Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

thoughやhoweverを使った論理展開、助動詞+完了形、など(気候変動とヴェネツィアの冠水)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例も、前回と同じ記事から。前回は記事の冒頭部分を見たが、今回は記事の中ほどで、世界的に関心を集めているイタリアのヴェネツィアについての部分から。

日本語では外国の地名など固有名詞は現地の音を参照してカタカナにするのが原則だが(ただし中国の地名などについては例外)、英国の言葉である英語ではしばしば、現地語とは違った読み方をすることがある。「ヴェネツィア Venezia」はその代表例で、英語では「ヴェニス Venice」という。同様にイタリアの「フィレンツェ Firenze」は英語では「フロレンス Florence」だし、「ローマ Roma」は「ローム Rome」、というように地名ひとつとってもいろいろあるのだが、当ブログでは基本的に日本語で定着している表記を採用している。

実用英語となると、こういった「英語独特の呼び方をする、英語圏以外の地名」も、重要なものは押さえておかないといけないのだが(例えば英語のラジオのニュースを聞いていて「"サイベリア" に隕石が落下し……」と流れてきたら「シベリアに隕石が落下した」と即座にピンとこなければならない、とかいったことがかなりたくさんある)、大学受験の段階ではそこまで手を広げようとする必要は必ずしもないだろう。ただし、例えばロシア語やロシアの地域研究の方面に進みたい人は、いずれ英語で論文を読んだり発表を聞いたりすることになるのだし、ロシアの地名の英語読みに早いうちからなじんでおきたいと思ったらそうすればいい。大学受験までの基礎力づくりの段階で重要なのは、固有名詞をたくさん覚えておくことというよりむしろ、この先、自分がやりたいようなことができるようにしておくことだ。

 

閑話休題。記事はこちら: 

www.bbc.com

今回はちょっと長めに文章を切り取って、論理展開を見ていこう。

 

続きを読む

同格のthatなど(ティモシー・スナイダー教授の連ツイ論考、「大きな嘘について」)

今回は、体力がないので淡々と。投稿が30分遅れてすみません。

『暴政』や『ブラックアース』、『ブラッドランド』のティモシー・スナイダー教授が、米ワシントンDCの国会議事堂での暴力事態とそれをめぐるいろんなことについて、Twitterのスレッドを何本か書いている。今日はそれらのスレッドのひとつを読んでみよう。

 

 一読して文構造が取れただろうか。スラッシュやカッコを入れるとつぎのようになる。

The claim [ that Trump won the election ] / is a big lie.

文の骨格は "The claim is a big lie" で、そのclaimに《同格》の接続詞thatの節がつながっているので主語が長い文になっている。「トランプが選挙に勝ったという主張は、大きな嘘である」。

この「大きな嘘」(big lie) は、スナイダー教授の連ツイで繰り返し出てくるのだが、ただ文字通りに解釈するのではなく、専門用語として解釈しなければならない。この用語は、大学で社会科学系・人文科学系の素養がある人ならおそらく確実に知っているだろうし(ただし日本においては、日本だけに閉じている学問分野ではどうなのか、私はわからない)、大学とは関係なく生活している人でも映画や文学、漫画といったカルチャー/サブカルチャーを通じて知っている人も少なくないと思う。と、説明書きを軽く示そうとして日本語のウィキペディアで探したが、項目すら立っていなかった。日本語で入手できる情報の少なさと薄さに改めて危機感を覚えつつ、そんなことにいちいちかかずらってはいられないのでさくっと英語版を参照しておこう(こうだから、英語は使えないとならないのだ。私も、ネット上の情報を豊かにしようとずいぶんがんばったつもりだったけど、もうあきらめた)。

en.wikipedia.org

A big lie (German: große Lüge) is a propaganda technique used for political purpose. The expression was coined by Adolf Hitler, when he dictated his 1925 book Mein Kampf, about the use of a lie so "colossal" that no one would believe that someone "could have the impudence to distort the truth so infamously". ...

