Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

importantなどに続くthat節内に現れる動詞の原形(仮定法現在 ※「shouldの省略」とも説明される)

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今日の実例も、出典は昨日のと同じ。米トランプ大統領とロシアとのつながりに対する特別検察官による捜査に関する報道記事から、ウィリアム・バー氏の発言のなかに、注目すべき文法ポイントが含まれている。

ウィリアム・バー氏はジェフ・セッションズ氏が解任されたあと、次期司法長官に指名されている法律家で、1990年代に司法長官を務めた経験がある。つまり、法律のプロ中のプロと見なしてよい人物だ。

www.theguardian.com

 

f:id:nofrills:20190130165736j:plain

2019年1月15日、the Guardian

注目すべき文は2つある。どちらも同じ文法項目を含む。

 

まずは: 

I believe it is vitally important that the special counsel be allowed to complete his investigation,” Barr said in prepared remarks.

それから: 

Barr also said it was “very importantthat Congress and the public be informed of what Mueller investigated and concluded.

 

見てわかったと思うが、これらはimportantに続くthat節の中で、動詞が(現在形や過去形ではなく)原形のまま使われている実例だ。

これについて、参考書などでは「動詞の原形の直前にshouldが省略されている」と説明されることが多いが、実際にはこの動詞の原形そのものが《仮定法現在》であると考えたほうが、英文法というものを考える上ではよい。

ただし、ほとんどの受験生・英語ユーザーは英文法というものを考える立場にはならないだろうし、そうであるならばこの違いは過剰に気にする必要はない。

英文法というものを考える立場になりそうな人(言語学、英語学方面に進みたい人、教育や翻訳を志す人など)は、《仮定法現在》というものを認識しておいたほうがよいだろう。

 

閑話休題。これらの例文は、こういう場合に動詞の原形が用いられるということを知らないと、奇異に見えるかもしれない。つまり、

△ it is vitally important that the special counsel is[will be] allowed to complete his investigation

とするのが自然なように思われるかもしれない。

しかし実際には、そこで原形のbeが用いられる。

it is vitally important that the special counsel be allowed to complete his investigation

このようなことが起きるのは、このthat節が "it is important" に続いているからだ。

《It is ~ that ...》の形式主語の構文で、《~》のところにimportant, neccessary, crucial, essential, vital, properなど、「必要・重要・妥当」を表す形容詞が来ている場合に、このように、that節の中で動詞の(現在形や過去形、助動詞を伴った形ではなく)原形が用いられる。

また、「《It is ~ that ...》の形式主語の構文+これらの形容詞」の場合のほか、「提案・勧告・要求」などを表す動詞に後続するthat節においても、同様に、原形が用いられる。例えば: 

  He insisted that he stay

  (彼は留まると言って聞かなかった)

 

  The president demanded that James be fired. 

  (社長は、ジェイムズは解雇されるべきだと要求した)

 

これについて、江川泰一郎は『英文法解説』において次のように説明している。

先行する動詞・形容詞の意味から考えて、that節の内容が《事実》を述べるものではなく、話者の心の中で想定された事柄を表すからである。

(江川泰一郎『英文法解説』、p. 251)

 

英文法解説

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ここで実例に戻ると、最初の文は "vitally important" が用いられており(vitallyは「致命的なほどに」、つまり「非常に」のとても強い表現)、直訳すれば「『特別検察官が捜査を完了するのを許されることが、極めて重要であると私は信じています』と、バー氏はあらかじめ用意されていた発言*1で述べた」。

I believe it is vitally important that the special counsel be allowed to complete his investigation,” Barr said in prepared remarks.

 

それから2番目の文も "imporant" の文で、「バー氏はまた、議会と国民が、モラー特別検察官が捜査し結論した内容を知らされることが、『非常に重要』であるとも述べた」という意味になる。

Barr also said it was “very importantthat Congress and the public be informed of what Mueller investigated and concluded.

 

英米差について

ちなみにこの「動詞の原形」、つまり《仮定法現在》について、「イギリス英語ではshouldを用いることが多い*2」と説明されている参考書・文法書などが多いが、現在ではイギリス英語でも原形が使われることがほとんどだと私は感じている。

厳密に観測したわけではないが、ここ20年ほどの間に、インターネットの登場で、イギリスで書かれたものが紙に印刷されることなく直接アメリカでも読まれる、といったことが当たり前になるにつれ、「イギリス英語」にも変化が生じており、いくつかの報道機関の表記基準はあからさまに「アメリカ化」してきている。shouldをどう使うかというのは英米差が最もはっきり出る項目のひとつだと思われるが、こと《仮定法現在》に関しては「shouldのない形」が現代の英語で標準的な形だと考えておいて間違いはないだろう。

ただし、入試問題でも昔の文が出てくることはある。《仮定法現在》でshouldが入っている文に遭遇しても、慌てないように準備しておくことは重要だ。

 

 

英文法解説

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追記@投稿当日の午後9時半すぎ

ふと通知を見てみれば、本エントリ、かなり多くの方に見ていただけているようで、スターもたくさんいただき、ありがとうございます。

その際、脚注の不備に気付いたので、修正しておきました(2番目の脚注において、うっかりダブルクオートを使っていたため、表示がバグっていました。ダブルクオートの箇所をシングルクオートに改めました。はてなの脚注ってダブルクオート使えなかったんだっけ、「ダイアリー」書かなくなって何年もたつので忘れてた……)。

以上、失礼しました。

 

*1:「原稿を読み上げた」ということ。

*2:つまり、'it is vitally important that the special counsel should be allowed to complete his investigation' という形になることがイギリス英語では多い、ということ。

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