本家のブログには前に書いたエントリがあるはずだし、これからまた書くかもしれない)。
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*1:アイルランドのボーダーは、日本語の報道では「国境」と表されているが、私はこれが「国と国の境界線」であるとの前提に疑問があるので、個人的な文章では「ボーダー」と表記している(仕事など、使用する用語の基準がある場合はその限りではない)。