Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【ボキャビル】「ほとんどの」の表し方, 前置詞のas, different to ~, 等位接続詞and, やや長い文, make use of ~, など(タバコに関するWHO報告書)

今回も前回と同じく、世界保健機構 (WHO) が出したタバコに関する報告書から。

以下、前置きとして前回と同じ文面を少々……

この報告書は、タバコを人間の生活からなくしていこうという方向の動きがどのくらい進んでいるかを世界規模で調査してまとめられたもので、WHOのサイトで全文や全体要旨、付属データなどがすべて公開されている。

www.who.int

報告書(全文)は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語国連公用語6言語にポルトガル語*1を加えた7言語で公開されている。当ブログで参照するのはもちろん英語で、下記URLからPDFファイルが誰でも自由にダウンロードできる。ファイルサイズがわりと大きい(7MB近くある)ので注意。 

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/326043/9789241516204-eng.pdf

 

この報告書のなかで、「加熱式たばこ」に関する部分が、NHKの報道記事になっている。(リンク切れになっている場合はこちらからどうぞ。)

www3.nhk.or.jp

 

今回実例として見るのはその「加熱式たばこ (Heated tobacco products)」に関する部分から、PDFで前回見たところの次、報告書の54ページだ。

*1:人口の多いブラジルの公用語

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not only A but also B, not A but B,【ボキャビル】differ to ~, however, 関係代名詞(WHOが加熱式たばこの規制を提唱)

今回の実例は、世界保健機構 (WHO) が出したタバコに関する報告書から。

この報告書は、タバコを人間の生活からなくしていこうという方向の動きがどのくらい進んでいるかを世界規模で調査してまとめられたもので、WHOのサイトで全文や全体要旨、付属データなどがすべて公開されている。

www.who.int

報告書(全文)は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語国連公用語6言語にポルトガル語*1を加えた7言語で公開されている。当ブログで参照するのはもちろん英語で、下記URLからPDFファイルが誰でも自由にダウンロードできる。ファイルサイズがわりと大きい(7MB近くある)ので注意。 

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/326043/9789241516204-eng.pdf

 

この報告書のなかで、「加熱式たばこ」に関する部分が、NHKの報道記事になっている。(リンク切れになっている場合はこちらからどうぞ。)

www3.nhk.or.jp

※この記事、NHKが日本語でまとめたものだけを読んで報告書現物に当たっていないと思われるブコメが散見されるが、報告書について何か意見を言うのなら報告書を見るべきである(報道について意見を言うのなら報道だけ見てても別によいのだが)。全部を見るのは大変かもしれないが、該当する部分だけなら5分もかからずに読める分量なのだから。

 

今回実例として見るのはその「加熱式たばこ (Heated tobacco products)」に関する部分。 報告書の52ページだ。

*1:人口の多いブラジルの公用語

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vital, importantなどに続くthat節内に現れる動詞の原形(仮定法現在)【再掲】

このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。この項目(仮定法現在)についてはその後も何度も取り上げているが、本稿で見た実例のようにbeがそのまま使われている場合は、英語学習者は特に違和感を覚えることが多く、ついついisなどを使いたくなってしまうようだ。基本をしっかりと確認しておきたい。

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今回の実例は、5年前、アメリカの西海岸でヒトデが大量死していると知ったアーカンソー州の小学生が「何とかしなければならない」と立ち上がり、自分たちでTシャツを作って売るなどして集めた資金を使って着手されたコーネル大学とカリフォルニア大デイヴィス校の研究が1本の論文としてまとまり、今回学術誌に発表された、という記事から。

 

www.theguardian.com

 

ちなみにアーカンソー州は内陸で海に接していない。そこの小学生たちが海の生き物の危機を何とかしたいと動いたことに、大学の研究者はたいへんに感動して、寄付されたお金と同額の自分のお金を合わせ、さらに寄付を申し出た人がいたことから、今回の研究が実現したそうだ。

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同格、挿入、形式主語のit, if節(名詞節)、時制の一致、分詞の後置修飾 【再掲】

このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。表題では文法項目を羅列してあるが、取り上げているのは要は「あれこれ入った長い文」である。「長い文」は返り読みして意味を把握するというクセがついている人もいるかもしれないが、学問であれ仕事であれ英語を使うことになるのなら、この程度の文は返り読みをすることなく意味が把握できるようにしておきたい。

