Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

《結果》を表すto不定詞、to不定詞の否定、報道記事の見出し(DRCからの子供の連れ去り)

今回の実例はBBC記事の見出しから。

《to + 動詞の原形》のto不定詞は中学校で習うが、「なんとか用法」という用語も含め、なんかいろいろと情報量が多いので、消化しきれず何となく苦手という意識を持ってしまう人が少なくない。

特に消化しきれなくなるのが《to不定詞の副詞的用法》で、やたらと表すものが多い(意味が多い)。英語について、英文とその意味から入るのではなく、英文法用語から入ってしまうことが習慣化されている人の場合は、よけいに負担感は大きくなるが*1、具体的な文例を見て、ひとつひとつ納得しながら把握してしまうことが重要である。

 

《to不定詞の副詞的用法》で最もよく用いられる(ありふれている)のが、《目的》を表す用法だ。「~するために」という意味になる。

  I woke up at four to catch the first train. 

  (始発電車に乗るために、4時に起きた)

これは文意をはっきりさせるために、in order to do ~やso as to do ~という形になることも多い。見た目は長くなるが、文意は変わらない。

  I woke up at four in order to catch the first train. 

 

次によく遭遇するのが、《感情の原因》を表す用法だ。happyやsadなど《感情》を表す形容詞とともに用いて「~して…だ」という意味になる。

  I was happy to see my childhood friends. 

  (子供時代の友人たちに会って、私はうれしかった)

 

似たようなものに《判断の根拠・理由》を表す用法がある。日本語にすれば《感情の原因》とよく似ていて「~して…だ」となるが、一緒に使う形容詞がlucky, crazyなど、話し手が何かについて「…だ」と判断しているときに用いる。また、形容詞だけでなく、a foolなど名詞が来ることもある。

  I was lucky to get to know the famous writer. 

  (その著名な作家と知り合いになれて、私は幸運だった)

  I was a fool to believe him. 

  (あんな男のことを信じるなんて、私は愚か者だった)

 

そして4番目の用法として重要なのが、今回実例として見る《結果》を表す用法である。「…して、その結果(そして)~する」という意味を表す。この用法は決まりきった例文でしか説明されないことが多いが、実際、英語の文章に出てくるときもだいたい決まりきった形で出てくる。

  I woke up to find it was raining. 

  (目が覚めて、(その結果)雨が降っているのがわかった

  My grandfather lived to be ninety years old. 

  (私の祖父は生きて、その結果、90歳になった=祖父は90歳まで生きた)

 

《to不定詞の副詞的用法》には、これらの4つの用法のほかにも、特定の形容詞とペアになった形(be ready to do ~など)や、《条件》を表す用法などもあるが、長文読解などで特に重要な基礎力となるのはこれらの4つの方法である。まずはこれらを押さえてしまおう。特に今度の冬に受験を控えている人でここがあやふやな人は、夏休みが終わる前にここをしっかり押さえてしまうこと。

 

……と、最初に文法解説をしてしまったが、今回実例として見る記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:参考書などで文法用語が目次の項目になっているときに、目次の項目を最初に理解しようとする人がいるが、それは失敗の元。目次の項目は「レッテル」と考え、重要な中身を先に見るようにしよう。調味料のビンに貼ってあるレッテルを見てもどんな味だかわからないときに、ちょっとなめてみるだろう。そういう感覚で、レッテル(項目)はまずぱっと見るだけ見て、深く追求せず、中身(解説されている英文)をちゃんと見るとよい。

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劣勢比較(劣等比較)、報道記事の見出しのルール(ハード・ブレグジットという難題)

今回の実例は、Brexitに関する政府の文書のリーク報道から。

「リーク報道」は、"leaked document" などリークであることを明示した文言が入っている場合もあるが、そうでないこともある。今回の記事は後者で、リード文(見出しの下、記事本文の前にある、記事概要を示した短い文)で "Exclusive" (「独占」)とあり、記事本文で "papers seen by the Guardian" という表現が出てくることから「リーク」と判断される。

記事はこちら。

www.theguardian.com

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年齢の表現、分詞構文、等位接続詞、to不定詞の形容詞的用法、前置詞+動名詞、付加疑問文 【再掲】