続きを読む

仮定法過去(議事堂に押しよせているのがBLMのデモ隊だったら)

今回の実例は、予定を変更して、昨日の続きではなく新規に。

起きた出来事にショックを受けすぎていて、前置きなどを書いていると書き終わらないから手短に。

日本時間で今朝(1月7日)早朝、午前4時台に、米国の首都ワシントンDCから異変が伝えられてきているのに気付いた。しばらくは日本語の報道機関ものTwitterアカウントも沈黙していたようだが(そりゃみんな寝てるだろうけど、前々からこの日は重要な日だということがわかっていたのに、マスコミの「デスク」の人とかTwitterアカウントの中の人が誰も起きてウォッチしてなかったとしたら、不思議だ)、やがてみなが起きだすころには伝えられただろう。私は東京にいることはいるんだけど、こういうときは基本的に日本語の報道を見ないので(英語で事足りるから)よく知らないのだが。

ともあれ、DCの国会議事堂に「トランプ支持者」と呼ばれるモブが乱入し、あちこちを荒らしまわり、ジョー・バイデン次期大統領に関する重要な手続きが進行していた議場からは議員たちが退避するなどし、議事堂はロックダウン(完全に鍵をかける)の状態になった。議事堂を固めているはずの警察の壁はザルで、議事堂内ではモブと警官が記念撮影に興じていた。催涙弾はどこ? シールドと警棒を持って「暴徒」を阻止する警官隊は? 

(ここにあとでツイート入れる)

この状況を見て、私の視界では少なからぬ人々が、昨年夏のBLM (Black Lives Matter) のデモのときのすさまじくがちがちな警備状況と比較していた。今回の実例はそのひとつ。

 

続きを読む

日付の書き方(英国式と米国式)、be + to不定詞, 近未来を表す現在進行形, recommendに続くthat節内の動詞の原形(「緊急」のスピード)

※昨日はPC不調のため休載となりすみませんでした。今日もまた大幅に投稿時刻が遅れましてごめんなさい※

今回の実例はニュース速報のフィードの文面から。

昨日1月5日、日本で「緊急事態宣言」が出されることになったというニュースがあったが、実際の中身は、「『緊急事態宣言』を7日に決定するという方針が(5日に)決まった」というニュースだった。

f:id:nofrills:20210106180528p:plain

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210105/k10012797331000.html

その「緊急事態宣言」の中身(「宣言」をして実際に何をするのか)も問題だが、それ以前に、2日も空けたものの何が「緊急」なのかという、言葉の定義というか言葉の意味をまったく無視したことを堂々とやっていることのほうがさらに大きな問題だ。こういう「言葉の破壊」について、ジョージ・オーウェルの『1984年』を参照しながら「ディストピア」であると述べると、「大げさな」とか「中国共産党政権下の中国やカダフィ政権下のリビアのようなものをディストピアと呼ぶのである」とか「小説と事実の区別がついていない」とかいった反応が出てくるのだが、それは単に「ディストピア」であるということが受け入れられない人たちの防御的な反応にすぎない。「ディストピアじゃないもん!」みたいな感情的な反発をするエネルギーを使って、実際に『1984年』のそのくだりを読んでみればいい。オーウェルは「100%のフィクション」を書いたのではなく、いわゆる「風刺」を意図して架空の物語を築き上げたという認識のもとに。 

Nineteen Eighty Four (Penguin Essentials)

Nineteen Eighty Four (Penguin Essentials)

  • 作者:Orwell, George
  • 発売日: 2008/07/29
  • メディア: マスマーケット
 

 

というわけで、2日も空けたものの何が「緊急」なのかという点だが、日本での(菅内閣が)「緊急事態宣言」(と呼ぶ夜間の外食産業営業自粛要請)の現実的可能性についてのニュースがあった日の前日の夜から当日の早朝にかけて、英国で、カギカッコなしで緊急事態宣言と呼んでもよいが、実際には英国政府はそういう大げさな言葉は使おうとしていないものについてのニュースがあった。話がややこしくなるのでここでは英国のその動きも「緊急事態」と位置付けて進めたいが、ともあれその「緊急」のスピード感(というか「感」なしの「スピード」)について、スマホに飛んでくるように設定してあるニュース速報のフィードを見ることで、知っていただければと思う。英国だけでなく、世界的には「緊急」といえばこのくらいのスピード(感)が当たり前。のらりくらりやってるのは政治が機能していないところくらいだ(北アイルランドとかレバノンとか)。