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今回の実例は1月末の経済ニュースから。イギリスで「パティスリー・ヴァレリー」というカフェ・チェーンが経営破綻したのだが、経営破綻の直前には巨額の使途不明金があることが発覚していた。その点についての質疑応答が、国会の商業・エネルギー・産業戦略委員会で、同チェーンの監査を担当していた法人の代表者を召致して行なわれたときの報道である。

www.theguardian.com

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接続詞のas, remember to do ~, keep + O + 過去分詞, 等位接続詞のand (ロンドンの炎暑と動物たち)

今回の実例は、異様な暑さに見舞われているイングランドから、暑さに対応するための注意喚起の文面。

今年の夏、東京は20日以上ずっと曇りや雨で、じめじめじとじとした気温の低い日が続いていたが、ヨーロッパは尋常ではない暑さに見舞われていた。ほぼ1か月前の6月下旬には、パリ(フランス)で34度とかいう日があった。

jp.reuters.com

 

そして7月25日、#hottestdayonrecord (Hottest Day On Record) というハッシュタグがTrendsのトップだった日、イングランド南東部は熱波による酷暑に見舞われた。「酷暑」というのはうちらにはおなじみの日本の暑さを基準にした表現で、イングランドの人々にとっては「炎暑」、むしろ「炎熱地獄」の域だろう。

このように、ロンドンでは39度が予想されていた(実際にはそこまでは上がらなかったようだが)。東京も25日は暑くなっていたが33度くらい。今年は今までが梅雨寒で気温が低すぎたからめっちゃ暑く感じられるだけで、暑いには暑いけど実は大したことない(最近の日本の基準では)。東京よりロンドンが暑い! ちなみにこの日、ベルギーやドイツでは40度を上回ったそうだ。

 

東京なら、39度だって、仮に家にエアコンがなくっても冷房の効いた場所で過ごすなど暑さから逃げる方法はある。しかし、ロンドンを含む欧州は、冷房が普及していない。近年、夏の暑い日が増加しているが(空気の流れが変わったらしい。アフリカからの熱気が欧州に上がってくるようになったとか)、それでも、あっても扇風機だという。列車などは冷房が備わっていないものと考えておいた方がよい。

そういう中で気温が30度台後半。もう災害だ。実際、(日本でもあまりに暑いと鉄道が安全のために速度を落とすが)この日は朝から鉄道が速度を落とすなどしていたが、ユーストン駅に入る鉄道では線路が燃えていたりしたという。

 

と、「慣れない暑さに、みなさん大変ですね」とのんきなことなど言っていられない状況だが、このように突出した暑さが予想されるときは、英国では「人間が熱中症にならないために」という情報だけでなく、「動物たちを暑さから守るために」という情報が動物愛護系の組織から提供される。よく見かけるのが、庭のある家では庭に水を張った容器を置いておき、野生の鳥や小動物が水浴びしたり水分補給をしたりできるようにしてあげておください、という呼びかけだが、ペットを守るための情報もよく見る。「車の中に犬を置いたままにしないこと」とか「日陰を作ってやること」といったような実用情報だ。

 

今回の実例もそのひとつ: 

 

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【ボキャビル】ビジネスパーソンの間ですっかり定着している言い回しのリアルな例(ジョンソン首相を私はこう見る)

今回の実例は、近年、ビジネスパーソンの間で大流行して定着したというフレーズが出てきているインタビューより。

英国の公共放送BBCのラジオは、やたらとたくさん局がある。ニュース・天気予報はもちろん、音楽中心のところもあればスポーツ中心のところもあり、討論やリスナーの意見を電話で受けるトーク番組が多い局もあるし、ラジオドラマや教養系の番組が主軸の局もある。これらに加えて各地域のローカル局があり、PCやスマホのラジオアプリで「BBC」と入れると、膨大な数の局が表示されることになると思う。ネットで聞くには、スポーツなど、放送の権利関係がいろいろある番組は英国内からのアクセスでしか聞けないが、そうでなければ日本からでも普通に聞ける。

今回のソース元であるBBC Radio 5 Liveは、スポーツの実況中継もやるが、トークやインタビューが中心の局だ。平日早朝の番組に、"Wake up to Money" という非常に直接的なタイトルの経済・ビジネス番組があり、多くのビジネスパーソンが聴いている。

2019年7月24日、テリーザ・メイ首相が正式に退任してダウニング・ストリート10番地の首相官邸を去り、後を受けるボリス・ジョンソン新保守党党首が首相となる日の朝、番組はやはりこのトピックを取り上げ、何人かの財界人に話を聞いたようだ。