このエントリは、3月はじめにアップしたものの再掲である。短い文の中にたくさんの表現のポイントと文法項目が入っているので、分析するつもりで丁寧に読んでみると、いろいろ学べることが多いだろう。

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今回の実例はTwitterから。ツイート主は米ブルッキングス研究所のシニアフェローで、国家安全保障(つまり軍事)を専門とする Benjamin Wittesさん

ツイート1つ分の短い文だが、文法項目がてんこ盛りになっている。内容もおもしろい。いわゆる「アメリカン・ジョーク」の印象を受ける人も多いだろうが、「ジョーク」ではなく実話だそうだ。

 

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「~パーセントを占める」の表し方 【再掲】

このエントリは、2月にアップしたものの再掲である。大学受験生はそろそろ受験勉強の最終仕上げに入るころだが、国公立の二次試験や私立で英作文が課される場合は、ここで取り上げたような定型表現を頭に入れて、自分で使いたいときに使えるようにしておくのが、よい受験準備になる。もちろん、受験が終わったあともそれは使える知識として頭に残るはずだ。

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今回の実例は、文法というより表現の分野から。

 

「与えられたグラフや表が示していることを、英語で説明しなさい」という自由英作文問題は、国公立二次、私立ともに大学入試でも頻出だが、このとき、頭に浮かんだ日本語の表現をそのまま直訳してもうまく行かないことが多い。

 

「…は、全体の~パーセントを占める」の表現はそのひとつで、"... occupies ~ percent of all" など、ぎこちなくて意味が通っていない直訳の解答がありがちだ*1

 

今日参照する記事は、英国の大学に籍を置く研究者の中で、黒人で女性であるという二重のマイノリティの立場にある人々に聞き取り調査をした結果をまとめた報告書に関する報道記事である。

 

www.theguardian.com

*1:occupyは物理的に「空間を占領する」という意味。

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too ~ to do ... 構文, 「非常に」の意味のmuch (much too ~), 副詞のeven 【再掲】

このエントリは、2月にアップしたものの再掲である。この実例からは、日本の学校で習う英語がいかに重要な基礎知識を構成しているかがよくわかるのではないかと思う。基礎なので、基本的にそのままで使うのではなく、実際の場面では自分で必要に応じて応用(アレンジ)して使うわけだが。

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今回の実例は、2019年2月上旬、米BuzzFeedやVICEなど複数のオンライン・メディアで大掛かりなリストラが実行され(BuzzFeedではニューヨークにある報道部門がまるごと閉鎖され、優秀なジャーナリストたちが大勢失職した)、ここ数年ネットでのしてきていた「利益追求型の報道」というビジネスモデルについて疑問が呈されたときの記事のひとつ。

正直、日本は最初から蚊帳の外という感じなのだが、このトピックに興味がある人は、全文を読んでみるとよいだろう。

www.theguardian.com

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【ボキャビル】myth, 仮定法過去完了, 形式主語itの構文(広島・長崎への原爆投下をめぐって米国で信じられている俗説とCIA)

今回の実例は、嘘を嘘と指摘する歴史家のTwitterの連投から。

アレックス・ウェラーステインさん (Alex Wellerstein) は、ニュージャージー州ホーボーケンにあるthe Stevens Institute of Technologyという研究機関に即ずる科学史の研究者で、専門は核兵器の歴史である。

ウェラーステインさんは日本時間で8月9日の早朝、原爆に関して米国で言われている不正確な情報について、下記のツイートから始まるかなりの分量の連続投稿を行った。

mythというのは、そのままの意味では「神話」で、日本語でも「神話」と訳されることが多いが、このままだと正確には伝わらないことが多い(この用法での「神話」という言葉は、学問的なバックグラウンドがなければ接することがないし自分でも使わない)。この場合のmythは「事実ではないこと」で、日本語で表すには、おそらく「デマ」という俗語を当てるのが最もしっくりくるだろう。それでは強すぎるようなら「事実無根の俗説」といったところか。

ちなみに英英辞典での定義は下記のようになっている。

a commonly believed but false idea

https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/myth

an unfounded or false notion

https://www.merriam-webster.com/dictionary/myth 

というわけで、ウェラーステインさんの上記ツイートの "The #1 outright myth ... regarding the bombings of Hiroshima and Nagasaki is that the cities were warned about the impending attack." は、「広島と長崎の(原子)爆弾攻撃に関する完全にでたらめな俗説のナンバーワンは、これらの都市(広島と長崎)がすぐに攻撃があると警告されていたというものだ」というように直訳される(直訳はやりづらいけど、直訳じゃないと英語学習の役には立たないからね……「こなれた訳」は各自自分で考えてください)。

