Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

Twitterの「コミュニティノート」はイーロン・マスクが始めたのではない、ということについて、英語で確認する手順

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既存のツイートに、ツイート筆者とは別のTwitterユーザーが、後から補足メモをつけることができるというTwitterの「コミュニティノート」という機能は、日本語圏では、今月(2023年7月)になってようやく広く使われだしたため*1、「イーロン・マスクでも、Twitterユーザーに役立つことをするんだな」的な感慨をもって受け止められ、マスクについての好印象材料になってすらいるようだ。

だが、「コミュニティノート」は、実はマスクとはほぼ関係ない。マスクの買収話が出るずーっと前から、英語圏では運用されてきた機能である。マスクと関係があるとすれば、それは(例えば「サークル」などとは違って)マスクが提供打ち切りの判断をしなかったということである。

では、この機能、いつからどういうふうに始まっていたのか。

この点、どうやって調べることができるか、簡単にメモしておこう。こういうのは、うちらが仕事のときにルーティン的にこなす調べもののひとつで、ルーティンだから別に目新しいことはないかもしれない。

◆目次◆

1. 機能名の英語表記を調べる

まず、この機能についての英語表記を確認する。Twitterの「ヘルプ」のサイト内で、「コミュニティノート」についての日本語での説明のページを参照するのが手っ取り早い。

help.twitter.com

URLの https://help.twitter.com/ja/using-twitter/community-notes より、この機能の英語表記が "Community Notes" であることがわかる("Note" ではなく、 "Notes" と複数形である。英語名詞単複沼にようこそ)。

あるいは、下図にあるように、ページ右下にある「日本語」のところをクリックして、英語版に切り替えて確認してみてもよい。

英語版に切り替えると、ページタイトルが "About Community Notes on Twitter" であることが確認できる。

2. 英語表記でウェブ検索する

把握できた機能名の英語表記、 "Community Notes" でウェブ検索する。なんだか一般名詞っぽいので、引用符でくくって、引用符の外にTwitterと書いておくなどすると、効率よく探し物が探せるだろう。

ここでは検索エンジンDuckDuckGoを使う。DuckDuckGoGoogleなどと違って、検索を利用するユーザーをトラッキングせず、したがってアルゴリズムに基づいてユーザーごとにカスタマイズした結果を表示しないので、自分のフィルターバブルの外に出て調べ物をしたいときに便利だ。検索対象とする地域も細かく(狭く)設定できる。

今回は「アメリカ合衆国」だけを対象とするよう設定し、検索窓に検索ワードを打ち込んでEnterキーを押すと、次のような結果が得られる(フォントが汚いのは私の環境のせい)。たぶん、誰が検索しても同じ結果になっていると思う。

https://duckduckgo.com/?q=twitter+%22community+notes%22&t=h_&ia=web

これらの検索結果の中で、「Community Notesがいつ、どういうふうに始まったのか」ということに触れていそうなものを探す。ここはある程度経験がものを言うというか、「このサイトの記事ならそういうことが書いてあるだろう」的な勘が働くかどうかで効率よく調べられるかどうかが決まってくる。

ここでは、2022年12月13日付のTechCrunchの記事を見てみる。TechCrunch (TC) は、IT系スタートアップ企業やウェブサービスなどについてのニュースやゴシップをブログ形式で素早く紹介しているニュースサイトである*2。2022年までは日本版のサイトがあって、英語の記事を日本語訳したり、日本のITスタートアップのニュースを掲載したりしていたが、現在は閉鎖されている

閑話休題。記事はこちら。

techcrunch.com

最初のパラグラフより: 

Twitter announced over the weekend that Community Notes are now visible around the world. Community Notes, which was previously known as Birdwatch, is the social media giant’s crowdsourced fact-checking system.

今調べたいのは「Community Notesがいつ、どういうふうに始まったのか」である。で、調べものに慣れている人なら、必ずここに注目するだろうという文字列がこの中にある。おわかりになっただろうか。

そう。次の箇所である。(薄いグレーにしたところは読み飛ばす。)

Twitter announced over the weekend that Community Notes are now visible around the world. Community Notes, which was previously known as Birdwatch, is the social media giant’s crowdsourced fact-checking system.

検索エンジンに検索ワードを打ち込んでから、ここまで、実際の作業では30秒もかからないだろう。というか30秒くらいしかかけないと思う。

3. 新たな検索ワードを加えて、再度、ウェブ検索する

ここで得られた新たな検索ワードを検索窓に加えて、またEnterキーを押す。すると……

https://duckduckgo.com/?q=twitter+%22community+notes%22+birdwatch&t=h_&ia=web

一番上にあるTwitterのblogの記事 (投稿日時は25 January 2021) を見ると、BirdwatchがCommunity Notesという名称になったのが2022年11月で、Birdwatchがスタートしたのは2021年1月だ。

blog.twitter.com

このブログ記事のページの右肩にある言語切り替えのボタンから「日本語」を選択してみるが、この記事の日本語版には飛ばず、代わりに日本語版ブログのトップに飛ばされる。しかたがないので根気よく、「その他を見る」という珍妙な日本語*3を繰り返し繰り返しクリックすることに削られながら、当該の2021年1月までさかのぼってみるが、この記事は日本語化はされていない。

https://blog.twitter.com/ja_jp

つまり、Birdwatch(現在のCommunity Notes)が英語圏で導入された2021年1月の時点では、日本語圏には「Twitterではそういう機能が実装されつつあるよ」ということすら知らされていなかったということになる。

