Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

get + O + 過去分詞, 等位接続詞が作る構造がややイレギュラーなケース, 完了不定詞, など(2001年9月11日の米同時多発テロの首謀者の裁判はなぜまだ行われていないのか)

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今回は、前回の続きで、事件発生後20年を経て、内部事情を知る人、というより当時の捜査の当事者によって語られるようになった、2001年9月11日の所謂「米同時多発テロ事件」((以降「9-11」、英語では "Nine-eleven" と呼ばれる) の首謀者(計画立案者)ハリド・シェイク・モハメドを巡る、米国政府の対応(その多くは間違ったものだった)についての記事から。

文脈や、ハリド・シェイク・モハメドとは何者なのかということについては、前回のエントリを参照されたい。

ハリド・シェイク・モハメド(名前が長いので、以下、米捜査当局などが使っている頭文字略称*1を使って「KSM」と表記する)は、米当局によって90年代からずっとマークされていた。FBIではフランク・ペレグリノという特別捜査官が担当だった。そのペレグリノ氏がFBIを退職した今、ようやく語ることができるようになった、という文脈がある。

記事はこちら、英BBCから: 

www.bbc.com

FBIに勤務していたペレグリノ氏は、KSMの甥が関与した1993年のニューヨーク世界貿易センタービル(以下「WTC」)爆破事件の捜査官となり、以降、KSMを追うことになる。KSMという存在の重大性に当局が気づいたのは、1995年に太平洋上を飛行する旅客機をいくつも爆破しょうという計画が発覚したときで、ペレグリノ氏率いる捜査チームは、彼を追って中東に入る。カタールにいるKSMを逮捕すべく、一行はまずオマーンに入り、準備はすべて整っていたのだが、なぜか現地の米国の外交官がFBIに抵抗する。ペレグリノ氏は、カタールに赴いて、米大使らに旅客機爆破計画についてKSMには米国の起訴状も出ていると説明したのだが、大使らは首を縦に振らなかったという。「カタールで余計なトラブルを引き起こしてくれるなということだったのだろう」と、ペレグリノ氏は今、回想している。

このときは最終的に、駐カタール米大使のところに、カタールの当局者から「KSMは所在不明となった」という連絡が入り、ペレグリノ氏はKSMを取り逃がしてしまったことを悟る。

このようなことがあったが、当時、KSMは米当局にとって優先順位が高いわけではなかった――ということが書かれているあたりから。

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https://www.bbc.com/news/world-us-canada-58393231

キャプチャ画像の最初のパラグラフから: 

Pellegrino could not even get him listed on America's Top Ten Most Wanted.

太字にした部分は《get + O + 過去分詞》。「Oを~された状態にする」つまり「Oを~させる〔~してもらう〕」の意味だ。

下線で示した "could" は、仮定法由来の表現ではなく、単なるcanの過去形(時制の一致)で「~できなかった」。

"even" は《強意》で、特に否定語と一緒に使われて「~することさえ(しない、できない)」の意味。

"America's Top Ten Most Wanted" は、全部大文字で始まっていることからわかるように固有名詞(実際にはその俗称)で、「米国の主要手配者10人のリスト」という意味。日本語では確か「米国の最重要手配者リスト」といったように呼ばれているはずだ。

文意は「ペレグリノ氏は、KSMを、『主要手配者10人のリスト』に入れることさえできなかった」。

 

その次のパラグラフ: 

Mohammed seems to have been tipped off about the US interest in him and fled Qatar, ending up in Afghanistan.  

意外と読みにくいのではないかと思う。まず、《等位接続詞》andの作る構造を把握してしまおう。

Mohammed seems to have been tipped off about the US interest in him and fled Qatar, ending up in Afghanistan.  

andの後が "fled" と、動詞の過去形だから、その前にある動詞の過去形と接続されている……と考えるのが常道だが、この文、動詞の過去形はここにしかなくて、「はて?」となるだろう。ややイレギュラーなケースだ。

"tipped" が動詞の過去形に見えるかもしれないが、これはbeenと一緒に使われているということだけでも、過去形ではなく過去分詞だと判断できるだろう。

ではこれはどういうことなのかというと: 