普段は私は英国はBBC, アイルランドアイリッシュ・タイムズの速報を受け取るようにしているのだが、12月31日のBrexitがあったので、今はガーディアンも速報を受信するように設定してある(ガーディアンは速報の本数がちょっと多すぎるので、特別大きなニュースがあるときだけ受信するようにしている)。1月4日夜から5日早朝にかけて、この速報受信画面が、次のようになっていた。これらのタイムスタンプは、最初に「ジョンソン首相がテレビ演説を行う」という告知が流れたのが00:00で、その5時間後には演説が行われていた、ということを意味する。

f:id:nofrills:20210106182420j:plain

今回は、これらのフィードをひとつひとつ展開して、その英文を読んでみよう。

続きを読む

本日、アップ時刻が遅れます。→ごめんなさい。休載します。

表題通りです。USB接続がバグってマウスが認識されないというトラブルに対処中です。1時間か2時間後にチェックしてみてください。→ごめんなさい。休載します。トラブル対処で疲れちゃった。

 

強調のために副詞句を文頭に持ってきたあとで、SとVを倒置する例、しない例(ドナルド・トランプの乱心)

今回の実例は、Twitterから。

と、本題に入る前に、今日1月4日まで、Amazonの初売りで開拓社の電子書籍の一部が半額になっているので、そのご紹介。

開拓社は、ちょっとでもまじめに英語やってる人は知らない人はいない出版社だから、そう聞いて「これは耳より情報」と思った方はすぐさまこちらのリンクからKindleストアに飛んでいって目録を確認していただければと思う。セール対象の「開拓社 言語・文化選書」の検索結果を、価格が安い順にソートしてある。選書のすべてがセールになっているわけではないが、定価2000円前後の本が1000円前後になっている。例えば:  

ここでは「英語もの」だけを扱うが、同選書には言語学や日本語学、認知言語学の本もあるので、ことばに関心がある方はチェックしてみてほしい。試読のマークはついていないが、Amazonにログインして閲覧すれば「無料サンプルを送信」のボタンから手元のPCやスマホタブレットKindleアプリ、またはKindle端末に相当数のページを見本としてダウンロードして読むことができる(実際、この無料サンプルだけでもかなり勉強になるくらいの量がある)。いくつか読んでみて、「これは」と思ったものは買っておくと、あとあと役に立つだろう。もちろん、本気で勉強するなら電子書籍よりも紙の本を買ったほうがやりやすいのだが(電子書籍に切り替えて随分たつが、やはり、書き込みも、「ページをパラパラめくる」ことも、紙が圧倒的に優位である)、電子書籍なら検索が可能なので、一度読んで終わりにするのではなく手元に置いて参照可能な資料としておくには、電子書籍があったほうが何かと便利だ。

さて、というところで本題に入ろう。

米国で、ドナルド・トランプが異常行動をとっている証拠が出てきたことは、日本語の報道でも一応扱われている。

米紙ワシントン・ポスト電子版は3日、トランプ大統領が南部ジョージア州で大統領選を管轄したラフェンスパーガー州務長官(共和党)に対し、「再集計」で自身の敗北を覆すよう圧力をかけたと伝えた。事実上、票数の改ざんを求めたと受け止められる恐れがある。同紙は1時間にわたった両氏の電話会談の録音記録を一部公開した。

this.kiji.is

これはもちろんアメリカではたいへんな大ニュースで、今朝など、私が見るTwitterの画面は、これについてのツイートで埋め尽くされるくらいになっていた。今回、実例としてみるのはそのひとつ。The Daily Beastという媒体の編集長、ノア・シャクトマンの発言である。

 

続きを読む

付帯状況のwith, if節(名詞節), 疑問詞節, など(気候変動と、全世界的に発生している洪水や森林火災)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。そういえば1年前の今頃(2020年1月)は、オーストラリアの山火事でコアラなどの動物たちが大変だというニュースが世界で一番大きく注目されているニュースだった。