 

ウェラーステインさんはこのデタラメ話がどうしてデタラメであるのかについて、連ツイの形で、かなり詳しく述べている。今回実例として見る(もののメイン)は、そのひとつ。

ウェラーステインさんがこの「広島・長崎の原爆投下では事前警告があった」という説(事実無根)のソースとなったと考えているのは、実際に米軍が日本の都市上空から散布した下記のビラだ。

www.library.pref.nara.jp

ビラでは水戸、八王子、郡山、前橋、長野、高岡など12の都市が爆撃(空襲)対象として特定されており、 裏面には「これらの都市以外も爆撃対象にするかもしれない」と書かれてはいるが、確かに、広島と長崎はここには挙げられていない。それが事実である。

そのことについて、ウェラーステインさんは「原爆投下は完全に極秘で、原爆搭載機は重量を軽くするために武器も備えていなかった」と指摘した上で、次のツイートを続けている。

 

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even if ~, 未来完了【再掲】

このエントリは、2月にアップしたものの再掲である。英語があまり得意でない高校生にありがちなのだが、evenは単語帳で「~さえ」という語義を覚えても実際に英文の中に出てくるとどう解釈していいかわからないので、覚えても結局使い物にならないということが多い。単語帳の語義だけでなく、例文・実例を見て意味を把握し、自分で使えるようにしておく必要がある単語だ。

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今日も昨日と同じ記事から、「意味が取りづらい」「訳しづらい」というイメージを抱いている人もいるeven if ~が用いられた文の例。この例を見れば、even if ~がどのような場合に用いられるか、一発でよくわかるのではないかと思う。

www.theguardian.com

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分数の表し方、due to ~, according to ~【再掲】

このエントリは、2月にアップしたものの再掲である。数値表現は、英文を読めばわかるのでついついそこで終わりにしてしまいがちだが、実用英語では自分で書けるようにしておく必要がある。書けるかどうか自信がない場合は特に、これらの表現が自分で使えるようにしっかり頭にいれてしまっておきたい。

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今回の実例は、環境問題(地球温暖化)についての2月4日付ガーディアンの記事から。この記事は、温暖化で地表の氷が融けることについて、それが山岳地帯での水不足を引き起こすという、新たな問題点を指摘する記事である。英文としては、環境問題を報じる記事で頻出の語彙や表現がたっぷり入っているので、全文を見てみると役立つだろう。

www.theguardian.com

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関係副詞when, leave + O + C (英・核廃絶キャンペーンの呼びかけ)

今回の実例は、CND (Campaign for Nuclear Disarmament) のツイートから。

CNDは、冷戦で東西両陣営がじゃんじゃん核実験しながらどんどん核武装していた時代、1957年に英国で設立されて以来、今日に至るまで常に英国の反核運動の先頭に立ってきた組織である。設立時のメンバーにはJ. B. プリーストリーやバートランド・ラッセル、マイケル・フットなど各界の著名人が多くいた。マンハッタン計画に参加していたが、ナチスドイツに核兵器を作る能力がないとわかったことで計画を離脱したポーランド出身の物理学者、ジョーゼフ・ロートブラットも参加していた。

が、何といっても現代の私たちにわかりやすいのは、あのピース・シンボルだろう。Nuclear DisarmamentのNとDを表す手旗信号をモチーフにしたCNDのマークは、著作権を主張しなかったため、全世界で広く「平和」を表すシンボルとして親しまれるようになった。 

Embed from Getty Images

 

CNDは現在も核軍縮核廃絶を訴えてデモを行うなどの活動を活発に続けている。もちろん毎年8月には世界で初めての核兵器の使用とそれが人間に何をもたらすかを思い起こし、3度目の投下を起こさないようにしようと訴えるための行動を組織している。今回の実例はその呼びかけのツイートから。

 

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so ~ that ...構文, 【ボキャビル】normalize, Andで文を始める場合の気持ち(アメリカ、大量殺害銃撃事件の続発)

