Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「Brexitによる不安」を一言で言うと……(ファッション業界とBrexit)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。ここで見ているような造語は、当然、辞書には載っていない。そういう語の意味を取るにあたっては、基本的な語彙力が重要になる。大学受験の問題でも造語が入った文が出されることがあるかもしれないが、たいていは、文脈から意味がわかるからパニクることはない。重要なのは基本的な語彙力である。

※PCの不調などのため新規エントリが書けない状況です。しばらく過去記事の再掲とさせていただきます。ご了承ください。

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今回の実例は、華やかなファッション業界とBrexitの関係をわかりやすく伝える記事から。

というか今回見る「実例」は見出しだけ。

毎年9月半ばになると、「ロンドン・ファッション・ウィーク」が始まり、有名ブランドの多くがファッションショーで新作や新たなコンセプトを披露する。デザイナーもモデルもファッション関係の報道機関も、ヘア・メイク・アーティストや照明デザイナーといったショーを支える人たちも、大勢がロンドンに集まる。普段ならばそういったイベントのアフターパーティーなどは華やかな社交の場となるのだが、今は、そういった場でもBrexitが話題の中心だという。

ファッション産業は、とことん「モノ」の産業だ。どんなに情報化が進んでも布や糸は情報にはならない。物体として存在しない限り、役目を果たせない。だからぱっと見のイメージ以上に深く、国際情勢や世界経済と関連している。世界史などでも「生糸の高騰でこのような影響が」とか「綿花の不作でこのような影響が」といった話が出てくると思うが、21世紀の現在においても、布(織物)が主役のファッション産業では、モノが動かせなくなったらガッツリ影響が出る。

記事は、そのようなことを前提としておけば、あとは取材に応じたデザイナーなどファッション業界の人たちの具体的な意見の説明なので、わりと簡単に読めるだろう(ただし単語力はかなり要求される)。

というわけで記事はこちら: 

www.bbc.com

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so ~ that ... 構文, 接続詞unless (英国の研究者ヴィザ事情)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。so ~ that ...も、unless ~も、頻出の構文で、なおかつ「これが読めなきゃ英文など読めるようにならない」というくらい基本的なもの。知識の定着に不安がなくなるまで繰り返して見ておこう。

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今回の実例は、前回見たのと同じ記事から。

記事で報じられていることの背景などについては、前回のエントリの長々しい前置きを参照。今回はサクサクと本題だけ。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

……と本題に入る前に、さっきたまたま知ったおすすめの電子書籍のセールについて。セール期間はhontoでは今日(9月19日)までで、KoboKindleでも同じだと思う。

 

 では、以下、本題……。

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先行詞がcaseの場合の関係副詞はwhere, have + O + 過去分詞, など (英国の研究者ヴィザ事情)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。"case(s) where ~" は覚えておけば使う場面が多くなる表現。頭に入れてしまおう。

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今回の実例は、英国の入管制度の一面についての切羽詰まっていすぎる記事から。

英国は入国管理(イミグレ)はとても厳しい。空港のイミグレーションで係官から「これから私はあなたを入国させないことを前提として質問させていただきますので、あなたは私が『その心配はない』と納得できるような証拠を示してください」的な態度でお・も・て・な・しされた経験がある人はとても多いと思う。私ももちろんその経験があるのだが、人から聞いた話はもっとひどくて、中には(20年ほど前の話だが)英国で開催される学会に同じ飛行機で赴いた2人の日本人学者の1人はすんなり入国でき、1人は入国拒否となったという事例もある*1

というわけで、英国は、大学や専門学校(特に語学学校)には外国人学生を大勢受け入れているが、すでに教育を終えて研究者となっている外国人の扱いは、決して丁重ではないという話は、ずっと前から小耳にはさんではいた。学者は要するに脳みそがあればどこでも仕事ができるわけで、国に帰らずに英国で職を見つけて居つくつもりではないかと疑ってかかられるのだ、という話だった。

さて、現在EU離脱Brexit)という問題を抱えてしっちゃかめっちゃかになっている英国だが、Brexitの焦点のひとつが「外国からの流入人口(移民)」である。EUの一員である限りはEU加盟国からの人の流入は制限できないという問題――それは同時に、英国からEU各国への流出に障害がないということでもあるのだが――について、自身は外国で就職など絶対にしないという庶民層からの感情レベルでの反発(「近くの工場で働くために通りの奥に引っ越してきた人たちが、わけのわからない言語でしゃべっている」「ここはイギリスだ、英語をしゃべれ」的なもの)を、ポリティカル・クラス(政治の上層部、国政の政治家たち)が無視し、侮ってきたツケが爆発した、と言えるわけだが、そういった感情的反発はBrexitが議論の俎上に乗るようになる前からずっと可視化されていたわけで(ゴードン・ブラウンの "Bigoted woman" 発言と、その後のブラウンへの批判の嵐をご記憶だろうか。わからない方は英語圏でウェブ検索を)、ある意味でその不満のガス抜き調整弁として利用されてきたのが「外国からの留学生の数」だ。2010年、労働党ゴードン・ブラウンが選挙で負けて、保守党のデイヴィッド・キャメロンがLibDemsと連立を組んで新政権を発足させたあと、テリーザ・メイ内相のもとで積極的に進められたイミグレ政策のひとつが、「留学生を減らす」という政策だった。具体的にはインチキ学校(「ヴィザ取り学校」と呼ばれたような実体のない学校……今、日本で問題になりつつありますね)の認可を取り下げたり、ヴィザ発給要件を厳しくしたり、ポイント制を導入したりといったことが進められた。さらに、大学で留学した場合、学位を取得したあと英国に残れるのは4か月までとされ、要するに、卒業したら速やかに英国外に退去することが求められていた。