そのひとりがネット通販大手HUTグループの創業者、マシュー・モールディング氏。彼の発言の一部が、BBC BusinessのTwitterアカウントから次のようにフィードされた。

 

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【ボキャビル】あなたが知らないかもしれないmakeの用法(保守党党首選結果発表を伝えるBBC記事)

今回の実例は、以前、「こんなの、日本の受験英語でやるだけで、本物の英語には存在しないんですよね?」的なことを言われたものについて。

といっても「クジラ構文」ではない。もっとシンプルな事例だ。

 

makeという単語を辞書で引いたことがある人は、案外少ないのではないかと思う。より正確にいうと、自分で書いた英語を確認するために英和辞典を引いて用例を確かめるとか、makeを含む成句表現・熟語の意味を調べるとかいったことでなく、makeそのものの意味・用例を辞書で調べることは、かなり少ないのではないか。何しろ基本語中の基本語である。「~を作る」は誰でも知ってるし、「~を…にする」の意味の構文を取ることもたいがいの人は知っている。"Did you make it?" (「実行できたのか」「間に合ったのか」)のような成句表現は別として、makeで単語の意味がわからなくて辞書を引くという流れにはならない。

だから、今回の実例のような文に接すると、第一には「印刷ミス(ミスプリ)ではないか」と思ってしまうかもしれない。「makeの直後に何か目的語が抜けているのでは」とか「そもそもmakeではなく別の単語の間違いではないか」とか。

 

実は、そのようなmakeの用法は、かつて大学入試が「受験戦争」と呼ばれる競争だった時代に作られて使われていた参考書・問題集などにも出ていた(今も出ていると思うが)。そういう参考書が「受験英語は日本で日本人が作った日本でしか通用しないデタラメだ。こんなのをやっているから日本人は学校で英語を勉強しても英語ができないんだ」という(全然論理的でもなければ事実に即してもいない)批判の矢面に立たされ*1、「ネイティブはこんなこと言わない」などとレッテルを貼られるブームみたいなのがあって、今回見るようなmakeの用法は、「でも、参考書に載ってても、実際にはこんな用法、ないですよね」と言われてしまうということがあった。

でも、この用法は実際にある。見かけたら「実際の用例」としてちゃちゃっとメモっておきたい程度にはレアだが、実際に使われている。あなたがそれを見たことがないとしたら、あなたが「生きた英語」、実際の英文を見る量が全然少ないからだろう。

 

記事はこちら: 

www.bbc.com

ボリス・ジョンソンが保守党党首に選出されたことが告知される日(23日)の朝、告知の行事の数時間前に出た記事。本稿は英国時間23日朝に書いているのだが、念のため、時間の経過によってアップデートされて内容が書き換えられてしまった場合の参照先: 

https://web.archive.org/web/20190723030955/https://www.bbc.com/news/uk-politics-49078864

*1:確かに、本当に不自然な例文などがなかったわけではないのだが、すべてがそうだというわけではない。

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《否定》の意味合いの同等比較 (as ~ as ...)(ボリス・ジョンソンとBrexit)

今回の実例は、ガーディアンの論説記事の見出しから。

見出しなので、文法解説としては本文は読まなくてもOKなのだが、記事はこちら。今の英国政治に興味がある人は、読んで損はしないと思う:

www.theguardian.com

 

今日のトピック、「《否定》の意味合いの同等比較」については、以前に既に書いているので、特にひっかかるところのない人なら、この見出しを見て、以前書いたものを見て確認していただくだけでもよいだろう。

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

というわけで、今日の解説。

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仮定法のif節と、直説法のif節の違いがとてもわかりやすい実例(英財務大臣の発言)

今回の実例は、英国で日曜日の朝のテレビといえばこれ、というような定番の政治家インタビュー番組でなされた、財務大臣の発言と、その発言を言い換えたものである報道各社のヘッドラインから。

以前も少し説明したが、英国では、首相はPrime Ministerだが、内閣 (cabinet) を構成する閣僚たちはMinisterではなくSecretary of Stateと称する。例えば「教育大臣」はSecretary of State for Educationと言い、新聞記事などで短縮した形で表されるときはEducation Secretaryとする。

なので「財務大臣」はSecretary of State for Finance...と言いたいところだが、そうならない。財務大臣は特別な役職で、Chancellor of the Exchequerと言う。略すときはChancellorだ。最も重要な仕事は予算の責任者としての仕事である。(以上、定冠詞は省略した。)