-----------------

今回の実例は、気候変動についての解説記事から。

今年(も)、日本は度重なる豪雨と台風に見舞われて、あちこちでひどい被害が出たが、そのような極端な天候 (extreme weather) は全地球規模で起きていて、イングランド北部では11月上旬から洪水(川の氾濫)が続いている。11月7日(木)には川の堤防が決壊して付近が冠水するということが起きていたのに、ボリス・ジョンソン首相が内閣の危機に際しての緊急会合(Cobraミーティング)を招集したのは週明けの11日(月)という安倍内閣もびっくりの遅さで、あからさまな北部軽視だと批判が出ている。ジョンソンは今選挙戦の真っ最中で全国各地をめぐり有権者と直接話をしているが、行く先々で有権者の怒りの言葉にさらされている*1

 

同時期に、イタリアのヴェネツィアヴェニス)が冠水して大変なことになっている。こちらは雨が原因ではなく高潮。

www.afpbb.com

 

高潮は毎年のことだが、ここまでひどくなったのは気候変動が原因(のひとつ)だと市長は述べている。ただし、もちろんというべきか原因は複合的なもので、市民にしてみれば、防波堤の建設が汚職のために進んでいないということが大きいという(気候変動は今すぐ人が何かしてどうこうということはおそらくないが、防波堤の建設は今すぐ人が動けば事態は変えられるわけで、そちらが重要視されるのは当然のことだ)。

www.afpbb.com

 

一方オーストラリアでは未曽有の規模の森林火災(山火事)が起きているし、米カリフォルニア州も大変なことになっている。

www.huffingtonpost.jp

 

今回実例として参照するのは、そういうことがあちこちで起き、日々のニュースとして流れてくる中で出た解説記事だ: 

www.bbc.com

 

*1:近年の英国の政治はひどくぐだぐだになっているのだが、それでも、事実上ほぼ一党独裁の専横政治化している日本の政治よりはずっとましで、英国政治を見ていたほうが人間というものについて絶望しないで済むというのは、こういうことだ。

続きを読む

the fact is (that) ~, 英文読解(書いてあることを書いてあるままに読むということ)、英作文のコツなど(昆虫の減少という問題)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例も、前回と同じ記事から。

前回は長くなってしまうので言及しなかったが、「昆虫の減少」というトピックでこの10年ほど世界的に注目を集めているのが「ミツバチの減少」である。ミツバチの減少については、日本語圏でもささっと検索すれば、ここ何年かの間に書かれた文章が数多く見つかる。例えば2015年5月号のナショナル・ジオグラフィックは、記事の前置きの部分で、「どのような問題か」を次のようにまとめて伝えている: 

巣箱から突然、たくさんのミツバチが消えていなくなる「蜂群崩壊症候群(CCD)」という現象が、2007年に報告された。欧米各地で突如として頻発したこの現象を、マスコミは「世界の農業を揺るがす脅威」と報じた。なにしろ世界の食料供給の3分の1は昆虫による受粉に依存し、その主役はミツバチなのである。


蜂群崩壊症候群の原因は、一つだけではなさそうだ。今では研究者の大半が、害虫、病原体、殺虫剤、生息環境の減少などの複合的な要因が背景にあると考えている。……

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/15/041900003/042000004/

ここで指摘されている「要因」は、それぞれ別々に存在するのではなく、相互に関連しあっている。それを認識しておくことが、今回見るような環境問題についての記事を読むうえで、準備として必要となる。大学入試でも環境問題というテーマは頻出だ。凡庸な言い方になるが、日ごろから広く関心を持ち、視野を広げておくことで、読解に必要な基礎的な知識を身に着けるようにしておきたい。

 

では、記事はこちら: 

www.bbc.com

 

記事の枕の部分で紹介されている報告書(前回はリンクだけしたが): 

https://www.somersetwildlife.org/sites/default/files/2019-11/FULL%20AFI%20REPORT%20WEB1_1.pdf