テリーザ・メイが内相時代に導入したその方針が、ここにきて転換された。「転換」といってもメイ以前の時代の制度に戻っただけだが、学位を取得したあと、2年間の残留が認められる。転換の理由は、メイの導入した政策のもとで英国の大学は外国人留学生を大量に失うことになった(つまり学費収入が減ってしまった)ことだと考えられる。詳しくは下記報道記事を参照。

www.theguardian.com

というわけで、英国の大学・大学院で学ぶ人にとっては、メイ内相に改悪された制度が元に戻ってよかったね、ということになりそうだが、既に研究者として英国で研究機関に所属していた外国人にとっては、メイの「敵対的環境(なるべく居づらい環境) hostile environment」の政策は、現状、変わっていない。今回実例として参照する記事は、その最新の事例として、スコットランドで大学に籍を置いてスコットランド音楽史を研究してきた米国人の学者が、所属をイングランドの大学に移そうとしたらヴィザ更新を拒否されたという一件の報告から始まり、何人かの学者の厳しい体験が記述されている。記事はこちら: 

 

www.theguardian.com

かなり分量のある記事だが、長文多読素材としてはよい文だと思う(ただし、気分がものすごくヘコむかもしれない)。実例として見る部分は、記事をずーっと読み進めていって、下の方から。

*1:もちろん、2人とも必要な書類は全部揃えてあったが、1人はその書類が真正なものと認められなかったといった事情があったようだ。こういうの、イミグレの係官の裁量&判断次第なので、打つ手がない。

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asが接続詞か前置詞か、be動詞の省略された分詞構文(形容詞だけの分詞構文)、複合語、【ボキャビル】be equivalent of ~など(知られざる温室効果ガスの増加と、環境負荷の少ない発電方法)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。asの識別はかなり大きなポイントになるにもかかわらず、はっきり認識できていない人が少なくない項目だから、しっかり見ておいてほしいと思う。

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今回の実例は、環境問題についてのBBCの大きな記事から。私も知らないことだったので記事を読んだときは「衝撃を受けた」といってよい状態だったが、あとから調べてみたら多少なりとも専門的な知見の場では周知の事実で、そのことは十分に共有されているようだった。問題は、それが一般人の知るところではなかった(だからBBCが 'secret' という単語を見出しに使った大きな記事を組んで、問題があるということを明らかにしている)ということだろう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

この記事が取り上げているのは、Sulphur hexafluorideという物質。略称はSF6で、化学物質の名称に慣れている人ならわかるだろうが、sulphurは「硫黄」、hexaは「6」で、fluorideは「フッ化物」。つまり「六フッ化硫黄」だ。

この物質名でウェブ検索すると、日本語でも多くの解説・説明がなされていることがわかる。ウィキペディアのような事典はもちろん、メーカーや研究機関など多くのサイトが検索結果に上がってくる*1。そのひとつが、東北大学大学院理学研究科大気海洋変動観測研究センター物質循環分野のサイトの解説である。ここからわかりやすい説明を少し長くなるが引用しておこう。

六フッ化硫黄(SF6)も温室効果をもつ気体のひとつです。六フッ化硫黄はもともと大気中にほとんど存在していませんでしたが、1960年代から工業的に生産されるようになり、それが大気に排出されることによって急激に大気中の濃度が増え続けています。主に、電力供給に関係した装置などで絶縁ガスとして利用されてきました。六フッ化硫黄を製造する際や、それを利用している装置が修理されたり廃棄されたりする際に、六フッ化硫黄が大気中に漏れ出ていると考えられています。現在の大気中の濃度はおよそ6ppt(pptは1兆分の1を表します)と極めて微量ですが、最近のわずか10年間の間におよそ2倍に増えたとされています。今後もこのような増加が続いた場合、地球温暖化に対する寄与が無視できないほど大きくなる可能性があります。……

六フッ化硫黄の最大の特徴は、大気中で安定であるということです。対流圏や成層圏の中では、化学反応によって消滅することはほとんどありませんし、海水に溶ける量もわずかです。このように安定であるということは、人間が大気に放出した六フッ化硫黄が、どこにも除去されずに、大気の流れに運ばれて広がってゆくということを意味しています。

 

http://caos.sakura.ne.jp/tgr/observation/sf6

 

caos.sakura.ne.jp

今回のBBC記事では、この物質のこのような用途や性質についてかなりたっぷりと説明した上で、現在それが「汚い秘密 dirty secret」と呼ばれている背景が解説されている。つまり、20世紀の終わりごろから「環境負荷の少ないクリーンな電力」として世界各地で風力発電・ソーラー発電などの導入が進められてきたが、発電の動力は「クリーン」でも、その電力を人々に届けるための送電設備は、二酸化炭素(CO2)とは比べ物にならないほど強力な温室効果を有するSF6を使っている。

というわけで今回実例として見る部分である。

*1:情報があやふやなことが多い「いかがでしたか」ブログの類は、私が見たところではなかったので安心と思ったが、逆に「一般には知られていない」ということで危機感を覚えるべきかもしれない。