今回の実例は、日曜日のTwitterから。

f:id:nofrills:20190805053350p:plain日曜日はひどい日だった。日本で「あいちトリエンナーレ2019」のなかの小さな展示がめちゃくちゃな経緯で展示中止となったことで日本語圏で怒号と陰謀論が飛び交っている横で、米国ではほんの何時間かの間に、テキサス州オハイオ州で銃撃による大量殺人事件が発生し、何十人もが殺されて何十人もが負傷した。

私は英国のTrendsが表示されるようにしてTwitterの画面を見ているが、英国でサッカーの試合が始まるまでの間は(この日はコミュニティ・シールドの決勝戦だった)、右のように、英国でのTrendsの大半を米国での銃撃事件に関することばが占めている状態になっていた。

 

1件は現地3日の午前中のこと。テキサス州エルパソで、週末の買い物客でにぎわうショッピングモールで20代初めの容疑者がライフルを乱射。死者20人、負傷者26人と報じられている。容疑者は同州ダラスから10時間ばかりかけて車でエルパソまで来ており、この町の「ヒスパニック」を大量に殺戮することが目的だったようだ。犯行の20分ほど前にネットにアップされた「マニフェスト」には、「ヒスパニックの侵略」など、書いてる人の正気ではなく読んでるこちらの目を疑ってしまうようなトンデモが書き連ねられていた(Twitterでキャプチャが流れてきていたので私も少し読んだが、唖然としてしまった。日本の高校で普通に世界史を履修した人なら、19世紀半ばの米墨戦争って知ってるよね)。容疑者は死ぬつもりはなかったようで、その場で警察に拘束されている。当局は「国内テロ」として捜査を開始した。

もう1件は、日付が4日に変わったあとの深夜、オハイオ州デイトンで、週末の夜を楽しむ人々でにぎわうバーで男が銃撃を開始、9人が殺され、少なくとも27人が負傷した。Twitterには「事件のあったバーにいたけど無事脱出できたから心配しないでください」といった投稿がいくつも流れてきた(デイトンの報道関係者とか、一般市民とか)。アソルトライフルを持った容疑者は、銃撃開始から1分もしないうちに、その場で警察によって射殺された。こちらは「マニフェスト」的なものは見当たらず、動機はまだ手がかりがないようだが、容疑者は20代の白人で男。「コナー・ベッツ」という名前からは「イスラム過激派」である様子はうかがえず、というか、「イスラム過激派」である可能性は、私の見ていた範囲では、最初から取りざたさえされていなかった。

そういう中で目にしたのが下記のツイート: 

 

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時制祭り(基本時制)feat. 分詞構文 【再掲】

このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。日本語は「時制」というものの現れ方が英語とは異なるので、英語・英文法の解説として聞いてわかったつもりでも、自分で(日本語で考えてから)英語を書くとなるとめちゃくちゃになってしまうこともよくあるし、書くときに時制に気を使いすぎて他のところに気が回らなくなったりといったこともある。基本的には常に原則通りやっていればよいので、ここで見るような原則をしっかり自分で身に着けてしまうようにしたい。

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今回の実例は、2月2日のBBC Newsの記事より。トピックは「フェイクニュースFacebook」である。

 

英語でdisinfo, misinfoなどと言われる「間違った情報 (false information) の拡散」(日本語で言う「デマの拡散」)はずっと以前からあった問題だが、2016年の米大統領選挙で「フェイクニュース fake news」という幼稚な言い方がすっかり定着してしまった。この言い方を定着させた人物は、自分に都合の悪いニュースを「フェイクニュースだ」と糾弾しているが、実は彼が「フェイクニュース」呼ばわりしているのが「正確なニュース」だったりもして、言葉がめちゃくちゃになっている。だから、2016年の冬は、そういう状況をフィクションとして描いた1949年の小説、『1984年』がベストセラーになったりもした。

 

