Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】副詞節のif節と名詞節のif節, 過去分詞の分詞構文など (「イングランドの方針」が英国全体のものとして扱われるということについて)

このエントリは、2021年7月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回も、前回に引き続き変則的に。前回は、英国のボリス・ジョンソン首相が公にする方針の中には、英国全体ではなくイングランドにしか関わらないものもあり、保健行政もそのひとつであるということを説明したが、イングランドウェールズスコットランド北アイルランドは別々であるなどということは、英国を一歩出れば「で?」だろう。英国(というか連合王国)がひとつのまとまりとして外交に当たり、ウェールズ人もスコットランド人もイングランド人も*1同じ連合王国のパスポートを持って世界を飛び回るのだから、当たり前といえば当たり前だ。例えばニュージーランド政府が、英ジョンソン首相の発言を受けて示した反応は、「イングランドの方針はスコットランド等には適用されない」ということにではなく「英国式のウィズコロナ政策」に注目したものだが、ウイルスが入ってくることを防がねばならないという立場では当然の反応だろう。

www.theguardian.com

Director-general of health, Ashley Bloomfield, said on Wednesday that New Zealand would be “watching closely” and could place the UK on a no-fly list if cases grew out of control.

“If they do get an increase in cases, we will be keeping a close eye on what that means for the risk of people traveling from the UK and that will inform our decisions here,” he said.

Asked if that could result in suspending flights, as New Zealand did with India in April, he said: “We actually review the risk status of all countries each week, so clearly if there is an increase in the number of cases that’s one of the things we’ll be watching very closely.”

(引用部分、《条件》 を表す副詞節のif節(直説法であって仮定法ではない)と、《名詞節のif節》に注意されたい。引用部分の最後のパラグラフの書き出しは《過去分詞の分詞構文》だ。)

だが、イングランドの方針が、イングランド以外の地域の方針とは異なるときに、外国ではイングランドの方針が英国全体の方針とみなされること*2は、イングランド以外の地域で、控えめに言って「反発を引き起こす」ことになる。そういうのがどこに行きつき得るかは、このブログで扱える範囲を超えているのだが、なんというか、こういうときに明らかになる「イングランド中心主義」みたいなのは日本語圏にも横溢していて、「英国」を扱った報道や新書のような一般的な著作では「英国といえばイングランドのこと」というのがデフォである。20年くらい前までなら「まあそんなもんじゃない?」と言えたかもしれないが、スコットランドウェールズの「自治議会」が創設されてからもう20年以上経過しているのに、基礎的な認識がいまだに20年以上前のままアップデートされていないのだとしたら、そろそろアップデートしておきましょうよというよりなかろう。

今回は、「イングランドスコットランドetcの方針は別ということだが、ではどうすればそれが確認できるのか」ということを書きたかったのだが、あまりに蒸し暑くて体調が最悪なのでここまで。中途半端ですみません。

 

 

*1:北アイルランドは、アイルランドのパスポートを持つという選択もありうるのでこれまた別。ややこしいでしょ。

*2:同様の「実は関係ないのにひとからげ」でイングランド等のあおりを食うということは、BSE発生時にも起きた。「英国」でくくったから、別の島にあってBSEが発生していなかったころの北アイルランドも牛肉などが輸出できなくなった。

【再掲】新型コロナウイルス対策は「イングランド」etcの話であり、厳密には「英国」の話ではない、という説明。

このエントリは、2021年7月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回は実例ではなく、「英語で報道記事を読む」以前の基本的な用語解説みたいなものを。「用語解説」っていうか「常識」かも。

日本時間で昨日5日、月曜日の晩に、英国から「ボリス・ジョンソン首相が『COVIDとの共生』に舵を切るべきときだと宣言へ」というニュース速報が流れてきた。

これは先日、マット・ハンコック保健大臣(当時)が「(不倫相手と抱擁しあうことによって)ソーシャル・ディスタンシングのルールを破っていた」という理由で辞任した(というか、その辞任につながった決定的瞬間の証拠映像の出方*1からして、ジョンソンに切られたわけだが)ときには既に予想されていたことだ。ジョンソンはBrexitでも過激派になびいたのだが、COVIDでも行動制限解除過激派になびくのである。自分は感染して重症化しても手厚い医療を受けて生還できたしね。

