この事故の第一報は私は見ていないのだが、ウッズ選手のけがの程度がはっきりしていない段階での報道はBBC Newsのフィードで見ていた。最初はよくわからなかったが、救急隊・消防隊が、横転した車のフロントガラス*1を割るか何かして、車の中の何か(シートベルトか何か)を切断して救出し(このことが、"be cut free from the vehicle" という英語表現で表されていた)、そのまま病院に搬送して即手術となったということが、英国のBBC Newsのウェブ版でもほぼリアルタイムで報じられていた。そのときの映像:
例えば、先日NASAの火星探査車が無事に火星に降り立ったが、それについては、「今日これから、着陸する(見込みである)」というときは、"NASA rover Perseverance to land on Mars today" と表し、無事に着陸が成功した後での報道では " NASA rover Perseverance lands safely on Mars"*2 となる。
この原則で考えると、"Woods has surgery after car crash" は手術が完了したときに使う見出しだということになるが、実はそうとは限らない。「手術を受ける」というのは「火星に降り立つ」のように一瞬・短時間で終わることではなく、ある程度の長さを前提とすることで、手術中である場合にもこのように現在形で表されるからだ。
"wipe out ~" は、1語ずつ丁寧に見ていくと、「wipeして、~をoutの状態にする」ということ。"wipe"は「ワイプ」というカタカナ語になっているが「ぬぐう、ふく」の意味。「outの状態」とは「その場から消えた状態」のことで、つまり "wipe out ~" は「~を完全にぬぐい去ってしまう」だ。
The news that today’s UN pledging conference on Yemen resulted in less than half of what was asked for and necessary to save lives is a symbol of global retreat from addressing critical global problems: https://t.co/t2boFNQ6pd
さて、本題。そのグテーレス事務総長が22日に、パンデミックの中の人権というテーマで、ガーディアンのRights and Freedom(権利と自由)のコーナーに寄稿している(→ archived here)。非常に広い範囲を扱った文章で、内容的には決して読みやすくはないが、構成はかっちりしていて、読む側が「藪から棒に、何の話だ?」と思ったところがあっても、そのあとの部分で丁寧な解説と情報の整理がなされ、そのうえに主張があるという、まさに論説文のお手本のような論説文なので、少々分量が多く感じられるかもしれないが(語数カウンターにかけたところ、790語だった)、ぜひ全文を読んでいただきたいと思う。英語学習という点から得るものが多いはずだ。
Translating 仕方がない as “it can’t be helped” is played out and nobody speaks English like that. Start teaching people the phrase “it be like that sometimes.”
"be played out" はbe outdatedとだいたい同じ意味。この場合のplay out ~は、「outの状態になるまで~をplayする」という意味で、「~をやりつくす、使い果たす」みたいな意味になるわけだが、これが受動態になったものが "be played out" で、「限度まで使い果たされる」、すなわち「もう使えない」から「古びてしまっている」ということだ。
これはよく「ネイティヴらしい」と形容される表現のひとつで、うちら外国語としての英語を使う者にとっては素直にoutdatedという専用の単語を使ってもらったほうがわかりやすい。なお、世間でウケる「英語は中学3年分で大丈夫」みたいな方針の英語学習本は、このplay out ~/be played outみたいなものも「中学レベル」と扱っているので、要注意である。
というわけで、上記@BadForUsさんのツイートの第一文は、「日本語の『仕方がない』を、"it can't be helped" と英語にするのは、古臭い。今はそんな英語を使う人はいない」という意味。
この「仕方がない」= "it can't be helped" の古式ゆかしい対訳ペアは、ずっと昔からあるもので、私もかつてそう教わったことがあるのだが(例えば研究社の新和英中辞典が引けるWeblio辞書のサイトで検索すると、この対訳ペアがあることが確認できる。そして和英辞典に載っていれば多くの「日本語の英訳」の文章に出てくることになり、それを通じて英語圏の日本語学習者が目にすることになる*1)、学校の試験のようなものは別として、会話の際に自分で使ったことはないと思う。その時々の文脈に応じて "No choice." とか "There's nothing we[you] can do about it." とか "That's life." いった表現が自然に出てくるからだ。"It can't be helped." なんて19世紀の上流階級のような言葉遣いは、自然にはできない。
Working-class voters didn’t trust or believe Labour. We have to change | Jess Phillips https://t.co/yur2aUSkps 読むのがつらいけれどとてもよい分析。筆者は労働党の国会議員(バーミンガムの選挙区で今回も議席保持)。