表紙など込みで全48ページと、なかなかボリュームがあるが、写真も多いのでざっとスクロールしながら目についたところだけでも読んでみるとよいかもしれない。語彙は大学受験生にはちょっと高度かもしれないが、 英語の長文読解でなかなか容赦のない問題を出す大学を志願している人には、読解のよい練習台になりそうだ。特に40ページの「最近の殺虫剤(農薬)は昔のものに比べて安全だと言われているが?」のセクションなどは、英語の文章のロジックがよくわかる記述になっているので、長文読解の参考書をやったあと、何か練習台を探している人にはおすすめである。

続きを読む

go + 形容詞, 英文読解, -ing形の区別, thatの省略, 関係代名詞など(昆虫の減少という問題に、私たちは何ができるか)【再掲】

新年あけましておめでとうございます。大みそかTwitterをぼーっと眺めていたら、英語圏の人の発言で、「2021年は2020年よりは絶対によい年になる。ただし根本的な変化は免れない。AIDSのパンデミックのあとで医療現場で手袋が欠かせないものになったように」というものがありました。実際にそうだろうと思います。英語圏では、最初の流行地、中国の武漢では「もう完全に元通りだ」という内容の報道が12月にいくつかありましたが(ナイトクラブやライヴハウスのような場所でも、私たちがなじんでいるあの光景が戻ってきています)……。

ともあれ、このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲です。こういった問題(生態系に対する人間の活動の影響という問題)もまた、今回のウイルス禍と無縁ではない、という論考が、2020年の3月か4月ごろにはたくさん出ていたと記憶していますが、12月の東京、日々の新規感染者数の数値・重症者数の数値の増加っぷりと、医療現場からの悲鳴で精いっぱいで、報道機関にも情報の受け手の側にも、もはやそういう論考の余裕はほとんどないですね。いろいろと、精いっぱいで。

-----------------

今回の実例は、都会生活でも実感できる環境問題についての青少年向けの記事から。どこぞの環境大臣などが言ってる、若者向けにするには「セクスィ~」にしなければということは、こういうことなのだろうか。つまり、「ただ読んで『深刻な問題ですね』で終わらせるのではなく、『自分にもできること』を提案し、取り組みを促す」という方向性。それなら「セクスィ~(閣議決定)」路線でもいいんじゃないかと思う。

BBC Newsの中に、Newsbeatというコーナーがある。現在はBBC Newsの一般のサイトとシームレスで、普通にNewsを見ているつもりでリンクをクリックしてみたらNewsbeatだったということがよくあるが、NewsbeatはBBC Radio 1のニュース番組で、"Newsbeat is produced by BBC News but differs from the BBC's other news programmes in its remit to provide news tailored for a specifically younger audience." との由。つまり青少年向けのニュース番組である。ラジオという音声ベースの媒体だし、内容も語彙も構文も、一般に「読まれる」ことを前提とした記事よりも平易だから(だからといって非ネイティヴ英語話者である英語学習者にとって「簡単」とは限らないのだが)、長文多読の素材に向いている記事が多い。Newsbeatの記事は下記リンクから一覧できる。

www.bbc.com

 

今回の記事のトピックは、昆虫が減少しているという件。これは東京で私も感じていたのだが*1id:cenecio さんも感じていらっしゃるとのことで、先日ブログに書いていらした。

cenecio.hatenablog.com

私の住んでいるエリアでは、立派な庭があって庭木が植えられているようなお宅が近年次々とマンションやアパートに建て替えられていて、「庭木」というものがどんどん減っていて、住宅街の立派な一本桜(ソメイヨシノ)が姿を消した次の年には、隣の区画のヤマザクラが消えて、自転車で数分行ったところにあるハナカイドウやハナミズキに満たされた庭のある家が取り壊されて時間ぎめの駐車場になったりしている。かなり離れた場所だが、道路の拡幅のために家が立ち退いた場所もあり、そこにそびえ立っていた何の種類だかわからないが巨木もなくなった。昨年(2018年)10月の台風で公園の木が何本も倒された影響もある(巨木がすさまじい風に揺らされたため、根本が緩んで倒木の危険が生じたとかで伐採されたものもあるし)。寿命を迎えたというソメイヨシノの巨木が私が行動する範囲で数本切られた。一方で新築の豪華マンションの周りには若い木が新たに植えられているから、この先はまた環境が変わってくるのかもしれないが、ともあれ、今は目で見えるレベルで「緑が減った」と感じられている。