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冠詞: aやtheにも意味・機能がある (a UK Prime Minister, the UK Prime Minister, as Prime Minister) 【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。ここで取り上げている項目は細かいことかもしれないが、英語を読むうえでは重要だし、書くとなるとますます重要になってくる項目である。

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今回の実例は、a prime minsiter, the prime minister, prime ministerの違いがはっきりわかる(に違いない)報道記事から。

日本語を母語とする人がSNSなどのプロフィールを英語で書いているときに冠詞が抜けていることは珍しくない。"I am designer living in Tokyo, Japan" などといった例をよく目にするが*1、正しくは "I am a designer living in Tokyo, Japan" である。

こういったことは「細かいこと」で「どうでもいい」と嫌われがちだが、少なくとも、「意味がわかればいいんだよ」じゃなくてまともに通用する英語が使えるようにしたいならば、「どうでもいい」と流すべきではない。

ていうかそもそも最初に "I am a student" ってaを入れることを習うはず。その基本文をコピーして自分で応用すれば(つまり、"I am a student" → "I am a footballer", "He is a pianist", "Jane was a teacher", "You will be a good writer" などというように単語を入れ替えて短文を作る練習をして、形を頭にたたきこめば)、aを落としてしまうなどということは生じないはずなのだが。

閑話休題。まずは基本中の基本を確認しておこう。

文法用語で、aは《不定冠詞》、theは《定冠詞》という。これらの文法用語は別に覚えなくても困らないかもしれないが、覚えておいたほうが便利だ。

不定冠詞》は「不定」、つまり「特定されていない」ものについて用いる。"Do you have a pen?" といえば「(どんなのでもいいから)ペン、持ってる?」の意味だ。

一方《定冠詞》は「特定の」ものについて用いる。"Do you have the pen?" といえば「(あの)ペン、持ってる?」だ。つまり「例のペン」とか「昨日一緒に100均に行ったときに買ったあのペン」とか、「こないだ僕が借りたときにこれいいねって言ったあのペン」とか。

同様に、"I saw a cat." といえば、単に「(1匹の)猫を見た」ということ。これは実際には「猫がいたよ」的な意味で用いられる文だ。

一方、"I saw the cat." ならば、「特定の(その)猫を見た」ということ。例えば道端で「猫を探しています」という貼り紙を見て、「この猫なら見かけたよ」と言うときはこう言う。

いずれにせよ、英語では「冠詞なしで(可算名詞の)単数形を用いる」ということは、基本的にしない(例外はあり、今回はその例外の話も下の方でするつもり)。つまり、"I am student" とか "Do you have pen?" とか "I saw cat" とは言わない。必ず "I am a[the] student", "Do you have a[the] pen?", "I saw a[the] cat" など、可算名詞の単数形は冠詞とセットにして使うのが大原則だ。

最小限の基本確認はこんなところである。「冠詞」というものは日本語にはないし、英語の不定冠詞と定冠詞については説明しようと思ったらいくらでも説明でき、実際それだけで本が書けてしまうくらいなので、確認したい人は大型書店の英語本のコーナーを見てみてほしいと思う。個人的には下記の正保先生の本がおすすめ。例文がUK寄りでおもしろいし。 

英語の冠詞がわかる本[改訂版]

英語の冠詞がわかる本[改訂版]

 

 

というところで、今回の記事はこちら(米CNN, 9月6日): 

edition.cnn.com

*1:この例はどこかからの引用ではなく、万が一誰かのプロフと一致していても、それは偶然であるということをお断りしておく。

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itsとit's, 《時》を表す副詞節での現在形の未来代用, importantなどに続くthat節内の動詞の原形(仮定法現在)(年末、つまり英国のEU離脱まであと100日)

今回の実例は、Twitterから。

今年1月末をもってEU欧州連合)加盟国ではなくなった英国は、協定により、今年いっぱいは「移行期間」を持ち、EUと本当に縁を切る前にいろいろ準備をしたり話し合ったりすることになっていた。その移行期間は、6月末までに英国とEUの間で合意がなされればまだ延長ができるはずだったが(最大で2年間)、"Get Brexit done" をスローガンとして選挙で大勝し、選挙後はBrexitという語を政府省庁の用語集から削除してしまったボリス・ジョンソンが、移行期間を延長してこれ以上Brexitを先送りしようと考えるはずもなく、6月末は何事もなく過ぎ去って、12月末での英国の正式なEU離脱は既定路線となった。

現在の関心事は、その期限までに英国とEUとの間で、離脱後の両者の関係を決める合意が成立するかどうかだが、9月になって英国政府が「国内市場法案 (Internal Market Bill)」なるものを持ち出し、その法案が議会を通過して法律になった場合、国際法に違反するということを閣僚(の1人である北アイルランド大臣)が議場で助動詞のwillを使って断言・明言している(日本語圏では情報が一部ゆがめられているが、「可能性がある」という話ではない)というとんでもない状態で、合意が成立するかどうかの雲行きは極めて怪しく、英語でいうno-deal Brexit(合意なきEU離脱)がますます現実味をおびてきている。

そういうムードの中で、「今年が終わるまであと100日」となった。そのタイミングで、アイルランドの前首相で現副首相兼産業大臣であるレオ・ヴァラドカー(ヴァラッカー)が次のようにツイートしている。