その後、「調査報道」という形で暴かれてきているのが、Facebook (FB) という情報プラットフォームを舞台としたdisinfoの実態だ。基本的に、ユーザーが書きたいことを好きなように書いて友達や知り合いに読ませることを想定している場で、個人と個人のつながりをはるかに超えるような情報共有が起きているところに、意図的な誤情報(「デマ」)をぶち込んでも、それが「誤った情報である」ということはおかまいなしに広まってしまう、という問題がある。ユーザーは事実確認(ファクトチェック)をせずに広めてしまうからだ。FB側はあれやこれや言って責任を回避しようとしたが、最終的には自分のところで起きている問題を認めないわけにはいかず、ファクトチェックを行なう専門の業者と組んで、自分たちのサービスを利用して流される誤情報/フェイクニュースに対処していくことになった。

 

だが、そうしてファクトチェックの実務に携わることになったチェッカーたち(事実確認のプロたち)は、ほどなく、結局FBの取り組みはポーズだけだったということを悟ることになる。その点は、2018年12月半ばに出たガーディアンの記事に詳しい

 

そして2019年2月上旬、そのような形でFBのファクトチェック業務に携わってきた34の組織のうち、超大手報道機関(通信社)のAP (the Associated Press) と、1990年代からずっとネット上の誤情報や都市伝説についてファクトチェックをしてきた専門のウェブサイト、Snopes.comが、FBとの提携を切ることにした――ということが、BBC Newsで報道された。

 

今回の実例はその記事から。

www.bbc.com

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no more A than B (クジラ構文)【再掲】

今回のエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。いわゆる「クジラ構文」は日本語圏ではなぜか「文学的な表現だ」「そんなものはネイティヴは使わない」という《神話》がまかり通っているのだが、そんなことは全然なく、報道記事のような一般的な文章はもちろん、口頭でも普通に使われる表現である。日本語母語話者にとってつかみたがいロジックであることは確かだし、いざというときは別の表現方法を使えばといだけの話なので自分で使えるようにしなくてもよいかもしれないが、少なくとも、誰かがこの構文で何かを述べている場合は、意味を誤解せずに受け取れるようにしておかねばならない。

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今回の実例は、イギリスの国会でEU離脱Brexit)をめぐってにっちもさっちも行かない状態が続き、英国内に多くの雇用をもたらしている大企業が英国外に拠点を移すとか、英国内での計画を見直すとかいったニュースが続き、本当に「ノー・ディール(合意なし)のBrexit」が現実になりつつあると誰もが考えるようになっていた2月はじめの記事から。

 

記事のトピックは、Brexitを受け、中小企業を含めた英国内の企業のうち3割近くが国外に移転したか、移転を検討中であると、The Institute of Directors (IoD: 経営者協会) の調査で判明したということである。なかなかショッキングな数字だ。

 

www.theguardian.com

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if節のない仮定法, it is ~ for ... to do --,(極右に殺された議員の志を受け継ぐ遺族たちの活動)

今回の実例は、3年前のレファレンダム(住民投票)の直前に、反移民の思想にかぶれた極右主義者(ネオナチ)に殺害された国会議員を記念するイベントに際しての、故人の家族の発言から。

2016年6月、英国のEU残留の可否を問うレファレンダムの投票日まであと数日という段階で、自身の選挙区で有権者との面会という、国会議員の仕事として重要なことをしていた労働党所属のジョー・コックス議員(女性)が、車から出たところで男に襲われた。男は自分で加工した武器(刃物と銃)を持っており、議員を惨殺した。逮捕・起訴された男は、法廷ではほぼだんまりを貫いたが、裁判は議員殺害から5か月ほどで結審し、被告は数々の証拠(物証)に基づいて有罪となり、終身刑を宣告された。

www.theguardian.com

 

殺害されたジョー・コックス議員は40代と若く、ご両親もご健在である。ご両親やきょうだい、夫といった近親者は、「人々には相違点より共通点の方が多い (More in common)」「互いを排斥しあうのではなく、尊重しあおう」という議員の志を受け継いで「ジョー・コックス・ファウンデーション」という基金を創設し、移民排斥や社会の分断といった問題と取り組む活動を行っている。

今回、議員殺害から3年を迎えた夏に、彼らは議員の生まれ育った地元(選挙区でもある)のイングランド北部、ヨークシャーの街から、5日間かけて、自転車でロンドンまで行くというチャリティ・ライドを企画・実行した。距離があるだけでなく、途中山越えがあったりして(イングランドは日本に比べれば平坦と言えるかもしれないが、それは「高い山がない」というだけで、地形が真っ平というわけではない)簡単なチャレンジではない上に、ちょうどタイミング的に、イングランド南東部をすさまじい熱波が襲ったときに重なっていて、大変だったようだ。