 

そういう場合でも、昆虫が生きられる環境を人の手で作ることは可能だ、というのが今回の記事。こちら: 

www.bbc.com

 

ヨーロッパでの昆虫の減少は、10年ほど前から深刻な状態にあると言われているが、今回、英国でthe South West Wildlife Trustsという機関が調査報告書をまとめた。そこに示された危機的な状況に対して、都市に住む人間は何ができるか、ということについて箇条書きのような形式で示した記事で、とても読みやすいので、英語の勉強のために全文を読むことは有益だと思う。

*1:蛾はいっぱいいるんだけど蝶を見かけなくなったし(大きなアゲハ蝶やマツグロヒョウモンも、小さなシジミ蝶も)、カナブンのような甲虫もしばらく見ていない。夏に、なぜかうちの外壁にしがみついて鳴いているアブラゼミの声に悩まされることも減った。

続きを読む

【ボキャビル】quid pro quo, 前置詞+関係代名詞, 報道記事の見出しのルール(米トランプ大統領のウクライナ疑惑)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。そういえば2020年11月の大統領選のときに日本語圏で流れたデタラメやデマの中には、報道記事の見出しのルールを知らないためにまともに読めていないことが発端と思われるデタラメもあった。しゃにむに英語情報を得ようとしたところで、基本ができていなければ何にもならない。重要なのは、まずは基本である。

-----------------

今回の実例は、米ドナルド・トランプ大統領の弾劾の是非に関する公聴会が始まる前の報道記事から。

日本語圏では10月の災害に続き、11月は大学入試やら「桜を見る会」やらの日本の国内ニュースがたいへんなことになっているので扱いが相対的に小さいのではないかと思うが、英語圏ではウクライナ疑惑とトランプ弾劾の行方が連日トップニュースの一角を占めている。これは米国のメディアだけでなく英国のメディアでも同じだ。(ただしもちろん、英国のメディアの最大の関心は、自国のニュース――総選挙や水害――に向けられている。)

私は個人的にはアメリカの政治にはあまり興味がない。同時期に英国の総選挙のニュースが進行しているので、そちらを見るだけで手いっぱいで、上院を共和党が押さえている以上は結論がわかりきっているトランプ弾劾については見出しくらいしか見ていないから、最新の状況は実はよくわからない(ただ、こういうことになった理由の大枠は押さえているつもりだし、結論はわかりきっていても、こういういわば「ドラマ」を展開することを民主党が選んだことの意義はあるということも理解しているつもりだ)。

何が起きているのかは、パトリック・ハーランさんがわかりやすく解説してくれている記事があるので、そちらをご覧いただければと思う。

www.newsweekjapan.jp

 

さて、というわけで今回の記事。弾劾のあれこれが今のように動き出す前、先週の報道記事で、この見出しが目を引いた。

www.theguardian.com

続きを読む

oddという単語をスムーズに訳せますか(左右バラバラの靴下で、いじめに反対する意思表示)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。ここで取り上げている単語は、英語の単語の「意味」とは何なのかについて、考えるきっかけになる単語だと思う。

-----------------

今回の実例はTwitterから。

11月12日、Twitterの画面を見てみたら、UKで#OddSocksDayというハッシュタグがTrendsに入っていた。

"odd" という単語は、日常で頻出の単語だが意味範囲が広く、なおかつ日本語ではぴったり対応する語がないので、日本語を母語として英語を学んで身に着ける私たちにとっては非常にやりづらい語だ。だがこのハッシュタグでの "Odd socks" という使い方は、具体例としてとてもよい。私もoddという単語を最初に知ったときに、この例で習いたかった……と思うくらいによい例である。

早速実例を見てみよう。 "Odd socks" とはこういう状態のことだ。

 