ツイート本文が2文で構成されていて、どちらも書き出しが "Its" となっているが、正確に書くなら "It's" だ。ツイートの詳細を見ると、パソコンのキーボードではなくiPhoneでの入力なので、表示された候補をそのまま選んだらこうなったか*1アポストロフィを入力する手間を惜しんだかといったところだろう。ちなみに itsとit'sの混同・混用は英語の母語話者によくある間違いとして母語話者向けの文法指南サイトなどでよく取り上げられている。例えば下記など。個人的なメモなどでは許容されても、就職の応募書類でやらかしたらよい結果にならないという類の間違いである。

www.dictionary.com

ともあれ、このツイートの見どころは《時制》である。

*1:普段は英国式にピリオドなしでUKと書いている語が米国式のU.K.という表記になっていることから判断して、音声入力かもしれない。

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of + 抽象名詞、比較級の構文、代名詞that、完了不定詞など (英国会の閉鎖は法律違反とのスコットランド裁判所の判断の持つ意味)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。専門性の高い分野での出来事について、専門知識のある人が一般人向けにわかりやすく、読みやすく解説している文章である。といっても読者はフィナンシャル・タイムズを読む層だから、少々難し目ではある。「一流ビジネスマンはこういう英語を読んでいる」的な位置づけをすると、英語学習のモチベーションが上がるかもしれない。

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今回の実例は、FT(フィナンシャル・タイムズ)に寄稿された文章を、寄稿したご本人がキャプチャ画像で紹介している一節から。

寄稿された文章の背景は、私が解説しようとするととても長くなって時間も食うので、時事通信の下記記事をご参照のほど。見出しの意味がわかりづらいのだが、「スコットランドの裁判所が、英議会閉鎖は違法と判断した。野党議員の提訴を受けたもので、野党議員の主張を支持したことになる。敗けた政府は上訴した」ということである。

www.jiji.com

今回の実例として見る文章は、この判決についての法律解説である。書いたのはデイヴィッド・アレン・グリーンさん。法律家で、弁護士として活動していたときには、サイモン・シンを英カイロプラクティック協会が名誉棄損で訴えた裁判で、被告となったシンの側にプロ・ボノ(社会のために無報酬で業務を行うこと)で参加し、最終的には訴えた側からの訴訟取り下げという結果を勝ち取っている(この裁判についてはシンの著書を翻訳された青木薫さんによる解説に詳しい)。現在は法律解説を専門とする著述家として活動している。

そのグリーンさんが、上記のスコットランド裁判所の判断について、「スコットランドの判事たちは、国会休止は法に反するものであり、ジョンソン首相は女王をミスリードした(欺いた)と判断した」と端的にまとめた一文を添えてTwitterにフィードしたのが下記、FTへの寄稿の一節のキャプチャ画像である。

f:id:nofrills:20190912110437j:plain

2019年9月11日、Twitter @davidallengreen

 

FTは基本的にサブスクライブしていないと記事が読めないのだが、記事はこちら: 

https://www.ft.com/content/12097e7c-d47f-11e9-8367-807ebd53ab77

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【ボキャビル】that being said (独立分詞構文), 《数》の表現を含む英文読解 (ジョン・ボルトンの更迭/辞任)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。報道機関のサイトにあるライヴ・ブログ、つまり速報性重視の文面で、さっと読んでぱっとわかるように書かれている文章。そういうところでどういう表現が使われているのかに注目してみよう。

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今回の実例は、11日未明(日本時間)のびっくりニュースから。

つまり、この件。ジョン・ボルトンがトランプ政権を追われた: 

 すぐさま、原油価格が断崖絶壁とアメリカからの報告: 

トランプ政権側は「クビにした」ということを言っているが、ボルトン自身は「自分が申し出た」と言っており: 

 実際どうなのかは微妙なところで、私がほぼずっと見ている英語媒体の2つも、BBCは「ボルトン自身が申し出て辞任した」説をとり、ガーディアンは「トランプがクビにした」説を取っている。

というわけで、今回の実例はそのガーディアンlive blogから、英国時間で18:47のエントリより(日本との時差は8時間):

https://www.theguardian.com/us-news/live/2019/sep/10/trump-news-today-latest-economy-north-carolina-republicans-live?page=with:block-5d77e0c38f08143ee1ae3ca2#block-5d77e0c38f08143ee1ae3ca2

※Live blogは刻々と見出し(ヘッドライン)が変わってしまい、いつもの形式で「ヘッドラインとサムネ画像」が表示されるようにしてここに埋め込むと、ぱっと見、わけがわからなくなってしまうため、URLだけ貼り付けておきます。上記URLをクリックして記事、というかエントリをご確認ください。

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長い文、《譲歩》の接続詞、等位接続詞、挿入、continue to do ~, avoid -ingなど(MITメディアラボが性犯罪者ジェフリー・エプスタインの金を受け取っていた件)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。かなり難しい目の文だが、英語の文章には「型」があるので、それを踏まえれば読みやすくなるだろう。書かれている内容は日本語報道もあることなので、「内容を知った上で英語の型というものについて学習する」という意識を持って読むと、効率よくポイントがおさえられるはずだ。

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今回の実例は、The New Yorkerの調査報道記事から。

The New Yorkerは1925年の総合雑誌で、優美なアールデコ調のロゴは創刊からのもの。日本語圏では小説や随筆など文学分野のコンテンツで広く知られているかもしれないが、ファクトチェックが厳しいことで有名で、調査報道での存在感が大きな媒体でもある。近いところでは#MeTooの大きなうねりを引き起こした映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインに対する告発報道を最初にやったのが、新聞のThe New York Timesと、この雑誌 (2017年10月23日号) だった。 両媒体はこの報道でピュリッツァー賞を受賞した。