英国では、Chancellorは財務大臣であると同時に、「政権ナンバー2」である。副首相 (Deputy Prime Minister) のポストもないわけではないが、任命されないケースも多く、常にどの内閣でもいる財務大臣が恒常的な「ナンバー2」と言える。住居(官邸)も、首相がダウニング・ストリート10番地で、財務大臣11番地である。英国では基本的に、通りのこちら側に偶数番地、あちら側に奇数番地というように並んでいるのだが、ダウニング・ストリートはそうではなく、10番地と11番地が隣り合っている。

というわけで、政権トップである首相が退陣するときは、ナンバー2である財務大臣の動向にも関心が向けられる。そもそもが首相と財務相はセットみたいなものだが、特に今回のテリーザ・メイのように、政権を担っていくことを諦めて自ら退くという場合は、財務大臣も一緒に退陣することは織り込み済みで、「次は誰が財務大臣になるのか」ということが早くから関心を集め……て当然なのだが、そこは建前と真顔の国、あまり表立っては取りざたされていない。

そこに持ってきて、いよいよ保守党党首選の投票(一般党員による郵便投票)が締め切られる(22日。結果発表は23日)というタイミングで行われた、21日の「日曜朝の政治家インタビュー番組」で、財務大臣本人がスタジオで、次のような発言をしたわけだ。

発言を文字にするとこうなる: 

I’m sure I’m not going to be sacked because I’m going to resign before we get to that point. Assuming that Boris Johnson becomes the next prime minister, I understand that his conditions for serving in his government would include accepting a no-deal exit on 31 October and that’s not something that I could ever sign up to. 

 

これが、各メディアでは、次のように、if節を使った表現にまとめられて伝えられた。下記は一例としてSky News. 

ハモンド財務相の "Assuming that Boris Johnson becomes the next prime minister" という発言が、ここでは "if Boris Johnson wins the Conservative leadership race" とif節を使って言い換えられている。

 if節と見ると「仮定法だな」と思ってしまうかもしれないが、これは直説法のif節、単なる《条件》を表すif節である。

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挿入 【再掲】

このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。ここで見る《挿入》は素直なパターンで、「こんなの説明されなくてもわかるよ、楽勝楽勝」と思われることが多いかもしれないが、これが関係代名詞と合わせ技になるととたんに構造が取れなくなるケースが多くなる。基本はおろそかにせず、完全に把握しておきたい。

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今回の実例は、1月末のアイリッシュ・タイムズ (the Irish Times) の記事から。

アイリッシュ・タイムズはダブリンを拠点とする新聞で、ウェブ版・アプリ版はちゃんと読もうと思ったら基本的に有料購読制ということになっているが、毎週10本までは無料で閲覧できるので、検索経由や誰かのツイート経由といった形で、通りすがりにさくっと記事を読むことが可能(ただし最初から有料購読者でないと読めない記事もある)。アイルランド英語圏ではあるが、アメリカともイギリスとも異なる視点からの報道がなされ、特にアメリカやイギリスが当事者となっているトピックに関しては興味深いものになっていることがよくある。もちろん、アイルランドのニュースについてはとても詳しい(より詳しく見たい人は、この新聞とあわせて、公共放送のRTEをチェック)。

 

さて、今回の実例で参照する記事のトピックは、例によってBrexitなのだが、Brexitに関してはアイルランドは当事者である――日本でどの程度詳しく述べられているかを私はチェックしていないのだが、イギリスのEU離脱に際して最も大きな争点となっているのが、アイルランド島にあるボーダー、つまり北アイルランド(現在は英国の一部)とアイルランド共和国(独立国)の間の境界線である。この境界線は、日本語圏では「国境」と呼び習わされるが、アイルランドの立場では「国」の境目として確定的・固定的なものではない。アイルランドでは「島全体」で1つの国であるという理念が基本的にあり、Brexitをめぐって紛糾している「アイルランドのボーダーの問題」とはつまり、北アイルランドの帰属というconstitutional problemであって、そう簡単に解決するものではないし、「簡単に解説」することすら難しい。

ただしこのブログはそれについて解説を試みる場ではない(そういうことは私の本家のブログで少しはやってる)。ここでは「なぜアイルランドの首相がBrexitという『よその国の問題』についてこういう発言をしているのか」という点についての背景として、このような「アイルランドもまた、当事者である」という点を指摘しておくだけにして、先に行こう。

www.irishtimes.com

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接続詞while, 倒置, 関係代名詞that 【再掲】