ともあれ、上記速報がto不定詞を使って「~へ」という未来のこととして伝えていたことは、日本時間の今朝がたには現実となり、それが日本語圏でも配信された。キャプチャ等は取っていないのだが(あとでキャッシュを見返してみる)、Yahoo! Japanのトップページに配信されていたAFP BB(AFPの日本語翻訳)では「イングランド規制撤廃」というふうに正確な見出しになっていた。一方で、Twitterで見かけた共同通信の見出しが、ダメだった。

これは、新型コロナウイルスが流行り始めたころ(WHOが「パンデミック」を宣言する前)にわりとよく見られたような「誤報」にもならない程度のミスで、英国の政治制度への無理解が原因の用語法の間違いである。

というか、その「英国の政治制度」がとんでもなくややこしいのだが。

今回はその話を書く。これはもうちょっと真面目に書いて電子書籍にでもまとめようと思っているのだが、真面目に書くには「なぜこういうふうになっていて、ああいうふうになっていないのか」ということも検討しなければならないと思い、それが実はものすごく大変で、 全然進めない。

この「こういうふう」を現実の英国(つまりイングランドウェールズスコットランド北アイルランド)、「ああいうふう」を、日本語でもそこそこ広く語られている米国やオーストラリアのような「連邦制」と読んでいただけると、言いたいことは伝わるかなと思う。つまり「そんなんなら連邦制にすりゃいいのに、なぜ連邦制にしないのか」という問題で、これ考え出すと、詰むんだよ。

ともあれ、本題。今回のジョンソンの宣言のことを、ガーディアンは非常にわかりやすく見出しで「イングランドの」と書いている。 

f:id:nofrills:20210706181824p:plain

https://www.theguardian.com/world/2021/jul/05/boris-johnson-says-most-covid-rules-likely-to-end-in-england-on-19-july

とはいえ、この見出しの "England's" はあとから書き加えられたものである。はてなブログに内蔵されている記事埋め込み機能を使って表示される見出しでも、「イングランドの」は出てこない。

www.theguardian.com

英国の全国紙での報道がこうなのだし、そもそもジョンソンは「英国の」首相なのだから、日本の報道機関がこの点について「英国」と書いてしまっても、しょうがないのかもしれない。少なくともIRAのやっていたことについて「北アイルランドの独立闘争」と書くよりは軽度の間違いだ。だが、実際のところ、この場合、報道機関のやらかしたことについて「これは、しょうがないよね」と言ってしまうのはかなり甘い。英国でのあのややこしい制度については、ウィキペディア英語版だけでもかなりの部分知ることができるのだ。

https://en.wikipedia.org/wiki/Devolution_in_the_United_Kingdom

以下、参照用ソースを貼り付けるため以外には何も見ないでだーっと書くから、細部が間違っているかもしれない。何か気づいた方ははてブなりTwitterなりでご指摘いただければと思う。

*1:「ホテルで密会しているのをパパラッチされた」とかそういうことではなく、職場に隠しカメラが仕掛けられていて、その映像がジョンソン政権とのつながりが極めて強いメディアで大々的にばらまかれたのである。ドラマHouse of Cards以上にドラマのようだ。

続きを読む

【再掲】A if Bの構造, 副詞節内での主語とbe動詞の省略, など (練習中の女性アスリートへの男性による妨害)

このエントリは、2021年7月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例はTwitterから。今日は事項解説なしで文法だけにするから短いよ。

昨年11月、オバマ元大統領の回想録の記述に含まれていた "A if B" という構文について何度かエントリを立てたところ、当ブログとしては例外的としかいいようがないくらいに広く読んでいただくことができた。

どういう内容だったかを簡単に言えば、 "A, even if B" (「たとえBであっても、Aである」)という構文からevenが落ちることがよくあり、さらにはコンマすらも落ちることがあって、当該のオバマ回想録の一節にある "pleasant if awkward" はその構文である、という解説だった。直訳に近い形で意味を示すと、「少々ぎこちなさはあれども、気持ちのよい人物であった」となる。

この構文では、"(even) if B" の方がつけたしで、メインは "A" である。下記はカフェのレビューの記述から: 

  Definitely not worth a sit down visit but the merch shop was alright even if expensive*1

  (わざわざお茶を飲みに行くようなカフェとは言えないです。ただグッズ売り場は、高いけれど、けっこうよかったです)