つまり、 "odd socks" とは「片方ずつ違っている靴下」のこと*1

これでoddという語は、「対のものが、対になっていない状態」、つまり「片方(ずつ)しかない状態」を言う、ということがおわかりになるだろう。

だがoddという語について、この《意味》だけを覚えていても、受験でも実用英語でも、たぶんほとんど役に立たない。

ここで辞書を見てみよう。

*1:日本語でも「片方ずつ違っている」など回りくどく言わずに一言で済ませられる表現もあるのだが、現代の感覚では、残念ながらあまり使いたくないような表現である

続きを読む

同格, continue to do ~, 不定詞の受動態, 分詞構文,【ボキャビル】pseudo-, on the other hand (クロアチアにおける過去の美化という問題)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。かなり重たい内容だが、英語は淡々としている。丁寧に読んでいこう。

-----------------

今回は前回の続きで、クロアチアでの「クリスタルナハト(水晶の夜)」記念行事でのスピーチから。

前回簡単に述べたが、クロアチア第二次世界大戦時は「クロアチア独立国」(Nezavisna Država Hrvatska: NDH) として枢軸側(ドイツやイタリアの側)にいた(ただし現在ではNDHは正当な政権とは見なされていない)。NDHではナチス・ドイツと同様に人種法が制定され、前回の前置き部分で言及したヤセノヴァッツ強制収容所で行われたようなユダヤ人やロマなどに対する迫害は「合法的」なものだった。

このNDHを作ったのが、クロアチア民族主義の集団「ウスタシャ」で、第二次大戦前は当時のユーゴスラヴィア王国内で暴力的な独立運動を行っていた。NDHはその独立運動が結実したものというのが彼らの見方で、現代では組織としてはウスタシャは存在しないが、クロアチアの極端な民族主義は消えたわけではなく*1、外部の者たちが批判的にクロアチアのウルトラ・ナショナリズムを「ウスタシャ」と呼ぶことがある。

今回見る部分には、これらの単語が出てくるので、最初に軽く解説しておいた。では、記事を見ていこう。

*1:チトーの時代には消えたように見えてはいたのかもしれない。

続きを読む

天候のit, 感覚動詞+O+現在分詞, 疑問詞+to不定詞, if節(名詞節)など(クリスマスをテーマに、子供が書いた短編小説)

今回の実例は、子供の英語から。

BBC北アイルランドが、5歳から16歳の子供を対象に、「記憶に残る(記憶に残したい)クリスマス」のテーマで、2分で語り終える物語を募集した。

www.bbc.co.uk

5歳から9歳、10歳から13歳、14歳から16歳の3部門ごとに優秀作品、最優秀作品が選考され、クリスマス前後の数日間で発表された。一番上の年齢層の最優秀作品は、戦場のPTSDをテーマにしており、とても「子供」の書いたものとは思えない質である。私、自分にこのクオリティの英文が書けそうな気がしない。(以下、BBC Northern IrelandのTwitterアカウントがフィードしている映像には、全編英語字幕がついているので、ぜひ映像を再生して見てみていただきたい。)

真ん中の年齢層は、日本でいうと小学校高学年だが、最優秀作品に選ばれたのは、まだまだ子供らしい想像力がチャーミングな小品である。

そして、展開が早くてうなってしまった、一番下の年齢層――小学校低学年にあたる年齢層――の最優秀作品。

タイトルは、 'Not a Bad Christmas' のタイポ(タイプのミス)ではない。これが何のことかは、 英語圏で育った人には説明するまでもないのだろうが、日本語を母語として育ち、英語にはかなり大きくなってから外国語として接しているだけだと、お話を見てみるまでは何のことかわからないかもしれない。見ればわかるが、見たところで、それは日本の環境、日本の文化ではさほどなじみがあるものではない。なんというか、ほとんど無害な形で「文化の差(違い)」を知らしめてくれるというか……。

今回の実例はこの、アーロン・スミス君というお子さんの書いた作品。5歳なのか9歳なのかはわからないが、いずれにしても小さな子供で、その小さな子供がこのくらいの英語を使えるし実際に使うということだけでも、よい「実例」として参照されよう。