The New Yorker [US] October 23 2017 (単号)

The New Yorker [US] October 23 2017 (単号)

 

そのワインスタイン告発の取材をし、記事を書いたのが、弁護士の資格を持つジャーナリストのローナン・ファローだが、その彼が2019年9月に同じ媒体で書いた記事が今回の題材である。

この記事がきっかけとなって起きたことは、日本語圏のメディアでも、一般紙およびIT系のメディアで報じられている。例えば下記: 

www.itmedia.co.jp

www.asahi.com

朝日新聞のこの見出しは、文字数の制限があるとはいえ、非常にミスリーディングなので注意が必要。「MIT」(マサチューセッツ工科大学)ではなくMITの中の研究機関「MITメディアラボ」だし、「性的虐待疑惑の富豪」ではなく「性犯罪で有罪判決を受けた者 (convicted sex offender)」である(「疑惑」の段階ではなく、フロリダ州で有罪判決を受けたあとでの資金受領が問題となっている。なお、当人は今年2019年8月にニューヨークの拘置施設で自殺したが、これはフロリダ州で司法取引の末に有罪となった件とは別に、連邦法で人身売買の容疑で逮捕され、裁判を待っている間のことだった)。

 

というわけで、何があったのかは日本語報道記事で確認できるとして、今回はファローの記事そのものを見てみよう*1。記事はこちら: 

www.newyorker.com

*1:なお、The New Yorkerは、読者登録していない場合は1か月に読める記事の上限が決まっているので、すでにそれを超えてしまっている人がもしいらしたらごめんなさい。

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「万が一」を表すshould, if節のない仮定法, 倒置, 関係代名詞(主格), 【ボキャビル】come in handy(防災バッグの勧め……なぜか英国で)【再掲】

このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。日本ではなぜか「小難しい」などと言われて学校では教えられなくなってしまっているかもしれないが、実際の英語では非常によく使われているshouldの実例。これが読めないとホテルに宿泊したときの注意書きのような実用的な文書も正確に読めないから、しっかり押さえておこう。

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f:id:nofrills:20190909044041p:plain今回の実例はTwitterから。

9月9日未明、台風15号 (Typhoon Faxai) のくっきりした目が東京湾の上を通っていて、都内のうちのあたりも激しい風雨に見舞われていることが音だけで確認できていたころ(台風の西側なので予想したほどではなかったが、東側は大変だったと思う)、ふとTwitterの画面に目をやると、英国で #GrabBagがTrendsに入っていた(右のキャプチャ参照)。

GrabBagという表現は初めて見たが、意味を推測するのは簡単だ。grabは動詞で「~をつかむ」の意味だから、grab bagは「つかんで持って出るバッグ」、つまり「緊急時に際して避難するときに持って出るバッグ」で、日本語でいえば「防災バッグ」だろう。また、ハッシュタグの下にTwitterでつけている短い解説文に、"Police advice about having an emergency bag prepared has folks worried" とあり、grab bagはemergency bagの言い換え表現だとわかる。

というわけで今回はこのハッシュタグでのツイートからケンブリッジシャーの消防救急当局のもの: 

 

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祝・イグノーベル平和賞! インドとパキスタンの「外交官たちの真夜中ピンポンダッシュ」について調べてみた。

今回は、いつもとは少し趣向を変えて、報道記事ではわからない詳しい話をネット上で見つけた過程の記録を。

今年も「イグノーベル賞」の季節となった。「イグノーベル Ig Nobel」は、かの「ノーベル賞」のNobelに、《否定》の意味を表す接頭辞のig-をつけた造語で、実在するnoble - ignoble (高貴な - 下品な)のペアを、nobleとNobel(英語では同音)に引っ掛けたダジャレで、この言葉のニュアンスを日本語にすれば「真面目なノーベル賞、不真面目な(ふざけた)イグノーベル賞」「お堅いノーベル賞、ユルいイグノーベル賞」「(表のノーベル賞に対し)裏ノーベル賞」といった語感だろう。

つまり、「はあ、素人のあたしには全然わかりませんが、何か、こう、とても難しくて重要そうな研究をなさっているのですね。人類への貢献、実に素晴らしい(よくわかんないけど)」と反応せざるを得ないノーベル賞に対し、「何でそんなことを大真面目に研究してらっしゃるんですか」とちょっと笑ってしまうが、詳しく聞いてみると「ははあ、なるほど、興味深い……いやあ、世界の深遠さに改めて感銘を受けました」と大真面目にうなずいてしまうようなイグノーベル賞、という位置づけである。

ちなみにこの接頭辞のig-は、『ジーニアス英和辞典』を参照してみても、接頭辞としての立項はされておらず、接頭辞であることがはっきりわかるのは、noble - ignobleのペアしか載っていない。他はignomious, ignominyや、ignorance, ignorant, ignoreといった、「確かに意味自体に否定的な要素があるが、igを取ったら肯定的な意味の対義語ができるわけではない」という語ばかりで、英語の語彙力増強としては、ig-という接頭辞をがんばって記憶する必要は特にない。ちなみにこれは(今の英語では単語の一部に完全に組み込まれてしまっている)ラテン語系の接頭辞で、接頭辞としてより広く使えるin- (sane - insaneのようなペアを作る) のバリエーションのひとつである。 

