個人的に、Twitterは使用言語を英語に設定して、Trendsの地域設定もIrelandにしてあるので(Brexit Dayまではthe United Kingdomにしてあった)日本語圏で何が流行っているのかは気づかないことが多いのだが、今日は【今夏五輪はロンドンで 市長候補】とかいう刺激的な話が流行っていたようだった。
CDCはCenters for Disease Control and Preventionの略語で、「アメリカ疾病管理予防センター」のこと。米国の保健福祉省所管の感染症対策総合研究所である。所在地はジョージア州アトランタ。ここがどういう存在かというと、「本センターより勧告される文書は、非常に多くの文献やデータの収集結果を元に作成・発表されるため、世界共通ルール(世界標準)とみなされるほどの影響力を持ち、実際に日本やイギリス等でも参照・活用されている」(下記ウィキペディアより)。詳細はウィキペディア参照。
今回は、前回の続きで、東エルサレムのシェイク・ジャラー地区で行われていることについてのIMEU (the Institute for Middle East Understanding) による解説を読んでみよう。IMEUについての説明や、シェイク・ジャラー地区についての基本的な解説は前回してあるので、そちらをご参照いただきたい。
Because of the Attorney General’s lack of action, three Palestinian families in the East Jerusalem neighborhood of Sheikh Jarrah could face forced displacement soon.
これは高校2年生なら(単語の問題をクリアしてさえいれば)つっかえずに読めるはずだ。文法的には《because of ~》と、《仮定法》由来の助動詞のcouldがポイントとなるが、特に解説が必要な項目でもなかろう。「司法長官の行動の欠落が原因で、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区のパレスチナ人3家族が、早期に、強制退去に直面する可能性がある」と直訳できる。
次。
In total, at least 65 Sheikh Jarrah families are being targeted by settlers, who want to take over their homes as a way to fragment Palestinian neighborhoods and consolidate Israeli apartheid in Jerusalem.
シェイク・ジャラー地区で起きていることを簡単に説明すると、パレスチナ人(イスラエルでは「アラブ系イスラエル人」と呼ぶが、実際には彼らは民族的にアラブ人だけとは限らないので、イスラエルによるこの呼称の時点で大きくゆがめられている)の暮らす家を、ユダヤ教徒のイスラエル人入植者が乗っ取り、元からの住民を追い出す、ということが起きている。イスラエルはこれを「土地紛争 (land dispute)」と位置付け、パレスチナ人(アラブ人)の追放、すなわち民族浄化 (エスニック・クレンジング: ethnic cleansing) であるということを事実として認めようとしてこなかった。その点に関して司法が判断を示すという大きな動きがあったのだが、その結果は、パレスチナ人にとってはまさに落胆としか言いようのないものだった。このことを、在米の非営利組織で、パレスチナおよび中東についての情報をジャーナリストなどに提供することを目的として活動しているIMEU (the Institute for Middle East Understanding) のアカウントが連続ツイートで解説している。
THREAD: Updates in Sheikh Jarrah
Israel’s Attorney General essentially just paved the way for ethnic cleansing by declining to intervene in the Sheikh Jarrah case, giving Israeli settlers a green-light to forcibly displace Palestinians in the Jerusalem neighborhood.
Whatever happens tonight and in the days left until the confidence vote if it ever takes place, this is a historic photo. A leader of an Arab-Israeli party and the leaders of a Jewish-nationalist party signing an agreement to join a government together pic.twitter.com/ahGijY6qgc
https://t.co/Qc77YpAL7u "Netanyahu on Friday published a Facebook post that cited a story from the Bible, which compared his political rivals on the right to the spies Moses sent to tour the land of Canaan and that lied to the people when the returned."
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年6月5日
NFLはNational Football Leagueで、アメリカン・フットボールの全国リーグ、「スーパーボウル」はその優勝決定戦で、NFL傘下の2つの団体(カンファレンスと呼ばれるらしい)それぞれの首位のチーム同士が直接対決する。日本の野球でパリーグとセリーグの首位同士が試合して日本一を決めるのと同様のシステムだ。この優勝決定戦は毎年2月の第一日曜日に行われ、米国ではまさに国民的関心事になるそうだ。
🌓🌏🌞 Supermoon + total lunar eclipse? It's showtime.