この記述は、「高い」ということを主要な情報として伝える記述ではなく、「けっこうよい」ということを伝える記述である。

この "形容詞A, even if 形容詞B" の構文は、even ifの直後に《主語+be動詞》が省略されている。上のカフェのレビューの例文で言えば次のようになる。

  ... the merch shop was alright even if [it was] expensive

さらにまた、この構文からは、上述したように "even" が落ちることがある。つまり次のようになることもある。

  ... the merch shop was alright if expensive

どの形であれ、同じ意味だと判断できるようにしておかないと、英文を書いてある通りに読むということはできないだろう。

というわけで今回の実例: 

 

続きを読む

【再掲】形容詞+to不定詞, 前置詞+関係代名詞, let alone, など (ドナルド・ラムズフェルドが法の裁きを受けることなく安らかに死んだ)

このエントリは、2021年7月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例は、ある著名な人物の訃報を受けて書かれた激烈な文章から。通例、著名人の訃報を受けて書かれるのは「オビチュアリー (obituary)」で、当ブログでもいくつかオビチュアリーは読んでいるが、今回の文章は書き手も掲載媒体もそのようには位置付けておらず、「政治面」の「オピニオン」になっているし、実際に内容もオビチュアリーとはかけ離れているので、当ブログでもオビチュアリーという扱いはしないでおく。

というか、私自身、この人物には、生きていようと死んでいようと一切の敬意めいたものは示したくない。「おくたばりあそばした」という日本語表現から敬意表現を抜き去った語で語るべき人物だと思っている。私は日本語話者だからそういうふうに思うのだが、英語圏でも同じような反応が多く、特に米国で、この人物の訃報に際しては、定型文の「お悔み」でさえ、私に見える範囲には出ていなかった(まあ、米共和党界隈をフォローしていれば見える世界が違うのかもしれないが)。その点は、元米軍人(イラク戦争従軍)でジャーナリストのアンドルー・エクサムさんの下記の言葉が端的に言い表していると思う。

「自分の中のプレスビテリアン(長老派教会の信徒)は、側近やご家族の方々に喪失を受け止めるだけの時間を持っていただきたいと思っているが、イラク戦争にいった退役軍人としては、そういった人々のツイートやメッセージを眺めては、さんさんと輝く太陽の下にうわーっと飛び出していきたい気持ちに駆られる。その両者のせめぎあいが自分の中で」というような意味の文面である。

エクサムさんは、誰のことを言っているのか、名前に言及することもなくそう書いているのだが、この日、イラク戦争に行った元軍人にこう書かせうる人物の死はひとつだけであった。

ドナルド・ラムズフェルドだ。

訃報を聞いた7月1日はいろんなことが思い出されてフラッシュバックやら不快感やらで苦しかったのだが、そういう中で「ですよねー」という思いに駆られながら一気に読んでしまったのが、スペンサー・アッカーマンの「オピニオン」記事だ。今回、実例として見るのはその記事。こちら: 

www.thedailybeast.com

続きを読む

learn from ~という表現は、「~という選択肢からどれかを習う」という意味ではなく、「~を通じて学ぶ」という意味である。

今回は、英語圏の英文に出てくる日本の学校英語(学習英文法)の実例ではなく、日本語圏で今話題になっている表現について。

ものすごく忙しいので、ソースとかは後でつけます(ソースをつける作業にかかる時間は、執筆時間と同じくらいです。書くのは早いので)。

「日本語圏で話題になっている」というのは、例の東京都が強行実施した中学3年生対象の自称*1「スピーキングテスト」、ESAT-Jの設問文に含まれていたため、ESAT-Jウォッチャーがこぞってツッコミを入れているのだが、そこにウォッチャー以外の人たちが現れてああだこうだという話をしているらしい。

ここで重要なのは、ESAT-Jウォッチャーの多くは学校の英語教諭だったり予備校や大学などの英語の講師だったり英語教材作成者だったりして、何らかの形で「その筋のプロ」である、ということだ。これらウォッチャーにとって、日本の「中学英語」とか「文科省認定教科書」とか「学習指導要領」とかいったものは、シェフにとっての鍋やまな板のようなものである。