このエントリは、今年2月にアップしたものの再掲である。ここで見るような《倒置》は報道記事など一般的な文章で頻出だが、文構造が取れなかったり誤訳したりということが起きやすい項目で、十分な注意が必要である。

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今回の実例は、イギリス王室のインスタグラムのアカウントで「ケイト派」と「メーガン派」が煽りあっているという、何とも「はぁ・・・」な出来事についての記事から。

ちなみに、日本語の報道やファッション雑誌の記事などでは「キャサリン妃」「メーガン妃」と書かれるのが標準だが、英語ではそれぞれ、Kate*1, Meganとするのが普通で、正式な肩書きで呼ぶときはそれぞれ、Duchess of Cambridge (ケンブリッジ公爵夫人),  Duchess of Sussex (サセックス公爵夫人) とする。その流儀にならい、ここでも「ケイトさん」か「ケンブリッジ公爵夫人」、「メーガンさん」か「サセックス公爵夫人」を使うことにする。

というわけで、今回は「ケイト派」と「メーガン派」の対立、という話題(本人たちが対立しているという話ではなく、「王室ファン」みたいな人たちが勝手に両陣営に分かれてやり合っているという話)。

www.theguardian.com

*1:KateはCatherineという名前の愛称形だが、イギリスの報道記事などがケンブリッジ公夫人をCatherineと呼ぶのはまず見ない。

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英語の文章は書き出しは抽象的で情報過多で読みづらいという話(ボリス・ジョンソンの黒歴史)

表題の件、ボリス・ジョンソンに黒くない歴史があるのかどうかというのは措いておいて……。

 

今回の実例は、報道記事の文頭で情報がぎゅっと凝縮されててちょっと読みづらいかもしれない文。

英語の文章は、最初に「結論」に相当するものを短くまとめて書くのがルールで、学術論文でも最初はAbstract(アブストラクト)と呼ばれる要旨が掲載されている。Abstractは、その呼び名の通りかなり抽象的で、それだけ単体で読むのは、特にその分野に通じていない人にとってはなかなか大変な場合もあるが、わかりづらいところは本文を読めば具体的に説明されているはずなので問題ない。

報道記事の場合は、最初にその記事の主要な内容をまとめて述べ、後続部分で具体的な話を展開するのがお約束で、最初の文は、具体性が欠落してるにもかかわらず情報が詰め込まれていて読みづらくなっていることが少なくない。その場合でも、後続の部分で具体的な記述を読んで内容を理解すればよいので、これも問題ない。

問題は、まず最初にそういう詰め込み型の文を読んで、正確に意味が取れなかったり、誤読してしまったりしたときに、それが思い込みとなって、後続部分を正確に読むことが阻害されることもないわけではない、ということだ。

英語の文章のこういう特徴を知っていれば、最初はざっくりと読み流して、そのあと具体論に入ってから細かく読んでいくというやり方をとることができるのだが、それがわかっていないうちは、「冒頭の読みづらい抽象的な文を苦労して時間をかけて読んだ上に、微妙な誤読もしてしまっていて、先入観でその後の読解がゆがめられてしまう」という残念なことになりがちである(私も何度となくそういう道をたどったのだが)。

今回はそういう文の一例である。記事はこちら: 

www.theguardian.com

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-ing形が動名詞なのか現在分詞なのかを見極める, 分詞構文, 同格, 挿入, 【ボキャビル】changes in ~, likely to do ~, など(「体験の共有」は人間独自のものか)

今回の実例は、類人猿の行動の研究からわかったことについて説明する、とても読みやすい記事から。

以前「人間独自の能力」と言われてきたものが、近年、研究の結果、必ずしもそうとは言えないとわかってきたという例がいくつかある。今回見るBBC記事も、そのような最新の研究についてのものだ。学術論文のスタイルではなく一般人にわかる形式で解説・説明することが目的の記事である。

記事はこちら: 

www.bbc.com

見出しでは「チンパンジー」と限定されているが、実験はチンパンジーボノボを対象に行われたものだそうだ。

実験では、これまでの研究の結果、類人猿が興味を示すことがわかっている映像を用いて、「ある映像を他の個体と一緒に見る」という体験をさせて(してもらって)いる。記事の前半は、実験がどのように行われたかを淡々と説明する部分が多い(これは学術論文でもよく見られるスタイル)。