 

サイクリストの中には殺害されたジョー・コックス議員のお姉さんか妹さんがいて、ゴール地点でご両親に迎えられた。

 

今回実例として見るのは、そのゴール地点での議員のお父さん、ゴードン・レッドビーターさん*1の言葉から。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

*1:Leadbeaterという姓の読み方は、議員の姉/妹のキムさんが出演したTV番組のクリップ https://www.youtube.com/watch?v=TRzl2aeR9Xc で確認した。

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時制、完了不定詞、stop -ing, start -ing(嘘を嘘と見抜ける人でないと、ネットで投げ銭するのは難しい)

今回の実例は、中国で起きたネット上のちょっとした騒動を紹介するBBCの記事から。

BBC Newsのウェブサイトにはいくつかのコーナーがある。「国内(UK)」、「国際(World)」、「ビジネス(Business)」、「IT・技術(Tech)」、「科学(Science)」、「エンタメ(Entertainment)」など、どこの報道機関でも使っているような一般的な区分けのほか、日々のニュースを追っかけるというより、ものごと・出来事の背後の人の生活や考えといったものを掘り下げる「ストーリーズ (Stories)」のコーナーなどの、BBC News独自のコーナーというかレーベルがある。

今回実例として参照する記事が入っている「BBCトレンディング (BBC Trending)」は、そういった独自のコーナーのひとつだ。

www.bbc.com

名称から察することができる通り、これは「ネットで話題」なものを集めたコーナーで、BBCの記者による取材はほとんど行われず(場合によっては行われることもある)、ネット上で話題になっていることを「まとめ」た、いわゆるコタツ記事を掲載するコーナーだと思っておいてよい。

このコーナーの記事は、記事中にBBC記者による検証などが入っている場合は別として、基本的に「BBC」というブランドにまどわされずに、「そのへんのまとめサイト」くらいのつもりで読むのがよい(「いかがでしたかブログ」よりは全然ましだが)。何かBBC記事のフィードが流れてきても、それがTrendingの記事なら、「あー、はいはい」くらいに構えておくのがちょうどよい。ここの記事はBBCが誇る「プロの仕事」とはちょっと違う。ここの記事に書かれていることは事実の確認・検証という過程を経ていない、「~と言われている」「~と書かれている」の集積である(個人的には、記事を書き慣れていない人が、あちこちにある雑多な情報をいかにひとつのまとまった文章として記事にできるかという点で実践的に練習するための場なのではないかと思っている)。今回の記事はざっと読んだところ特に引っかかるところはなかったが(情報が足りないと思った個所はあるが)、内容がさほどシリアスではないので、このくらいゆるくてもなんとも思わずにいるだけかもしれない。

困るのは、BBCの日本語版のサイトでは ”BBC Trenging" というヘッダー情報がなく、普通の「ニュース」とこの「コタツ記事集積体」を区別せずに単に並べて日本語記事としてアップしてくれるので、どこの何とも知れないネット上の情報を切り張りした程度のものが、あたかも「信頼性抜群のあのBBCがこのように報じた」というように見えてしまっていることだ。

一度遭遇したひどい例に、「日本のTwitterでは蚊に『死ね』とツイートするとアカウントが凍結される」とかいう不確かな(アカウント凍結された本人がそう言っているだけの)噂を、何の裏付けも取らずに英語にして「まとめ」ただけの記事がそのまま日本語にされたケースがある。これは「逆輸入」の形でネット上の日本語圏ですさまじい勢いでバズってしまって、今もまだ修正・訂正はされていないが、噂の出元となった当の「蚊に死ねと言って凍結されたアカウント」は、その後自分でアカウントを削除して消えてしまったので、本当にそんなことが原因で凍結されたのかどうか、真相はわからないままだ(噂の出元となったアカウントは、ひとことで言って、非常にうさんくさいアカウントで、日本語圏の人なら、いわゆる「バイラルメディア」であっても、あのようなアカウントの言っていることを真に受けて記事にしたりはしないだろう。まあ、最初に目をつけたのはBBCではなく、日本にあるニュースサイトの英語版で「日本って変な国だよね~!」という方向のサイトのようだが、それを裏取りもせずにBBCが記事にしたことで、いわゆる「ソースロンダリング」された状態になってしまっている)。ちなみにこの件についてはブログに記録してあるので、詳しくはそれをご参照のほど。