で、それらのプロが「わかりきったこと」として話していることが、公開の場でそれを目にする非プロには、正直、通じていない。その通じていないところから発する素朴で正直な発言が、ご本人はそのつもりはないだろうがノイズとなって、その結果、全体的な議論を紛糾させるということは、トピックが何もESAT-Jでなくても、インターネットあるあるである。

今回はそこらへんを少しクリアにできればということで、私が知ってることを書く。ソースもつけないと検証可能性という点から不安なのだが、上述したようにそんな作業までやっていられないので、取り急ぎざっと書く。

なお、私個人はそのごちゃっとしたことになっているらしいネット上の、より正確にはTwitter上の議論を、あまりよく把握していない。年末で忙しいし、こないだイーロン・マスクにひどい目にあわされたのでTwitterはほとんど見ていないのだ。その点で何かこちらの不備・不足や失礼があるかもしれないが、ご海容願いたい。

議論になっている文は、12月18日(日)に実施されたESAT-Jの予備日試験の設問文に含まれていた下記の文である: 

At my school, we can choose to learn from many  foreign languages. 

https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/files/esat-j/221218_mondai.pdf

*1:問題を見たところ、一般的にいう「英語のスピーキング」の能力とは別なものを図っていると判断せざるを得ない。中学生が対象ということと、定型文の丸暗記などで対策されちゃわないようなまっとうな「スピーキング」の試験ということが、両立できていない。できていないっていうか、その両立は、たぶん無理だ。

続きを読む

howeverによる譲歩の構文, as such, 前置詞のcome, 助動詞+受動態, など(聖書の英国手話への翻訳プロジェクト)

今回の実例は、報道機関の特集記事より。

日本のメディアでもそうだが、報道機関が流す日々のニュースでは、毎日の大きな出来事の事実関係を伝えるもののほか、その時々の社会的な関心事や、「関心事」とまではなっていなくても多くの人々に共有されておいてよいような人々の暮らしにかかわることが取り上げられる。私の記憶にある限り*1、日本のニュース番組ではそういったことがらを取り上げるコーナーを「特集」と呼んでいると思う。

今回は、BBC Newsから、そういった「特集」の色が濃い記事を見てみよう。

クリスマス直前は、例年、ディケンズの『クリスマス・キャロル』が説いていたようなクリスマス・スピリットを感じさせる、人間社会の「ちょっといい話」が記事になるのだが、今回見る記事はおそらくその系統の記事である。

こちら: 

www.bbc.com

Sign languageは「手話」のこと。日本でも、今期のテレビドラマで耳の聞こえない人/聴覚を使わない人を主人公としたドラマがあったそうで、手話への関心は今、かなり高いかもしれない。

何語圏であれ、手話は、私たち聴者が使う言語とは大きく異なり、まったく別な言語といってよいものであることが多い。日本の手話も、日本語とは別の言語である「日本手話」と、日本語を口を動かして話しながらそれをなぞるようにして手を動かして単語を並べていく「日本語対応手話」の2つがある。

英語圏にも手話は何種類かあり、この記事で取り上げられているBritish Sign Languageは英国(UK)で広く使われている手話言語で、その歴史は15世紀までさかのぼれるおうだが、私たちが習ったり学んだり使ったりしている英語とは別の文法を持つ別の言語である。

記事は、このBSLを第一言語とし、英語を第二言語とするハンナ・ルイス師の取り組みを紹介するものである。ルイス師は聴覚を使わない人で、イングランド国教会(アングリカン)の聖職者であるイングランド国教会では女性も聖職者としてつとめることができる)。

記事は、導入部はイギリスで人気のTV番組の話題から入っているので、それを知らない私たちには読みづらいかもしれないが、「つかみ」は読者として想定している人にわかりやすいように書くものなので、何のことかわからなくても、そういうところで立ち止まらずに先へ先へと読んでいけばよい。

*1:2011年の「地デジ」への切り替えのときにテレビを捨ててしまったので、この10年以上はニュース番組を1本見るという習慣がないから、今は実際にどうなのかがわからない。

続きを読む

英語圏のパロディニュースに釣られない日本人になるための、たったひとつの冴えたやり方。

今回の実例は、「そんなのに吊られるなよ、日本語圏……」っていう実例。

今日の午後、鉄道情報などをチェックするかとYahoo! Japanを見てみたところ、トップページにある「リアルタイム検索」の欄に、「ドナルド・トランプ・ジュニア」という文字列があった。