実例として見るのは、そのあとの部分から。

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セミコロン (;) の使い方、長い文、等位接続詞andによる接続、分詞構文、スラッシュ・リーディング、a time where ~という表現、前置詞+動名詞、挿入、など(今という時代、格差社会の自由と民主主義)

今回の実例は、少し前に見たG20サミットに際してのプーチン大統領の「リベラリズムはもう古い」発言をめぐってたくさん出た論説記事のひとつから。

プーチン発言に対しては「彼が西欧のリベラリズム、政治的伝統の何を知っているというのだ?」といった反応が、少なくとも英国ではかなり見られた(米国のメディアはそのときチェックしていなかったのでわからないが)。「彼は何も知らないのだから、何かを発言できる立場にない。だから、何を言おうとほっとけばいい」という意見は、以前当ブログで実例として参照した論説記事でも見られたものだ。

しかしそのような反応が可能なのは、「西欧の政治(民主主義)は優れている」という前提があるからではないか、と指摘しているのが今回見る論説記事である。

記事の筆者のツイート: 

 

記事はこちら:  

www.theguardian.com

 

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等位接続詞andによる接続がちょっとややこしい場合、分割不定詞、make + O + C, 関係副詞where ( #WeCareDoYou )

今回の実例は、7月16日に英国で話題となったハッシュタグで回覧されていた文書より。 

サッカー、イングランド・プレミアリーグに属するアーセナルの複数のサポーター組織が(普段は意見を戦わせることも多いのだが)一致団結して、オープンレターを連名で出した。

アーセナルに最近何が起きているかは、別に知らなくてもこの文書は読めるのだが、簡単に言うと、クラブの意思決定をする経営陣・上層部(いわゆる「フロント」……英語記事では私が知る限り「フロント」という表現は見かけないのだが、日本語の「フロント」はfront officeの略 であるとのこと*1)がおそろしいほど何もしないというか無能なので、いろいろと起きるべきでないことが起き、起きるべきことが起きていないという状態に業を煮やしたサポーターたちがついに声を上げた、という事態である。

サポーターたちの怒りとフラストレーションは、現在のアーセナルの経営的な部分によって生じ、それに対して向けられている。アーセナルは北ロンドン(イズリントン)のクラブだが、サッカーが「ビジネス」(つまり金を産むもの)として注目されてイングランドのクラブが次々と「外資」の「所有物」となる中で、米国の富豪とウズベキスタンの富豪が大株主となり、2人の間で、および昔からの株主たちの間でクラブの支配権をめぐってちょっといろいろあった挙句、2018年には米国の富豪が「クラブの唯一のオーナー」ということになった。詳しくは英語版ウィキペディアを参照。

この米国の富豪が、スタン・クロンキー (Stan Kroenke((日本語圏ではKroenkeが「クロエンケ」とカタカナ書きされるケースもあるが、「クロンキー」と読む。))) という人で、彼は米国でアメフトやバスケ、アイスホッケー、サッカーなどのプロスポーツチームをいくつも経営するKSE(クロンキー・スポーツ&エンターテイメント)というスポーツ企業の創業者・社長で、ぶっちゃけ、ロンドンのサッカークラブが地元の人々に持つ意味とか伝統とかはどうでもよく、アーセナルは単に世界的にも名の通った「ブランド」であり、持ってるだけでほっといても金が入ってくる便利な存在にすぎないと考えているとしか思えない。優勝トロフィーを獲得しようがしなかろうが、クロンキー氏にとっては別にどうでもいい(どっちにしても儲けは出る)。だから、リーグでの成績を上げようとか、そのためにはどういうことをやっていこうとかいうヴィジョンを、クラブ上層部が持っていそうな感じがしない。

イングランドのクラブの中には、外国人オーナーのもとでうまくいっているところもあるのだが、残念ながらアーセナルはそうではないわけだ。

その問題が積み重なってきたところに、この7月、キャプテンがシーズン前のアメリカ遠征を拒否するというありえない事態まで発生して、サポーターたちもいよいよ黙っていられなくなったのだろう。

サポーター団体が連名で出した文書はこちら: 

画像では読みづらければ、下記のサイトで。 

https://www.wecaredoyou.co.uk/

 

今回はこの文書の一部を実例として見ることにしよう。

*1:細かくは調べていないが、front officeはたぶん米語の野球用語だと思う。英国のサッカー報道ではboardという。

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