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: 単行本
 

イグノーベル賞の成り立ちについてはウィキペディアによくまとまっているのでそちらを参照していただくのがよいが、 1991年に始まっていて、歴史はノーベル賞と比べたら全然浅いが(当然だ)、意外と長続きしているので笑ってしまう。

さて、今年のイグノーベル賞だが、発表時の記事を読んで大笑いしてしまった。メイン (?) の「ワニにヘリウムガス」(音響賞)ではない。平和賞だ。

イグノーベル平和賞は、元々、「大いなる皮肉」とでも呼ぶべきものを意図している。初回(1991年)は核抑止論を唱えた「水爆の父」ことエドワード・テラーが、「我々が知る『平和』の意味を変えることに、生涯にわたって努力したことに対して」受賞しているし、第二回はロサンゼルス大暴動の際のロサンゼルス市警本部長であったダリル・ゲイツが「人々を団結させずにはおかない、彼の独特な手法に対して」受賞している。詳細はウィキペディアにまとめられている一覧を参照していただきたいが、その後も、何かというと乱闘していることで世界中で短いニュースとなっていた台湾の国会とか、核実験を強行したフランスのジャック・シラク大統領とか、「平和について考えさせてくれてありがとうwwwwwで賞」とでもいうべき受賞者が並んでいる。

様子が変わってくるのは21世紀に入ってからで、2002年に犬の言葉を人間の言葉に翻訳する(とされた)機械「バウリンガル」で日本人のチームが受賞して以降(日本でイグノーベル賞イグノーベル賞と騒ぐようになったのもこの後のことである*1)、国際政治や地政学、治安維持や安全保障といったことについての皮肉というより、個人の心の平安 (peace of mind) および個人間の平和的関係についての提案的なものがぽつぽつ見られるようになってくる。

といっても皮肉が消え去ったわけではない。例えば2013年は、2020年の今まさに時の人となっているベラルーシのルカシェンコ大統領が、「プラカードやスローガンを避けて、ただ拍手するだけというフラッシュモブ」という形で行われた政治的意思表示行動に対して「公共の場で拍手喝采することを違法にした」として受賞している。

だが、現実世界で、2003年のイラク戦争イスラエルによるターゲット・キリングの続発(特に2004年のヤシン師殺害以降)やガザ封鎖、ガザに対する過剰な武力行使アルカイダイスイス団のテロ、政府による自国民への武力行使(シリア、中国のウイグルなど)、人種主義による暴力といったものがあふれかえっているときに、「人はののしり言葉を口にすることによって心の平安を得ている」的な学術研究に「平和賞」が与えられても、全然印象に残らない。逆に、本家のノーベル賞がまだ何もしていなかったバラク・オバマに(おそらくは「ジョージ・W・ブッシュではない」というだけの理由からの期待ゆえに)平和賞を与えた(が、その後オバマはドローンによるextrajudicial killingを常態化させた)ことのほうがよほど皮肉が利いていたくらいだ。

そんなイグノーベル平和賞だが、今年は「私の頭がおかしくなったのか」と思うくらい意味がわからなかった。何しろこうなのだから。

Peace: The governments of India and Pakistan, for having their diplomats surreptitiously ring each other's doorbells in the middle of the night, and then run away before anyone had a chance to answer the door.

www.bbc.com

「インドおよびパキスタン両国政府。自国の外交官に、夜中にこっそりと相手の外交官の玄関の呼び鈴を鳴らした上で、誰かが玄関口に出てくる前に逃げ去るということをさせたことに対して」。

つまり、印パ両国の外交官が、お互いに夜中にピンポンダッシュし合っていたというのだ。

意味がわからないのは私だけではないだろう。

BBC以外の媒体なら何か詳しいことがわかるかと思ってガーディアンを見てみたが、同じような具体性のない記述で、何が何だかさっぱりわからない。

こういうときは、これ以上ばたばたするより、さっくりとウェブ検索である。

というわけで、今回の実例はその検索の記録。

*1:日本人の研究は1992年には既に受賞対象となっているが、メディアが騒ぎ出したのは21世紀になってからだった。おそらくネットの普及も関係しているだろう。2002年というと出版や新聞の世界ではまだまだ「ネット情報なんて信頼できないし使えないでしょ」というムードが支配的だったのだが。

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前置詞+動名詞, 動名詞の意味上の主語, to不定詞の否定形, など(「反マスク」デモの続くアイルランドと、現場の医師)

今回の実例は、医療の最前線の声を伝える報道記事から。

アイルランド共和国新型コロナウイルス感染拡大が、かなり心配な感じになってきている。一時はうまく抑制できている感じだったのだが、夏以降、どうもよくない。

アイルランドは、この2月の総選挙の結果、FFとFGの二大政党と第3党SFの3つの政党の議席数が拮抗し、どの党がその他の小政党と連立をしても議会の過半数に至らないというすさまじいことになったあとで、いろいろとすったもんだがありつつ、また同時にウイルス禍に見舞われつつ、最終的には、建国(というより英国からの独立と、その独立のしかたをめぐってその後起きた血みどろの内戦)以降、これまでずっと水と油の関係だった二大政党が大連立し、Green Partyも入って連立政権を組むという形になった。ウイルス禍が始まったときは、選挙で最大議席数を取ることができなかった前与党のFG政権が「ケア・テイカー内閣」として当面の政権を担当していたが、6月下旬にそのFGの内閣が退陣し、新たにFFとFGの連立政権が発足した。3月にセント・パトリックス・デーの行事中止を決定して以降、厳格な行動制限を導入して感染拡大抑制に努めたFG党首で医師のレオ・ヴァラッカー(ヴァラドカー)は首相から副首相兼産業大臣*1となり、FFのミホール・マーティン党首が首相となった。