昨日から今日にかけて、英語圏のニュースでは、ドナルド・トランプ(息子ではない方)と1月6日の暴動に関して大きな動きが報じられていたのでその絡みで何かあったのかなとも思ったが、よく見ると、下の行(一緒にTrendsしている言葉)に「イーロン・マスク」とか「CEO」とかがある。

マスクはTwitterのアンケート調査で、「TwitterのCEOは交替すべきだと思うか。このアンケートの結果にはおいらは従うよ」と問うたところ、優に過半数が「Yes」と答えるという事態に陥っていた。

なので、この語群を見て「マスクが退陣して後任にドナルド・トランプJr」という話になっているのだなということはすぐに判断できた。

問題は、そんな話は英語圏ではまったく見ていないということだった。

見れば疲れるのはわかりきっていたのでそっ閉じしようとも思ったのだが、ある意味義務感みたいなものを感じて、ソースなどを確認してみようと思った。

結論としては、「こんなのに釣られるなよ」としか言いようのないものだった。

続きを読む

本日休載

今日は下記のブログを書いていたので、こちらまで手が回りませんでした。あいすみません。

なお、上記ブログ(seesaa.net)は、なぜか、ツイートの埋め込みが機能しなくなっています(過去記事でもダメになっている)。あちこち見てみたのですが、原因がわかりません。1年以上放置していたので、その間に何か設定が変わったのかもしれません。変に触るのはあきらめて、ブログを根っこから作り変えたほうがよいと思うので(たぶん、骨組みが変更になっているのを私が適用しそこなっているんだと思う)、また時間が取れるときにやることにします。

別な翻訳作業のため、本日休載します。

本日は、下記の翻訳作業のため、ブログは休載します。9割がた終わっているのですが、まだ少し残っています。明日月曜日に完成させます。

togetter.com

英文法の実例を楽しみにしてくださっている方には、申し訳ありません。週末は過去記事の再掲なのですが、仕込んであった分が全部出払ってしまっていて、次の仕込みをするための時間が取れず、精神的な余力もありませんでした。悪いのは、イーロン・マスクの横暴です。

#TwitterPurge: イーロン・マスクのTwitterは、Mastodonに対して、またジャーナリストたちに対して、何をしているのか、2022年12月12日から16日にかけて起きたこと(の一部)

今回は、「英文法の実例」はお休み。このエントリは、2022年12月16日の夜に書き始め、翌17日になってもまだ書き終わらずにいる。

16日の午後のわりと遅い時間帯になって日本語圏にも話が入ってきたが(そして、詳細を確認していない人々が付け加える「個人の感想」によって、牧歌的と呼んでもいいくらいにのんびりした話であるかのような見せかけをまとって拡散しているようだが)、イーロン・マスクTwitterが本格的におかしな行動を見せ始めた。最も大きく注目されているのがMastodonについての「リンク禁止」みたいな扱いだが、問題はそれだけではない。そこから派生して、マスクがTwitterを支配するまでは到底考えられなかったようなことが起きている。しかもマスクは証拠も示さずに一方的な主張を断定的な言葉で展開し、つまり「ばればれの嘘」としか言いようのないものをついて自分の行動を正当化している。

日本語圏では、TwitterからMastodonへのリンクができなくなった発端は何かということが伝えられておらず、いきなり「リンク禁止」ということになったかのように伝えられているかもしれなくて、それゆえ「ソーシャルメディアのライバル対決!」みたいな呑気な話としてニヤニヤ笑いとともに受け止められている気配があるのだが、発端を見れば、決してそのような牧歌的な、ビジネスニュースのゴシップ欄的な事態ではないということがわかるだろう。

目次: 

  • 今週、事態が大きく動いた
    • Trust and Safety Councilがつぶされた
    • @ElonJetと、その運営者の個人アカウント、および彼が運営していた多くのアカウントが凍結された
    • Mastodonのアカウントが凍結された
    •  
    •  
    • 一連の事実を報じたジャーナリストたちのアカウントが凍結された
      • 私も凍結された
      • マスク、いつものごとく "People have spoken" とやりたかったが、思うような結果が出ず、「今の、ノーカンね」とやりだす(かっこわる)
    • その件でジャーナリストたちが話をしているSpaceに、突然マスクがあらわれて一方的に言いたいことを言って、いきなりSpaceをサービスごと停止した
    • TwitterマストドンのURLを含む投稿等に著しい制限が加えられるようになった(リンクできなくなった)

