Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

no longer, 分詞構文, 関係代名詞の制限用法が非制限用法的な意味で用いられている例(Twitterが新型コロナウイルスに関する誤情報の投稿制限を撤廃)

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今回の実例は、報道記事から。

日本語でも広く報じられていると思うが、Twitter新型コロナウイルスやそれが引き起こす感染症COVID-19についての誤情報 (misinfo, misinformation) に対してかけていた投稿制限を、撤廃する。というわけで明日からはTwitter(の英語圏)に、新型コロナウイルスやワクチンに関する誤情報や怪しげな情報が堂々と戻ってくることになるのだろう。どぶさらいをしたどぶに、さらった汚泥を流し込むようなことをオーナーがするわけだ。

これについて、イーロン・マスク買収後にTwitterに見切りをつけてMastodonに軸足を移したり、完全にMastodonに乗り換えたりした人々の間でよく読まれている様子なのが、ワシントン・ポストの下記記事である。

www.washingtonpost.com

よく読まれているだけあって、内容も充実した読みやすい記事である。今回はこの記事を読んでみよう。

書き出しの部分: 

https://www.washingtonpost.com/technology/2022/11/29/twitter-covid-misinformation-policy/

書き出しのパラグラフだけでも2000字くらい書けそうだ。シンプルだが味わい深い文である。ポイントは少なくとも3つある。

Twitter will no longer enforce its policy against coronavirus misinformation, worrying experts who say the move could have serious consequences in the midst of a still-deadly pandemic.

太字にした "no longer" は完全に否定する表現で「もはや~ない」「もう~ない」という意味。notのものすごく強い表現と考えてよい。直前にある助動詞の "will" と一緒になって、《未来》における確定事項を伝える表現だ。

  The tickets will no longer be available after 15th December. 

  (チケットは12月15日以降はお求めになれません)

"enforce" は他動詞で「~を課す」というような意味。

というわけで、コンマまでの意味は「Twitterは、新型コロナウイルスに関する誤情報に対する同社の方針を課することはもうしなくなる」と直訳される。要は「新型コロナウイルスに関する誤情報を規制するという方針を撤廃する」という内容だ。

英語力をつけたい人にとっては、「~を撤廃する」の対訳として will not enforce ~ という形を覚えておくと、あとあと役立つだろう。自分なりの例文を作るなどしてノートンに書き留めておくとよい。もちろん、この文を素材として復文の練習をしてもよい。

その次の部分: 

..., worrying experts who say the move could have serious consequences in the midst of a still-deadly pandemic.

下線で表した "worrying" 以下は《分詞構文》で、これは「主節を受けてその結果~となる」というような意味を表している。接続詞を使って表すとしたら、", and (so) it worries ..." といった形になるだろう(この複文はいかにも不格好だが――だから分詞構文が使われているんだけど)。

このworryは他動詞で「~を心配させる」の意味。日本語の「心配する」と「~を心配させる」の区別がついていない高校生は、受験勉強に本格的に取り組む前にしっかり押さえておきたいポイントだ。といっても両者の区別がついていないということは、誰かの指導を受けて初めて気づくものだが……個別指導の塾など、マンツーマンで英語を教わっている人は、一度この点について詳しく見てもらうことをお勧めする。なるべく早いうちがいい。

そして青字で示した《関係代名詞》の "who"。これ、ここでは直前にコンマもないから、定石どおりに先行詞を限定する句としてかっちり解釈したくなるところだが、そうしてみるとやや違和感を覚えることになる。

その違和感、何が原因だろうと文面をじっと見てみると、「限定」されているはずの先行詞が無冠詞の複数形だからかもしれないと思った。これが、定冠詞付きだったり、あるいは定冠詞でなくてもsome expertsとかmany expertsといった形だったとしたら、このような違和感はなかったに違いない。

しかし実際には、ここでは無冠詞の複数形に関係代名詞のwhoの節がついている。「関係代名詞の節は何かを "制限" する("限定" する)ものだから、先行詞になる名詞には定冠詞がつくものだ」という教え方をする人もいるようだが、それはあまりに単純で乱暴な見方であるにせよ(実際には不定冠詞のついた先行詞の例も日常的に見る)、ここにあるような無冠詞の複数形といういかにも不確かなものに関係代名詞がついているのは、ちょっと引っ掛かりをおぼえる。

引っ掛かりをおぼえつつ先に行く。

その関係代名詞whoの節の中には、 "the move could have serious consequences in the midst of a still-deadly pandemic" と、まだ起きていないけれどどうやらそういうことが起こりそうだということを述べるときに用いられるcouldが入っている。つまり、未来のことの懸念が書かれている。

確定していない先行詞に、まだ起きていなくて確定しきっていないときの表現を含む関係詞節。

これは、先行詞を "限定" する関係代名詞というより、"補足" と考えた方が意味が通りやすいのではないか。

つまり「~と言う専門家たちを心配させている」ではなく、「専門家たちを心配させており、その専門家たちは~と言っている」ということではないかと。

このように、"補足" のために用いられる関係代名詞は《非制限用法(継続用法)》と呼ばれ、本来はコンマを伴う。

  I'm going to buy a waterproof jacket, which is a bit expensive. 

  (防水仕様のジャケットを買うつもりだけど、ちょっと値段が張るんだよね)

この「非制限用法でのコンマ」、もちろん大原則としては常にペアなのだが、英語圏を少し掘ってみると、「コンマがあれば非制限用法」とは言えても、実は「非制限用法は必ずコンマを伴う」というわけでもないような感じだ。例えばこのオンライン大学のライティング指南のページでも「非制限用法では情報を補足していることを示すためにコンマを用いる」と書いてはあるが「コンマを使わなければならない」とは書いていない。というか、非制限用法の関係詞節は挿入節として文中に挿入することが多い、ということが重点的に説明されている。

確かに挿入節なら前後にコンマを置くことは必須だが(というか、そういう文は、書いていれば自然とコンマを書くことになる)、今回見ている文では、関係詞節は挿入節ではない。そして、文法や表記の規則とは別に、実際の文章にはリズムや流れのようなものがあり、また書き手や校正者のクセのようなものもあって、コンマは多すぎると感じられるような場合は削られてしまう。

この文の場合、当該箇所で関係代名詞の前にコンマを置くと: 

Twitter will no longer enforce its policy against coronavirus misinformation, worrying experts, who say ...

と、コンマが連続してしまって、ブツ切れに見えてしまい、実のところ、かなり読みづらい。

このように可読性が下がるよりは、コンマなしで読みやすくした方が良い、という判断だったのかもしれない。

だから、本エントリの表題では「関係代名詞の制限用法が非制限用法的な意味で用いられている例」と書いたが、実際には「関係代名詞の非制限用法のコンマが省略されている例」なのかもしれない。

というわけで文意。「Twitterが、新型コロナウイルスに関する誤情報に対する同社の方針を撤廃することになり、専門家たちが懸念を抱いて、この動きによりまだ死者が出続けているパンデミックのさなかに重大な結果を引き起こす可能性が高いと述べている」というのがほぼ直訳になる。

これでは日本語として意味がわかりづらいから調整すると、「新型コロナウイルスに関する誤情報に対抗するための方針をTwitter社が撤廃することになり、専門家の間に懸念が広がっている。今回の方針転換は、まだ死者が出続けているパンデミックのさなかのことで、重大な結果を引き起こす可能性が高いとの指摘も出ている」というような感じになるだろう。

 

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