ともあれ、Birdwatchがどういうことを目的として設けられ、どういうふうに動いているのかといったことは、ブログの説明を読めばわかる。

調べ物はこれで終了

というわけで、「日本では2023年7月にお目見えした『コミュニティノート』の機能は、いつからどういうふうに始まっていたのか」ということに関する調べものは、これにて終了。この機能が始まったのは2021年1月で、2022年10月末のイーロン・マスクによるTwitter買収より1年9か月前である。マスクによる買収提案でさえも2022年4月のことだったから、この機能とマスクは(つぶすという判断をしなかったことを除いては)無関係と言ってよいだろう。

今回は「日本語訳があるかどうか」みたいなことも確認しているからかなり時間がかかっているが、普段の作業なら、検索窓に「twitter "community notes"」と打ち込んでから、こうして調べものを終えるまで、所要時間は最大で5分程度だろうか。

一方で、こうやって調べ物で見つけた文章を翻訳するとなると、「自分が読んで自分が理解できればいい」というレベルよりぐっと緻密な読みが必要になり、先日述べたような「訳語探し」のプロセスが必須になる*4、何だかんだ1時間単位で時間を要することになる。

なお、上掲のBirdwatchについてのブログを書いているKeith Coleman氏は、現在もTwitterでVP Productとして仕事を続けていて、コミュニティノートが日本にも導入されたときには次のようにツイートしている。(日本語とスペイン語が同時に本格運用開始になってたんですね。)

補足: 

正確にいつから、ということは全然記憶にないのだが、私が見に行く範囲の英語圏で、この「補足メモ」がついたツイートを見かけるようになったのは、ずいぶん前のこと、たぶん2022年のことである。おそらく新型コロナウイルス対策の何かの文脈だったと思う(マスクか、ワクチン接種か、あるいは病院のこと)。

日本語圏に導入された日にも、英語圏でよい例を見た。ちょうど同じタイミングで、イスラエルの違法入植者や軍人が、ヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人の暮らすコミュニティに対して、めちゃくちゃな暴力を行使していた。コミュニティノートがつけられたツイートは、そういうときにイスラエル側が流した加工写真で、「ユダヤ教徒イスラム教徒がともにイスラエル軍の制服を着ていて、ユダヤ教徒が礼拝中のイスラム教徒を警護している」という光景に見えるものだ。ノートで指摘されているのは、実際には「イスラム教徒」は礼拝で膝をついて合掌することはないし、写真の中の礼拝用のマットはあとから加工で付け加えられたようだ(その証拠に、膝が宙に浮いているように見える)、ということである。

補足2: 

コミュニティノートのついたツイートは、こちらで一覧できるようになっている。

https://twitter.com/i/communitynotes/new

例えばジョー・バイデン大統領の下記のツイートには、何人かが「ノート」を付け加えているようだが、「役に立つ」という評価が少ないため、ツイート個別のURLでは「ノート」は表示されていない。

https://twitter.com/i/birdwatch/t/1680623334256439296

こんなの、時間が無限に吸い取られてしまう。

Twitterではファクトチェックはせず、代わりに「背景情報を書き添える」ためのコミュニティノートという機能を設けるが、そのノートの加筆は一般ユーザーに丸投げ、っていったって、一般ユーザーの時間は限られている。逆に言えば、加筆するようなユーザーは限られたユーザーである。ここに、「Twitterのコミュニティノートをいくらでも書いていられる立場の人」が現れたら、この情報空間はどうなるか。

上で見た、パレスチナ人による反ハスバラのような、これまでの(英語圏での)蓄積があって、Twitter上の情報コミュニティもしっかりしているようなトピックではうまく機能するだろうと思うが、そうでなければますますカオティックになるのではないかと心配している。

 

 

 

※以下、実験的に「有料部分」を設けてみます。内容は、ここまで扱った英語素材の英文法・語法的な説明やちょっとしたメモです。「あなたの代わりに辞書引いておきますね」的な位置づけです。ここまでの内容を気に入っていただけた場合など、投げ銭的にご利用いただければと思います。分量は3000字くらい(英文の引用込み)です。

*1:試験運用はすでに今年3月に始まっていたそうだ。

*2:余談だが、日本だとなぜか「ITニュース」の枠に「ネットで話題」の話も混在していることが少なくなくて、かわいい動物の話題や、いわゆる「バイトテロ」の話題なども「IT」枠に入り混じってくるが、英語圏ではそういうことはまずないから、気が散る心配がなくてよい。

*3:この珍妙な日本語は、「これより前の記事を見る」ということを言っている。

*4:これは、機械化が非常に難しいプロセスで、「動物園で生まれた動物の赤ちゃんを展示スペースにreleaseする」という場合のreleaseを日本語でどう表すことになっているのかは、元の用例自体がさほど多くはないからいくらreleaseの対訳語のデータがあっても人間が意図している/求めているような出力結果にはならないだろう。機械がこういうのをやってくれるようになったらとても楽になるのだが。

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