 

今週、事態が大きく動いた

マスクがTwitterを手中に収めて以来、従業員の大量解雇だとか、10年も前にTwitterから蹴り出された筋金入りの極右のアカウント復活だとかいった異変はずっと起きていたのだが、とりわけ顕著な動きを見せたのは今週のことだ。

Trust and Safety Councilがつぶされた

「今起きているのは、Twitterの脳死である」と銘打った、MIT(マサチューセッツ工科大)テクノロジー・レビューの15日付記事から: 

On Monday, December 12, Twitter dissolved its Trust and Safety Council, a wide-ranging group of global civil rights advocates, academics, and experts who have advised the company since 2016.

We’re witnessing the brain death of Twitter | MIT Technology Review

既に極右活動家などを呼び戻していたマスクのTwitterは、マスクが支配するようになるまでのTwitterを、グローバルな情報プラットフォームとして、できうる限り信頼できる情報の場、安全な場に保とうとしてきた機構を、突然ぶち壊した。Trust and Safety Councilでは、Twitter社の外部の人々(人権活動家や研究者のような知見のある人々)が手弁当で活動してきたが、いきなりマスクのTwitterから「これまでありがとうございました」というメールが送られてきたのだと、MITテクノロジー・レビューが参照しているWaPo記事は述べている。実際、マスクは先日、自身の思い通りのモデレーション機関(と称するもの)を立ち上げている。

ここ最近のTwitterでこういうことが起きていたことを把握していた人たちは、相当な危機感を抱いていただろうし、それゆえ、14日に @ElonJet のアカウントがサスペンド(凍結)されたときには、さらに危機感を強めただろう。

ただし日本語圏にはそういう人は少なかったようだ。この後のひどい展開(後述)についても「おおっ、Twitter vs Mastodonですか? ソーシャル対決が盛り上がってまいりました~」的なのんびりした反応が出てたくらいで、はなっから緊張感がない。

続きを読む

いろいろあって、16日は休載しました。

12月16日はいろいろあって、ブログが書けず、休載してしまいました。ごめんなさい。

どういうことがあったのかというとこういうことです。イーロン・マスクを批判するジャーナリストたちの一斉サスペンドで、私も対象になりました(なぜか知らんが)。詳細はリンク先でどうぞ。

https://ohai.social/@nofrills/109523635848361510

https://ohai.social/@nofrills/109523635848361510

全体的な背景は、17日付のエントリで扱っています。

hoarding-examples.hatenablog.jp

※このエントリは、17日の昼間に書いています。情報の時系列的な整理のため、書いて投稿したあと、投稿の日付を16日夜に設定してあります。

英語話者が思いつくままに挙げる、「どうしても気になる間違ったor微妙な英語」あれこれ(less/fewer以外)

今回の実例は、前回の続き。というか、前回見た「lessとfewerの混同」という、英語母語話者や英語を日常の生活言語として使っている人々の間で見られる文法的なよくある間違い (common errors) のひとつについての問いかけの投稿に対するリプライに寄せられている、less/fewer以外の「『文法警察』とそしられようが『上から目線 (pedant)』となじられようが、やっぱり気になる文法的なよくある間違い」についての雑談を集めておきたい。

念のために言っておくがこれは「日本人の英語の間違いをネイティブが上から目線で指摘していて差別的だ」と非難されるようなスレッドではない。英語母語話者をはじめ、英語を日常生活の言語として使っている人々(の中で言語的にちょっと敏感な人たち)の間での雑談である。てか、街にあふれるめちゃくちゃな英語もどきについて「めちゃくちゃだ」と指摘されるとキレてしまう日本の人たちは、「間違いを指摘される」ということについて、本当に英語で物を伝達する気があるのなら、もうちょっと前向きになったほうがいろいろと建設的だと思う*1

かつて英語学習関連の出版物で「ネーティブはそうは言わない」系の粗雑な量産本が、出版社の営業と編集者の考える「売れ線」としてハバをきかすようになる前は、「日本人(より正確には日本語話者、日本語母語話者)に共通する英語のミス」を分析し、よき指南を与えてくれる本がいろいろと出ていたのだが(私もそれらの本から非常に多くを与えられた)、最近、大型書店に並ぶものすごい量の英語学習本の背表紙を眺めても、そういう「ミスを指摘する」方向の本は目にしないと思う。