だがこの新政権、どうにも頼りない。首相の人柄的なことだけでなく、新政権発足から2週間程度でFF所属の新任の閣僚(農業大臣)が4年前に飲酒運転で罰金刑を食らっていたことが発覚して罷免を余儀なくされたり、その後任となった閣僚(FF副党首でもある)や最高裁判事、欧州委員といったお偉いさんたちが、8月に、ウイルス禍による行動制限を無視して「国会ゴルフ同好会」主催のディナーに出席していたことが発覚して次々と辞任したりといったことが起きて、元々、有権者の信任を得ていたとは言い難いこの二大政党による、いわば急ごしらえの連立政権は、こんな重要な局面で、人々の信頼を得ているとはいいがたい状況にある。

それでも、普通に常識のある大人たちは、政治家がポンコツであるからといって政府が判断したウイルス対策の方針(すなわち人と人との間隔を十分にとることとか、マスクをすることとか、ウイルス禍以前のような人の移動を制限することとか、パブなどの営業に制限を設けることとか)がポンコツであるわけではないと知っている。パンデミックに関する政府の説明を疑ってはいない(方針のはっきりしないところに疑問の声を上げるなどはしているが)。そういった普通に常識のある大人を代表するのが、私の見ている画面の中ではあのジェドワードになってしまっているのは、ちょっとさすがに意味がわからないのだが、アイルランドだからそういうことが起きても不思議ではないと自分に言い聞かせている。 (・_・)

そのジェドワードが、明確に反対しているのが、夏以降継続的にダブリンで行われている「反マスク」デモである。米国での「反マスク」は日本でも広く知られているが、同様のことは米国以外でも起きていて、アイルランドでも数百人規模ではあるが週末になるとデモが行われている。先週は「反マスク」デモを批判する立場のメディアのオフィス前でメガホンを手にしたデモ隊リーダーが大演説をして、非常に不穏な空気が立ち込めている映像がTwitterで回覧されていた。ちなみに「反マスク」デモをやっているのは、アイルランドのここ最近の近代化(同性間の婚姻の実現、妊娠中絶の合法化)に強く反対してきたのと同じ保守勢力(宗教右派)や、ウイルスやワクチンに関する陰謀論を信じている人々である。

前置きが長くなったが、今回みる報道記事は、そのような「反マスク」デモに対する、医療の最前線という現場からのひとつの声についてのものだ。記事はこちら: 

www.irishtimes.com

ある病院で救急医として働くエリーシャ・ブレナンさんが、12時間勤務の間ずっとゴーグルとN95マスクと防護服を着けるという生活を8日間休みなしで続け、顔に青あざができていると、自身のソーシャルメディアのアカウントで発言したことを報じる記事である。上記記事のエンベッド部分で、ブレナンさんについての説明にある "Rose of Tralee" は、アイルランド南西部のケリー州のTraleeという町で毎年行われている美人コンテストの優勝者という意味で、彼女のTwitterアカウント名はそれにちなんでいる。

ブレナンさんの訴えは、「反マスク」の行動がウイルス感染を拡大させれば、医療従事者の顔はますますあざだらけになるということだ。

*1:正式にはMinister for Enterprise, Trade and Employment

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時制, 仮定法過去完了 (if節のない仮定法), OSVの語順の文(大坂なおみさんによる文章)

今回の実例は、大坂なおみさんが、この7月にエスクワイア誌に寄稿した文章から。

エスクワイア誌 (Esquire) は男性向けファッション雑誌だが、米国、というか英語圏では、女性向けファッション雑誌のヴォーグ (Vogue) やコスモポリタン (Cosmopolitan) などを含め、そのような「ファッション雑誌」に、いわゆる「社会派ルポ」*1のような記事が掲載されることも多いし、ガチの調査報道記事が掲載されることもある。一見「音楽雑誌」でしかないように見えるローリング・ストーン誌 (Rolling Stone) は、ミュージシャンのインタビューなどと、社会・政治についての突っ込んだ報道が同居していて、長く時間のかかる調査報道なども行なわれている。

そういう媒体の読者に届けるため(また、ウェブ版掲載ということを考えると、SNSでの記事のシェアや検索で、この文章だけを読むためにエスクワイア誌のサイトを訪れる人に届けるため)に書かれた文章で、7月1日の掲載から2か月以上経過した9月13日以降、全米オープンでの大坂さんの優勝後に、日本でも米国でも大いに話題になった(Twitterで大いにシェアされていた)。

この文章は、@nest1989さんが下記のツイートで述べていらっしゃるように、(抄訳という形ではあるが)日本語化もされてエスクワイア誌の日本版とさらに別の媒体(エル誌)に掲載されているので、それを対訳のようにして参照しながら*2原文を読むという形でも、英語学習にも利用できる。実際、「女性が輝く」ということを見栄えの良いスローガンとして掲げた安倍政権の示した直訳と、実際に輝いている女性である大坂さん自身の表現との違いを味わうなど、非常に見るところ、学ぶところの多い文章である。

 

 今回はこの記事の一節を見てみよう。記事はこちら: 

www.esquire.com

はてブもたくさんついているね)