  Mohammed was tipped off... and fled Qatar

  (モハメドはタレコミを受け、カタールから逃れた)

という文が: 

  Mohammed seems to have been tipped off... and fled Qatar

  (モハメドはタレコミを受けたようで、カタールから逃れた)

となっているのだ。wasと断定せずに(なぜならば断定できないので)、wasの表す内容(be動詞の過去形)と「~と考えられる」という表現を合わせて、seems to have beenとしているのである。

《seem to do ~》は「~している〔する〕ようである」で、これの to do ~の部分を《完了不定詞》にして《seem to have done ~》とすると「~していた〔した〕ようである」の意味になる(基本的に、seemの部分が現在、完了不定詞の部分が過去を表す)。

  The suspect seems to live in the mountains. 

  (容疑者は山岳地帯に暮らしているようである)

  The suspect seems to have been living in the mountains. 

  (容疑者は山岳地帯に暮らしていたようである)

つまり文意は、「KSMは米国が彼に関心を抱いていることについてタレコミを受けたようで、カタールを脱出し、最終的にアフガニスタンに身を寄せた」。"ending up in Afghanistan" の部分は《分詞構文》で、《end up in +場所》は「最終的に~に行きつく」の意味。

 

その次のパラグラフ: 

Over the next few years KSM's name kept cropping up, often in phone books of terror suspects arrested across the world, making clear he was well connected. It was during these years that he went to Bin Laden with the idea of training pilots to fly planes into buildings inside the US.  

もう文字数が上限に迫りつつあるので端折っていくが、下線で示した《keep -ing》は「~し続ける」、"cropping up" はちょっと珍しく感じられると思うが、口語表現で「現れる、出てくる」の意味(cropは「作物、収穫物」の意味では誰でも知っている単語だが、その意味以外では目にすることが少ないので、それ以外に意味があると思わずに過ごしてしまいがちだから、注意が必要な語である)。

太字で示した部分は、またもや《分詞構文》。"well connected" は「よくつながっている」と直訳されるが、要するに「顔が広い」で、この文は「続く数年の間、KSMの名前は、世界各地で逮捕されたテロ容疑者の電話帳の中などでよく目にされるようになったが、これにより彼の顔の広さが改めてはっきり示された」みたいな意味。

そしてその次の文は、青字で示した部分で《強調構文》(分裂文)の形を作っている。

It was during these years that he went to Bin Laden with the idea of training pilots to fly planes into buildings inside the US.  

これはよい英文和訳の練習台になるだろう。本エントリの少し下の方に解答例を書いておくので、各自考えてみていただきたい。

 

そしてキャプチャ部分の最後のパラグラフ。

And then 9/11 happened. Pellegrino's suspicions of KSM's role would be proven right when a key al-Qaeda figure in custody identified him. "Everybody realised it was Frank's guy that did it," Pellegrino recalls. "When we found out he was the guy, there was nobody more miserable than me."

太字にした部分もやはり《強調構文》(分裂文)である。下線部は《no + 比較級》の形で、意味的には最上級の内容を表す。

と、こういう次第で、1990年代から爆弾魔を追っていたFBI捜査官は、彼をもう少しのところで取り逃がしてしまい、21世紀の最初の年に、米国の中枢に対するあのど派手な攻撃を行わせてしまったのである。そのことについて「自分ほどみじめな思いをしている人はいなかった」と、既に退職した捜査官は語っている。

 

※ここまでで4060字

 

【英文和訳の解答例】

It was during these years that he went to Bin Laden with the idea of training pilots to fly planes into buildings inside the US.  

→ 彼が、米国内の建物に飛行機を突っ込ませるようパイロットを訓練するというアイディアを持ってビンラディンのもとに赴いたのは、この数年の間のことだった。

 

it was Frank's guy that did it

→ それをやったのは、フランクが追っていた人物だ(った)

※ "Frank's guy" のguyの用法については、前回のエントリを参照。

 

 

 

*1:同様に、Osama Bin Ladenは「OBL」と記されるが、あくまでも捜査当局などの用語であり、報道機関ではめったに使われないし、使われるとしても引用符の中だ。

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