Tomorrow in the pre-dawn hours, the Moon will pass through Earth's shadow. If you live in Southeast Asia, Polynesia, the western U.S., or Central and South America, set your alarms. Map and details: https://t.co/3vvbhoyLBLpic.twitter.com/ow7W4eaflj
The IOC is saying "sacrifices" are needed for the Tokyo Games to go ahead. Even though Bach didn't say who exactly needed to sacrifice, the Japanese public are assuming it's them. Death before cancellation, indeed. 🤔
さらにバッハ発言のこの文、主語がweである。"We have to make some sacrifices to make this possible." とバッハは述べている。このweが誰のことなのかという問題も出てくるのは当然なのだが、そこにこだわりすぎたりそこで深読みしすぎたりしてもよくないのではないかと私は思う。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
あ、言葉足らずでしたが、今尋ねるのではなく、会議でバッハが発言したその場で、司会者や参加者が「sacrificeとおっしゃいますと?」というふうに明確化を求めたのかどうか、ということを書いたつもりでした。そういう展開があったのかどうかはTimes of Indiaの記事には書かれていません。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
Times of Indiaの記事を見る限り、最初にバッハ発言で "we" が出てくるところから、だれのことを言ってるのかがはっきりしないですね。これがIOCの会議や記者会見での発言ならIOCのことでしょうが、IOCとは別の組織(FIH)のコングレスでの発言なので……ただこれは実際の会議では聞き流してしまいそう pic.twitter.com/u9wTjYcUqD
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
検索して原文を見つける方法。
原文の出典は https://t.co/V2qYu1rDdC "Tokyo Olympics on schedule, says IOC chief Thomas Bach despite Japanese opposition" PTI / Updated: May 22, 2021, 17:00 IST
記事の発信地はNEW DELHIで、発言の場はバーチャル開催されたthe 47th International Hockey Federation (FIH) Congress
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
(ちなみに原文のTimes of Indiaの記事は、スマホのTwitter検索で「Bach sacrifice」のワード検索で簡単に見つかりました。所要時間数秒。Twitterを英語環境で使ってない人は検索条件で言語を英語に指定すれば大丈夫なんじゃないかと)
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
My bad. 「カンファレンス」ではなく「コングレス」で、開催地はインドではなくスイスのローザンヌですね。FIHの会長がインドの人なので、発信地がニューデリーでインドの媒体に出てるのかな。これは誰でも5分もあれば調べられることで、昨晩は私がバテててPC使えてなかったから調べてませんでした。 pic.twitter.com/m8MCuhGpQK
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
記事を書いた記者によるリフレーズ(言い換え、書き換え)の問題。
さらに事態を混乱させているのは、記事を書いた記者による地の文。バッハの発言は "We have to make some sacrifices to make this possible" で、これを記者が "everyone has to make some sacrifices" とパラフレーズ(言い換え)。このパラフレーズは、私はあまりいい言い換えではないと思う。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
Times of Indiaのこの文のこの部分、厳密にやろうとすれば「翻訳不能」で著者に問い合わせになるんではないかと。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
さらに、他媒体での受動態の導入。
で、元発言の段階から何かわかりにくかったからなのか、Times of India以外の英語メディアで "We have to make some sacrifices" というバッハ発言が、受動態にされちゃったんですね。受動態ってのはそういうふうに使うものだから別にいいんだろうけど、物事をますます曖昧化させただけ。感心しない。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
「感心しない」っていうか、fog of warの気配を感じますけどね。こうなるといかに距離を取るかが問題ですね。活動家は距離を取らないことが仕事で、Twitterのような場は活動家の発言がものすごく多いので、よけい難しくなるのではないかと。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
(fog of warの気配については、私は北アイルランドとかBrexitとか中東とかで鍛えられすぎてしまっているので過敏になっているだけという可能性もあります。でも、今起きていることは「ペンは剣より強いって言ってんだろこのドタコ」的な事象のように見えます。受動態ってそう使うんだよね、みたいな)
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
(「武器としての受動態」は怖いんですよ。人々の理解を曖昧化させて人々の感情をあおるから)
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月24日
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
そういう場、つまり五輪種目であるホッケーの競技団体のコングレスで、五輪組織トップが "we" と述べたのは、「我々一丸となってメッセージを発していかねばなりません」という呼びかけの意図だろうと、文面からは思います (Re: "During this difficult times, we need to send a strong message...")
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
記事の英語が微妙……。
"this difficult times" って文法的におかしいですね。記事化したときのタイポか、元から言い間違えているのか……元からの言い間違いの場合は [sic] をつけるのが一般的ルールだけど、Times of Indiaという媒体はめったに接することがないのでここの表記基準がどうなのかなどよくわかんないです。
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
https://t.co/CYBqJh7PU7 Times of Indiaに掲載されているバッハ発言で、元の発言から文法・語法的におかしいのか、記事化したときに間違えているのか(つまり単なるタイポや校正漏れなのか)はっきりしないところはもう1か所あります。"the safety and security of *our everyone*" って何だよって。 pic.twitter.com/NUcr21fSlJ
— n o f r i l l s /共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) 2021年5月25日
After 11 days of violence which claimed almost 200 lives, @mattfrei reports from Gaza, where a ceasefire between Israeli forces and Hamas holds. pic.twitter.com/2aPSZmP23I
• Aid arrives in Gaza as ceasefire holds and both sides declare victory • Iran using cryptocurrencies to swerve around US sanctions • UAE tops global rankings for vaccination rateshttps://t.co/Dyok24U2V3pic.twitter.com/SkNs5YNUkc
COULD YOU PLEASE STOP LABELING WHATS HAPPENING IN #GAZA AS "OH THEY NEED AID & FOOD" NO WE NEED TO BE FREE & SAFE & PRACTICE ALL OUR HUMAN RIGHTS, STOP HIJACKING OUR VOICES & LABELING OUR PLIGHT FOR #FREEDOM FOR SOMETHING IT ISNT. #GazaUnderAttack#FreePalestine
英語的なことを書いておくと、"Could you please do ~?" は「頼むから、~してくれないか」くらいのニュアンスの表現で、いわゆる日常会話でもよく使われる基本的な表現である。いわゆる「中学英語」ではpleaseがあれば「丁寧な表現」と習っているだろうし、couldは「丁寧な表現」というのも教えられるから、この言い方をすれば「~していただけないでしょうか」くらいのニュアンスになると思っている人もいるかもしれないが、実際はそれほど「丁寧」ではない。文脈にもよるし、話し手と聞き手の関係にもよるが、これを「相手に失礼のない丁寧な表現」と思っていると、いろいろと齟齬をきたすかもしれない。
今回の、ガザ地区とイスラエルの武力集団の間での、マスコミなどのいう「衝突 clash」は、5月7日から21日まで続き、その間に少なくとも274人の人命が失われた。うち243人はガザ地区の人々で、71人は子供である。その全員の名前(アルファベット表記)と年齢、男女の別を、Middle East Eyeのアカウントが連続ツイートしている。