nofrills.seesaa.net

なお、BBC Trendingと似たような、「各国で報道されていることをそのまま英語にします」的なコーナーはBBCにはほかにもあるのだが(BBC Monitoringという)、そちらはもっとずっと本格的。各国の報道を文字通りモニタリングしている。以前はBBC Newsの中に組み込まれていて普通に記事が読めたのだが、現在は全面的に有料サービスになっているようだ。

 

今回見る記事が掲載されているコーナーについて説明していたら、前置きがとても長くなったが、そろそろ本題。記事はこちら: 

www.bbc.com

中国で「癒し系の声を持つ若い女性」として人気を集めてきた女性vlogger (video + blogger: 文字で書くブログではなく映像で情報発信をしている素人。使ってるプラットフォームがYouTubeだったらYouTuber)が、配信中にいつも使っているフィルターがなぜか起動せず、それに気づかなかったためにうっかり素顔のままで配信してしまい、実際は「若い女性」ではなく「中年の女性(おばさん)」だったことが判明し、ファンが愕然、本人はアカウント閉鎖……という、いかにも「ネットで話題」な話である。

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if節のない仮定法(ifの省略と倒置)、接続詞のasなど(北アイルランド、武装組織の活動)

今回の実例は、北アイルランドの報道記事から。

もう終結してから20年以上になるので知らない人も多いと思われるが、英国(イギリス)、つまり「グレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国」の「北アイルランド」では、約30年にわたって武力紛争があった。英語ではThe Troublesと呼ばれるこの紛争の背景となる基本的な構図としては、政治や社会的権力を独占してきた「プロテスタント」と、二級市民として扱われ差別されていた「カトリック」の対立、と説明されうる(ただし、非常にざっくりとした説明である)。

紛争の始まりと位置付けられているのは1968年10月の、「カトリック」側の公民権を求める行進を、「プロテスタント」側の暴徒(警察はこちらに加担していた)が襲撃したことであるが、プロテスタントの側にも武装組織があり、カトリックの側にも武装組織があり、そこに英軍が絡んで非常にややこしいことになって、面積としては長野県くらいの狭い場所で、結局30年くらいずっと武力紛争が続いたわけだ。1990年代に紛争終結・和平への動きが本格化し、最終的には1998年の和平合意(ベルファスト合意、一般には「グッドフライデー合意」)をもって紛争は終結したのだが、それから20年以上が経過した今でも、もろもろ、真相が明らかになっていないことはたくさんあるし、紛争期の暴力にどうカタをつけるかという非常にしんどい部分は先送りされ続けているし、何より、紛争期の武装組織の構成員の中でもとびきりの過激派が分派した組織が今なお、細々と、武装活動を継続している。(「紛争」期にメインで活動していた組織は、どちらの側のも武装を放棄しており、現在では政治的目的を有した武装活動、つまりテロ活動はもう行っていない。現在も活動しているのは分派組織である。)

そういったいわば「残党」の活動はプロテスタントの側にもカトリックの側にもみられるのだが、コミュニティが総体としてそのような暴力を過去のものにしている中で、そういった組織は紛争期に地元に持っていた影響力を維持し行使しようとし、社会全体に対する力の誇示を続けようとしている。それがはっきり表れたのが今年4月にデリーでの暴動を取材中のジャーナリストが、現場での発砲に被弾して落命した事件カトリックの側の武装組織)や、毎年の恒例行事である7月11日夜のボンファイア(焚火)の際に、ベルファストで、組み上げた巨大焚火のやぐらを撤去しようとした行政当局の契約業者の個人名などを街角の壁に書いて暴力を煽った事案(プロテスタントの側の武装組織およびその関連組織)だ。

だから、「紛争」が終わって20年も経っているのに、北アイルランドからは相変わらず恒常的に「武装組織の活動」に関するニュースが流れてくる(往時に比べれば威力はずっと低いかもしれないが)。

今回の実例は、そういったニュースのひとつから。記事はこちら: 

www.belfasttelegraph.co.uk

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