続きを読む

長い文, 時制の一致, it is ~ to do --, 等位接続詞and, 挿入, while (第二次大戦とクロアチアの歴史認識問題)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。ここで見ているような息の長い文を途中で投げ出さずに読む練習は、なるべくたくさんしておいた方がよい。でないとドナルド・トランプの非論理的な英語がすばらしいと思ってしまうことになりかねないので。

-----------------

今回の実例は、前回見た記事でも言及されていた「クリスタルナハト(水晶の夜)」に関連した記事から。

「クリスタル(水晶)ナハト(夜)」は1938年11月9日から10日にかけて、ドイツ各地で発生した反ユダヤ暴動のこと。割られたガラスが夜の月明かりの中できらきらときらめいてまるで水晶のようではないかとヨーゼフ・ゲッベルスが思ったことで、このような名称がついているが、その内容は凄惨で、人が住んでいる住宅やシナゴーグユダヤ教の礼拝施設)に対する焼き討ちや建造物の破壊がなどが行われ、少なくとも91人のユダヤ人が殺された。のちのホロコーストにつながっていく重大な事件である。詳細は下記書籍やウィキペディアなどをご参照いただきたい。

水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害

水晶の夜―ナチ第三帝国におけるユダヤ人迫害

 

 

2019年11月10日は、「ベルリンの壁」の崩壊(1989年)から30年という記念日だったが、同時に「クリスタルナハト」から81年の日でもあった。ドイツでは近年、極右勢力が政治的に伸長してきているが、それだけでなく、1か月前の2019年10月9日には、東部の都市ハレでシナゴーグに対する銃撃テロが行われている。この日はユダヤ教の非常に重要なお祭りの日(ヨム・キプール)で、シナゴーグの中にはものすごくたくさんの人がいたそうだが、幸いなことに扉が閉まっていたため銃撃犯が建物内に入れず、大量の犠牲者を出すことはなかった(それでも2人が殺されている)。

そういうことが起きている中で、ドイツの首相も大統領も、「ベルリンの壁」の崩壊30周年という場で、「ベルリンの壁」以前の自国の歴史――ナチス・ドイツ――への言及も欠かさなかった(関東大震災のときの朝鮮人虐殺を無視するどこぞの都知事とは大違いである)。81年前の「クリスタルナハト」も1か月前のシナゴーグ襲撃も、晴れやかな場である「壁」崩壊30周年の式典でしっかり言及されていた。

 

一方、ドイツ国外でもクリスタルナハトの記念行事が行われていた。今回見るのはクロアチアでの行事を伝える現地英語メディアの記事である。

クロアチア第二次世界大戦時は、当初はユーゴスラヴィア王国内のクロアチア自治州であったが、1941年に民族主義者(反セルビア勢力)が蜂起し、「クロアチア独立国(NDH)」となった。NDHはナチス・ドイツとイタリアの傀儡国家で、領域内のセルビア人やユダヤ人、定住生活を送らないロマの人々を厳しく迫害した。特に内陸部に設けられたヤセノヴァッツ強制収容所では、これら迫害対象となった民族の人々や、クロアチアの政権批判者など合わせて約10万人が殺害されている。詳細は下記英語版ウィキペディアを参照(記事を読み進めていくとかなりショッキングな写真が表示されるのでご注意を)。

en.wikipedia.org

 

という基礎知識を踏まえたところで、記事はこちら: 

 

続きを読む

too ~ to do ..., so ~ that ...(ベルリンの壁崩壊から30年)【再掲】

このエントリは、2019年11月にアップしたものの再掲である。文法事項としては中学校で習う範囲のことだが、だからといって「簡単」というわけではない。

-----------------

今回の実例は、「受験英語」経験者にはとても懐かしいであろう定番の「書き換え」ネタが、BBC Newsでそのまんま出てきている例。

2019年11月10日は、「ベルリンの壁」の崩壊から30年の記念日で、ベルリンでは記念式典が行われた。

この日のことについては、Twitterであれこれフィードした断片を下記にまとめてあるので、そちらを参照されたい。

threadreaderapp.com

 

「壁崩壊から30年」の式典については、もちろん、各国際メディアが報じている。今回実例として見るのは、BBC Newsの報道である。

 

 

続きを読む
当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。