Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

長い文の構造を正確に取って読む, despite ~, so that ~, 肯定文のany, など(全豪オープン、ジョコヴィッチのヴィザ騒動)

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今回の実例は、前回のと同じ記事から。つまりジョコヴィッチの件。

入国許可(ヴィザ)取り消し→異議申し立て→取り消しは無効との裁判所の判断、という経緯をたどっている本件、オーストラリアの制度では、出入国管理(イミグレーション)大臣が最終的な判断で裁判所の判断を覆すこともあるとのことで、昨日(12日)までの報道では、今日(13日)その大臣の最終的判断が出ると言われていたと思うのだが、夜になってオーストラリアで日付が変わるころになっても報道が来ない。大臣の判断が出たら、それを使ってブログを書こうと思っていたのだが、それができないので、古い情報の記事を使う。

前回も述べたように、今回見る記事はもうとっくに情報が古くなっている。つまり、この記事が出てからまたあれこれと疑惑が出てきて、ジョコヴィッチの嘘・虚偽がばれ、本人の弁明(政治家がよく言う「秘書が勝手にやった」みたいなものだが)が出ているなどしている。だから、この記事はいまや情報を得るためでなく、純粋に、英語の例として参照するために読むべきものになっている。その点、ご留意いただきたい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

前回は記事の書き出し部分を見たが、今回はその次のあたりから。

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https://www.theguardian.com/sport/2022/jan/11/australian-border-force-investigating-whether-novak-djokovic-made-false-travel-claim

キャプチャ画像内の最初のパラグラフ: 

Despite a win in court restoring his visa on Monday, Djokovic’s fate will now be determined by Australia’s immigration minister, Alex Hawke, due to his personal power to again cancel the visa and deport the world’s No 1 male tennis player.  

やや分量があるが、これで1文だ。構造を取るために、スラッシュなどを入れてみよう。

Despite a win in court restoring his visa on Monday, / Djokovic’s fate will now be determined by Australia’s immigration minister (, Alex Hawke,) due to his personal power to again cancel the visa / and deport the world’s No 1 male tennis player.  

この説明でわかっただろうか。

最初の "Despite a win in court restoring his visa on Monday," は《副詞句》で、文の構造からはちょっと外しちゃっていいけど、意味は踏まえて読まないとならない。この "Despite" は前置詞で、「~にもかかわらず」の意味。私はこれは高校のときに、 "Despite his wealth, he is not happy." みたいな例文で覚えたが、報道記事では頻出である。"restoring" は現在分詞で後置修飾。「月曜日の、法廷での、彼のヴィザを回復する勝利にもかかわらず」と直訳される(もちろん、翻訳するときはこんなカチカチの文にはしない)。

その次の太字で示したセクションがこの文の中心というか、SVがあるところで、Sは "Djokovic's fate", Vは "will be determined" だ。ここは文法的には《受動態の未来形》があることに注意をするだけで、あとは何も問題はないだろう。

報道記事において、受動態は、よく、行為主を明らかにしないで物を書くときに用いられるが(It is believed that he was in Spain before flying to Australia. みたいな感じで)、ここでは《by ~》によって行為主が明示されている。determineするのは "Australia’s immigration minister, Alex Hawke" である。

この部分は、"Alex Hawke" がコンマで挟まれていて、文の中では《挿入》されている形になるが、"Australia’s immigration minister" と "Alex Hawke" は《同格》である。「オーストラリアの出入国管理大臣であるアレックス・ホーク」。

そのあと、"due to his personal power ..." の部分は、大臣が決定することになる、ということについての説明で、"his" は "Australia’s immigration minister, Alex Hawke" を受けている。「大臣の個人的な権限により」という意味。

それに続く "to again cancel the visa and deport the world’s No 1 male tennis player" は、文法的にいえば、《to不定詞の形容詞用法》で、"his personal power" を修飾(説明)している。この不定詞句には2つ、特筆しておくとよさそうなポイントがある。

まずは最初の "to again cancel" のところの《分割不定詞》。toと動詞の原形の間に副詞が入る形で、意味は「再度キャンセルする」となる。

それから、《等位接続詞》のandによる構造。

to again cancel the visa and deport the world’s No 1 male tennis player

等位接続詞は等しいもの同士をつなぐ。だから、接続詞の直後にあるのが何かを見定めて、その前にある、それと等しいもの(同じ品詞で、同じ時制だったり同じ格だったりするもの)を見つけることで構造を把握する。ここでは、andの直後が "deport" という動詞の原形なので、その前にある動詞の原形を探すと: 

to again cancel the visa and deport the world’s No 1 male tennis player

……と、このような構造が見えるはずだ。つまり「再度ヴィザをキャンセルし、世界ナンバーワンの男子テニスプレイヤーを国外退去とする」。

これをまとめると、「再度ヴィザをキャンセルし、世界ナンバーワンの男子テニスプレイヤーを国外退去とするという大臣の個人的な権限により」みたいな感じで直訳できる(しつこいようだが、翻訳するときはこんな文体にはしない。少なくとも私は)。

あと、ここで注目しておくとよさそうなのが: 

 the world’s No 1 male tennis player

この《定冠詞》。「世界ナンバーワンのプレイヤー」は1人しかいないのだからtheで限定されるわけだが、ここではNovak Djokovicという名前を繰り返さないための言い換えでもあり(このエントリで見た、Manchester United= Ralf Rangnick’s squadのような言い換え)、仮に彼が世界ナンバーワンでなかったら、ここは "the male tennis player" となっていただろう。その場合でも定冠詞はつける必要がある。

そろそろ字数が既定の4000字に達するのもあと少しというくらいになっているが、次のパラグラフも少しだけ見ておこう。

Any decision to recancel the visa would likely be met by a fresh legal challenge from Djokovic, and a request for an injunction to stay out of immigration detention so that he could play in the Australian Open, where he is chasing a male record 21st grand slam singles title.

これも長いがこれで1文だ。andによる接続で長くなっているのと、《so that S can do ~》があるためで、これもスラッシュ等を入れておくと: 

Any decision to recancel the visa / would likely be met by a fresh legal challenge from Djokovic, / and a request for an injunction to stay out of immigration detention / so that he could play in the Australian Open ( , where he is chasing a male record 21st grand slam singles title.) 

文の主語は "Any decision to recancel the visa" で、動詞は "would likely be met"。《so that S can do ~》による接続のほか、最後の部分に《関係副詞の非制限用法》もある。

この文は肯定文で、肯定文で用いられる《any》は「どのようなものでも」「どんなものであれ」の意味合いで、ここでは「ヴィザを取り消すという結論が出ればそれがどのようなものであれ」。日本語にするとくどいから、anyは目に見える形で訳出しなくてもいいかもしれない。ただ、試験などで「肯定文のanyを私は理解していますよ」とアピールしまくりたいときは、くどい文面になっても訳出したほうがいいだろう。

もう4000字を超えてしまったので、あとは意味だけさくっと書くと、「どのような形であれヴィザ取り消しという決定がくだされれば、ジョコヴィッチ側からまた新たに法的な訴えが起こされ、全豪オープンでプレイできるよう、入国管理当局の施設に入れられないようにしてほしいという要望も出されるものと思われる。全豪オープンでは、彼は男子シングルスのタイトル記録となる21度目のグランドスラムに挑むことになっている」という感じ。

というわけで、最終的な結論は明日だろうか。

※4400字

 

 

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