さて、本題に入ろう。前回見たMax Weissさんのツイートへのリプライから、less/fewer問題以外の「気になる言葉遣い」を指摘したツイートを見ていく。 誰もそんな話はしていないのについつい話したくなる、それがnerdというものだ、ということも示した好スレッドである。

※大学受験生向けではなく、いわゆる「上級者向け」の内容です。今回も当ブログの文字数上限を無視してまとめます。

*1:ウエメセだ、差別だ」じゃなくて「同じ指摘するんでももうちょっとやり方があるんじゃないですか」でしょ、という話。

続きを読む

今年の文法警察慰労会会場はこちらです。fewer/less問題。

今回は、文法をネタにした英語圏Twitterのやり取りを見てニヤニヤする会。またの名を、文法警察の慰労会です。文法警察が嫌いな方はここでお帰りください。

続きを読む

#to不定詞が主語の文, to不定詞の意味上の主語(「to不定詞が主語になるときは形式主語のitを用いて、主語が長くなりすぎるのを防ぐ」ということについての実例いくつか)

今回の実例は、Twitterから。

Twitterを英語で使っていれば、流れてくるものを漫然と眺めているだけで「おお」と思う例に遭遇することがけっこうある。そう思ったものには、「#英語 #実例 」というハッシュタグをつけている。

その「#英語 #実例 」のハッシュタグの中で、さらに細分化というか具体化したタグをつけているのが「#to不定詞が主語の文」である。

一般的に、《to不定詞》を主語にする場合は、主語が長くなる(頭でっかちになる)ことを避けるため、《形式主語》(仮主語)のitを使う、と教わる。教わるだけでなく実際にそうである。下記の2つの形では、下の文の形を見ることの方が圧倒的に多い。

  To purchase a new game console is absolutely necessary. 

     主語が長い

  → It is absolutely necessary to purchase a new game console.

  (新しいゲーム機を買うことが、絶対的に必要なんだ)

だから自分で英文を書くときは、下の形のように形式主語のitを使った構文にしておけば、間違いがない。つまり、誤読されることもないし、(ほかのところでミスがなければ)英語が下手すぎて文意が取れないと批判されることもないだろう。

しかしながら、すでに書かれている英文を読むときは、上の形、つまりto不定詞の句をそのまま主語にしてある形に遭遇することも、ないわけではない。

したがって、「to不定詞が主語になる場合は、常に、形式主語のitを用いた構文を使う」と思い込んで決めつけていると*1、英文を正しく読めなくなることがある。

例えば下記の大坂なおみさんのツイートにある文に含まれるto不定詞句は、「同じことが何度も何度も起きているのを見るために」ではなく、「同じことが何度も何度も起きているのを見ることは」という意味である。

さて、これだけでも十分に主語が長くて頭でっかちなのだが、実際に英語が使われる場を見ていると、このto不定詞に《意味上の主語》がついているケースにも遭遇する。さっきのゲーム機の例文で言うと: 

  For Seb to purchase a new game console is absolutely necessary. 

  → It is absolutely necessary for Seb to purchase a new game console.

  (セブにとって、新しいゲーム機を買うことは、絶対的に必要なんだ)

こんなふうに、主語がますます長くなっている例もまあまあよくあるのだ。

となると、「to不定詞を主語にしたいときは、頭でっかちにしないように、to不定詞は後回しにして、文の最初は形式主語のitで始める」というよくある説明も、少々疑ってよいのかな、という気がしてくるだろう。

実際、本当に使われている英語の中で見る、形式主語を使わずにto不定詞のままで主語にした文は、形式主語を使った文と、《文意》は特に違わないかもしれないが、印象が異なる。例えば、「まずはitで始めて……」なんて落ち着いて頭の中で組み立てていられないのかな、というように思うこともある。

*1:そういうふうに決めつけていると、「文頭のto不定詞は例外なく副詞的用法なので、『~するために』と読んでおけば意味は取れる」といった雑でガサツで間違った言い切り解説に遭遇したときに、何の防御もなく取り込まれてしまうことになる。

続きを読む
当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。