書き出しから非常に引き込まれる文章で、一気に読ませる力がある。もちろん掲載に当たっての校正・文章整理の過程は経ているだろうが、元の文章に力がないと、どんなふうに編集したってこうはならない。この文章には大坂さんの強い人格、大坂さんのコア(芯)の強さが現れていると思う。「彼女のプレイはすばらしいが、政治をスポーツに持ち込むべきでない」などと平然と言ってのける人は、大坂さんのこういう人格・人間としての大坂さんを見ようとしていないか、無視しているか、見たうえで拒否しているか、いずれにせよまともな人間のやることじゃないことをやっている。テニスプレイヤーとしてでなく素の人間としての大坂さんを見もせずに「政治をスポーツに持ち込むべきでない」と今回のことで言う人がいるとしたら、彼女が人間として声を上げたという事実を封殺し、「政治的」というレッテルを貼っているわけで(場合によっては、「背後で誰かが指示している」という陰謀論までくっついているのだが)、実に人でなしの否定論者としか言いようがない。

 

*1:「社会派」という言葉自体、リアルタイムの日本語からはほぼ消滅してしまったが。

*2:ただし日本語では「読みやすさ」とやらを優先してぶつぶつに改行するのが慣行なので、逆に、パラグラフとしては読みづらくなっている点に留意。原文のしっかりしたパラグラフ構成のほうが、メッセージはより明確である。

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SVOCの文型 (call, label) , labelの過去形・過去分詞形の英米差(サンフランシスコ市、NRAを「国内テロ組織」と位置づけ)【再掲】

本日9月15日、マウスが壊れたので買いに行くなどしていたらブログの準備ができなかったので、過去記事の再掲とさせていただきます。すみません。

あと、先日少し触れた機械翻訳についてですが、研究者のティエリー・ポイボー氏による専門的な本の日本語版が、高橋聡さんの翻訳で、今月下旬に出ます。高橋さんによるあとがきが版元の森北出版さんのサイト (note) で公開されているので、ぜひ。

では、以下、本日の投稿(過去記事の再掲)です。

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このエントリは、2019年9月にアップしたものの再掲である。ここで見ているSVOCの文型は、日本語の発想にはないものなので、構造を読み取るのが苦手な人が意外と多いのだが、実際の英語では非常に頻繁に使われている。

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今回の実例は、米国から、ちょっとびっくりするようなニュースより。

報道自体は、BBC Newsの日本語版が日本語記事を出しているので、それを参照していただくのがよいだろう。

www.bbc.com

というわけで、今回は前置きなしでいきなり文法解説に入る。記事はこちら: 

www.bbc.com

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無生物主語, SVOO, a chance to do ~, 関係代名詞のwhat, want ~ to do, 前置詞で終わる文(大坂なおみ選手自身の言葉から)

今回の実例は、報道記事に掲載された大坂なおみ選手の発言から。

既に大きく取り上げられているように、米東海岸時間で9月12日(土)の夕方に行われたテニスの全米オープン女子シングルス決勝で、大坂選手がヴィクトリア・アザレンカ選手に対し逆転勝利をおさめ、自身2度目の同大会優勝をとげた。翌13日(日)には車いす部門の男子シングルスで国枝慎吾選手が、女子ダブルスで上地結衣選手とジョーダン・ワイリー選手のペアがそれぞれ優勝したが、Yahoo! Japanトップページから「トピックス一覧」→「スポーツ」と進んでいった画面では、下記の通り、車いすテニスのことは全然言及もされていなくて(「Yahoo! Japanニュース」から「スポーツ」のカテゴリに行くといくつか記事が出ているのだが)、まさに大坂さんの話題でもちきり、といった様相だ。

f:id:nofrills:20200914172540p:plain

https://news.yahoo.co.jp/topics/sports

車いすテニスは、そうでないテニス(健常者のテニス)ほど注目されないという背景もあるだろうが、今回は大坂さんはラケットとボールではない形で自身を表現したことで、特にここ日本でえらい騒ぎ(というかバッシング)を引き起こしていたので、その反動というか、「ほら、ご覧の通り、彼女はラケットとボールで結果を出しましたよ」みたいな強調の心理があるのかなと何となく思っている。

それはさておき、大坂さんの今回の全米オープンと、その前哨戦のウエスタン・アンド・サザン・オープンでの、#BlackLivesMatterの運動に積極的にかかわっていく発言と姿勢は、ただの「スポーツニュース」の枠を超えたところまでニュースの届く範囲を広げ、関心を引き起こす範囲も広げている。その様子を、少しだけだが自分の見える範囲で見ていて、英語で "a big personality" と呼ばれるような性質を、実はこの人は持ってるのではないかと強く感じた。

大坂さんの言葉はどれも明晰で力強く、説得力があり、人を共感させる力がある。英語学習者にとってはそのままお手本になるような言葉だ。TwitterなりGoogleなりで設定言語を英語にして(Twitterなら「Naomi Osaka lang:en」と検索窓に入れればよい)、彼女自身が英語で書いている言葉を、1つでも2つでもよいので、ぜひ見てみてほしい。

それら彼女自身の言葉は、多くの報道記事でも紹介されている。今回実例としてみるのはそういった記事のひとつ。記事はこちら: 

www.bbc.com

埋め込みで表示されるヘッドラインは短縮された形だが、フル表記だと "US Open 2020: Naomi Osaka says self-reflection during quarantine helped her win" となっている。「新型コロナウイルスでステイホームしている間に自分と向き合ったことで、成長でき、その結果、全米オープンで優勝できたと大坂選手は述べている」というのがこの見出しの意味だ。

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